人工干潟造成検討事業に疑問相次ぐ
〜三番瀬専門家会議(2014年2月12日)〜
千葉県の三番瀬専門家会議が(2014年)2月12日、浦安市当代島公民館で開かれました。
専門家会議は、県が進めている三番瀬再生事業について、専門的な見地から評価・助言を得ることを目的としています。今回は今年度2回目の会合でした。
議題は4つです。
(1)市川市塩浜護岸改修工事
(2)三番瀬自然環境調査
(3)干潟的環境(干出域等)形成の検討
(4)千葉県三番瀬再生計画(第3次事業計画)(案)
このうち、委員から疑問や意見が相次いだのは(3)の「干潟的環境(干出域等)形成」です。
「干潟的環境(干出域等)形成」というのは人工干潟(人工砂浜)造成のことです。「人工干潟」や「人工砂浜」と書くと批判がでるので、「干潟的環境(干出域等)形成」という造語を使っています。
「干潟的環境形成検討事業」を来年度実施予定
県は2014年度(平成26年度)、「干潟的環境形成検討事業」を計画しています。事業の内容について、県はこう説明しました。
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「市川市塩浜2丁目の護岸前面における干潟的環境の形成について検討する。具体的には、平成23年度と24年度に実施した試験の成果などを活用することにより、自然条件や制約条件などを整理・検討する。そして、干潟的環境を形成する場所や規模、形成後の地形の安定性や環境への影響などを評価した複数案を作成し、比較する。それらの中間報告と結果報告を専門家会議に提示し、評価や助言をもらう」
「干潟的環境形成検討事業」をめぐるやりとり |
◇岡安章夫委員(東京海洋大学大学院教授、海岸工学)
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干潟的環境を形成する意味は何なのか?
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かつて多様であった三番瀬の自然環境は単調化が進んだ。そのため、自然環境や生物の多様化をはかるために干潟的環境を形成したほうがいいのではないか、という意見が出されている。そこで、干潟的環境の形成を検討することにした。
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昨年9月14日と今年1月18日に開かれた三番瀬ミーティングでは、「人工干潟造成(干潟的環境形成)はやめてほしい」という意見が出されている。来年度も人工干潟の造成試験をやるということなのか?
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来年度は、何かを物理的にやるということではない。あくまでも紙上での検討である。
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過去に人工干潟の造成試験をやったが、そこはどうなっているのか。投入した土砂はなくなって更地になっているのか?
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さらに地盤が下がっている。
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干潟を人工的につくるというのは、かなりむずかしい。人工的に干潟をつくると昔の自然をとりもどせるかどうかを検討するということだろうが、人工干潟をつくることが目的のようにもみえる。物理的に干潟をつくる技術があるのかどうか。つくったら波にさらわれたということになると、何をやっているのか、となる。三番瀬の再生は、与えられた自然を出発点にして進めるべきだ。そういう問題については、これまでの議論で結論がついていない。
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「干潟的環境形成検討事業」をやれば、干潟的環境形成を事業化するのだなと思われる。その点をきちんとすべきだ。
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それは非常に重要なことだ。「干潟的環境形成検討事業」をやると、どうしても人工干潟をつくりたくなる。人工干潟をつくると思っていたら、じっさいは人工海浜ができてしまったということにはならないのかどうか。
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三番瀬ミーティングでは、「人工干潟造成はやめてほしい」という意見も出されている。人工干潟ができるかどうかの可能性は検討してみないとわからない。
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「千葉県三番瀬再生計画(第3次事業計画)(案)」に載っているように、「三番瀬再生計画(基本計画)」ではこう書かれている。
「三番瀬の環境調査を継続して環境変化を監視しつつ、戦後の埋立てや都市化以前の三番瀬に近づけるため、海と陸との自然の連続的なつながりを回復させ、さらに環境の多様化を進めることにより、多様な生物が生息し、青潮の発生等による環境の急変からの回復力の強い干潟・浅海域を取り戻し、水質の浄化作用等の諸機能の強化を図ることが重要です。そのため、三番瀬の水循環を健全化し、河川等からの土砂供給を回復させ、多様な塩分を有する汽水的な環境を創出し、海と陸との自然のつながる場所を増やし、生物種と環境の多様性の回復を目指します」
ここに書かれていることが三番瀬再生の目的のはずだ。ところが、じっさいは干潟的環境(人工干潟)をつくることが目的になっているようにみえる。そうであれば、「三番瀬再生計画(基本計画)」の記述を訂正すべきだ。“干潟的環境形成事業ありき”にならないようにお願いしたい。
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今の三番瀬にとっては、河川からの土砂供給を回復させることが大事だ。その結果として干潟が形成されるのならよいが、人工的に土砂を投入して干潟をつくるというのはどうなのか。
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河川からの土砂供給を回復させるということにしないと、長続きしない。正攻法でやってほしい。「干潟的環境形成」にこだわると、三番瀬再生を一生懸命考えてきた人たちを裏切ることになる。
以上です。
大西会長をはじめ、岡安委員や横山委員の意見はどれも核心をついています。私たちの疑問や主張を代弁してくれたような感じでした。
大西隆会長の退任あいさつ
大西隆会長は2013年度で三番瀬専門家会議の委員を退任します。4月から豊橋技術科学大学(愛知県豊橋市)の学長に就任するからです。
大西会長は退任あいさつでこう話しました。
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「私は埋め立て計画が白紙撤回になる前から三番瀬にかかわってきた。三番瀬の埋め立ては県民の運動で中止になった。そういう力がないと、三番瀬はいい環境を保つことができない。きょうの専門家会議もたくさんの方が傍聴にみえた。今後も運動を続けてほしい」
★関連ページ
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