「傍聴者の意見には答えなくてもよい」

〜第17回「三番瀬再生会議」〜




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 (2007年)1月31日に第17回「三番瀬再生会議」が開かれました。
 主な議題は「平成19年度三番瀬再生実施計画(案)」です。県が提案した全12項目の実施事業(案)のうち数項目について議論しました。
 県の提案や会議の運営はまったく理不尽なものです。運営方法や議論の内容は、「三番瀬円卓会議」(2002年1月〜2004年1月)と比べても、かなりひどくなっています。
 今回の再生会議の問題点をいくつかあげます。


■事業計画が未策定なのに実施計画を提案

 第1に、県は、昨年(2006年)12月21日に三番瀬再生計画の基本計画を策定したものの、事業計画はまだ策定していません。年度内には策定するとのことです。
 それなのに、実施計画(案)を作成して再生会議に提示するとはどういうことでしょうか。順序がデタラメです。環境保護団体の委員である竹川未喜男委員(千葉の干潟を守る会)がこの点を指摘しましたが、無視です〈注〉
〈注〉県は、再生会議から約3週間後の2月19日に事業計画を策定しました。


■三番瀬再生との関係が不明確
  〜流域下水道は三番瀬に悪影響〜

 第2に、12項目の実施事業(案)をみると、三番瀬円卓会議や再生会議でこれまで議論されてこなかったものがいくつも含まれています。それらがバラバラに記述されていて、三番瀬の再生とどういう関係にあるのかがまったくわかりません。
 たとえば江戸川左岸流域下水道事業の整備です。「河川及び東京湾へ流入する生活排水等の汚濁負荷量を削減し、公共用水域の水質保全を図ることが必要」とし、「流域下水道の整備を進めます」と書かれています。
 しかし、流域下水道の整備は、三番瀬の再生につながるどころか三番瀬の環境を悪くするものです。
  • 流域下水道は“金食い虫の代表的公共事業”といわれているように建設費が非常にかかりすぎるため、下水道整備の期間がものすごくかかります。江戸川左岸流域下水道も、整備の進ちょくは計画よりも大幅に遅れており、「あと50年たっても完了しない」と言われています。
     整備が大幅に遅れているため、市川市内を流れる春木川は水質が全国ワースト1、国分川はワースト3というひどい汚れです。これが三番瀬に流入しているのです。
  • 流域下水道は、いくつもの市町村をまたがって巨大な管渠を張り巡らし、最下流の処理場でのみ下水を処理するため、河川の水量を減少させます。これは、水循環を否定するものであり、三番瀬に悪影響を与えます。
     たとえば、西條八束氏(名古屋大学名誉教授)は、流域下水道が三河湾に流入する豊川の浄化作用の低下をもたらしたと述べています。
    《豊川下流域には流域下水道が造られているが、その効果には疑問がある。流域下水道は豊川主流の流量を減らして巨大なコンクリートの水路に移し、自然の浄化作用を低下させた。》 (西條八束『内湾の自然誌─三河湾の再生をめざして』あるむ)
 このように、流域下水道は三番瀬の保全・再生に逆効果となるものです。そんな事業が「三番瀬再生計画の実施計画(案)に盛り込まれているのです。そもそも、この流域下水道事業は、これまでの円卓会議や再生会議でまったく議論されていなかったものです。


■「傍聴者の意見や質問には答えなくてもよい」

 第3に、傍聴者の意見や質問はただ聞くだけ、ということをはっきり打ち出したことです。
 実施計画(案)には「干潟的環境(干出域等)形成の試験」が盛り込まれています。これについて、三番瀬を守る署名ネットワークの立花一晃さんが、会場からこう質問しました。
     「干潟的環境形成の試験を実施すると書かれているが、干潟的環境の形成とはどういう内容なのか。人工干潟をつくるということなのか」
 これに対し、大西隆会長(東京大学教授)は、「会場からの意見や質問には回答しないことになっている」とコメントしました。ですから、立花さんの質問に対し、県はいっさい答えません。
 じつは、この「干潟的環境(干出域等)の形成」こそ、県がめざしている「三番瀬再生」です。つまり、猫実川河口域に土砂をいれて人工干潟(人工海浜)をつくるということです。
 立花さんはそういう重要な点を質問したのです。しかし、県はいっさい答えません。
 こんなのが、はたして「先進的な県民参加型会議」などとよべるのでしょうか。「県民参加」とか「傍聴者も発言できる」などというのは、形だけでしかありません。


■三番瀬保護団体は1人に削減

 再生会議は今回から委員の一部が変更になりました。構成をみると、22人の委員のうち3人が「環境保護団体」の代表です。しかし、そのうち、三番瀬保護活動(埋め立てなどから三番瀬を守る活動)をしているのは1人だけです。
 三番瀬埋め立て反対の運動をつづけてきた団体のメンバーは、ついに1人に減らされてしまいました。


■「意見をどんどん出してほしい」とはどういうこと?

 ちなみに、2月3日に県立中央博物館でシンポジウム「どうなる、どうする千葉の干潟」が開かれ、パネリストのY氏(三番瀬再生会議副会長、江戸川大学教授)は、「三番瀬再生会議に対して市民も意見をどんどんだしてほしい」と言いました。
 率直に言わせてもらえば、「よく言うよ」です。これまで、円卓会議や再生会議で毎回のように市民が会場から意見を述べました。また、パブリックコメント(意見公募)に対し、多数の市民が意見を提出しました。しかし、これらの意見はほとんど無視です。
 そして今度は、「会場からの質問や意見には回答しなくてもよい」ということを会長が明言しました。
 Y氏はこんなことを知っていながら、「意見をどんどん出してほしい」などと言うのです。首をかしげてしまいます。



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