三番瀬漁業補償問題の調停案で申し入れ

〜三番瀬公金違法支出判決を活かす会〜



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 三番瀬の埋め立てをめぐる事前漁業補償問題で、東京地裁が8月26日に調停案を提示したことについて、市民団体「三番瀬公金違法支出判決を活かす会」(牛野くみ子、中丸素明、桜井英博共同代表)は28日、堂本暁子知事と吉田実県企業庁長に対し、
  • 9月県議会で県民に謝罪すること
  • 各当事者及び関係者がその責任に応じた負担をすること
  • 三番瀬の恒久的保全を明確にすること
 の3点を求める申入書を提出しました。

 三番瀬事前補償問題というのは、三番瀬の埋め立て計画(市川二期地区)を前提として、1982年に市川市行徳漁協に融資(43億円)された、いわゆる「転業準備資金」(ヤミ補償)が解決されないまま宙に浮いているものです。

 調停案では、県が市川市行徳漁協に60億円の損害賠償金を支払うことが示されています。これに対し申入書は、「損害賠償金を60億円と算定した根拠には何らの合理性も見いだし難い」「原因の究明、責任の追及、謝罪と反省が全くない」などと批判しています。
 また、9月議会で知事、企業庁長が県民に謝罪することや、知事と企業庁長、関係職員らに賠償金の一部を負担するよう求めています。

 「活かす会」は、「転業準備資金」の利息56億円(82年7月〜98年10月分の利息)を県企業庁が肩代わりしたことの是非を争った訴訟の原告・弁護団らで構成する市民団体です。

 この訴訟では千葉地裁が2005年10月、県が市川市行徳漁協、金融機関の間で交わした「三者合意」には「瑕疵(かし)があり、違法性を帯びるといわなければならない」との判決を下した。しかし、利子の肩代わりは「企業庁長の裁量内」として訴えを退けました。

 以下は、申入書の内容です。



県企業庁長あて申入書



2008年(平成20)8月28日 


 千葉県企業庁長 吉田 実 殿


三番瀬公金違法支出判決を活かす会    
共同代表 牛野くみ子(前原告団代表)
同 中丸素明(前弁護団長)
同 櫻井英博(前支援する会代表)



申 入 書


 三番瀬の埋立てをめぐる「転業準備資金」問題は、東京地方裁判所において民事調停が成立する見通しとなった。この新しい情勢を踏まえ、私たちは貴職に対し、次のとおり申し入れる。


第1 調停内容の総括的評価

 伝えられるところによると、調停の主たる内容は、千葉県が市川市行徳漁業協同組合に対し、金60億円を本年11月末までに支払うというものである。これに対して私達は、次のとおりの指摘をせざるを得ない。

 まず、千葉県が市川市行徳漁業協同組合に対して、巨額の損害賠償金を支払う法的根拠がないと考える。次いで、損害賠償金を60億円と算定した算定根拠には、何らの合理性も見出し難い。しかも、原因の究明、関係職員に対する責任の追及、関係者による真摯な謝罪と反省、再びこのような事態が生じることを防止するための具体的な措置などが全くないままの収束は、県民の利益を損なうものであり、決して認められない。

 千葉県は、このたびの民事調停の成立が、公平・中立な立場である調停委員会の判断を真摯に受け止めた結果である旨しきりに強調する。しかしながら、民事調停制度の利用は公平さを装うためのものにすぎないことは、解決金額に照らしても明白である。


第2 千葉地裁判決によって明らかにされたこの問題の本質

 もともとこの問題の発端は、1982年に千葉県・企業庁と市川市行徳漁業協同組合とが瑕疵(かし)ある合意(いわゆる「三者合意」)をし、実質的には違法な事前漁業補償が行われたことにあった。すなわち、当時は三番瀬埋立ての基本計画が策定されていなかったため、漁業補償はできない状況にあった。

 千葉県・企業庁も行徳漁協の当時の幹部も、そのことを十二分に認識していた。そこで、「転業準備資金の融資」という形態に仮託することを密かに合意し、約43億円の「融資」措置を講じることにした。そのことによって、実質的な事前漁業補償を脱法的に実現したのである。それこそが、この問題の本質であった。こうした不正常なことが行われた結果、2000年当時で「融資元本」を大幅に超過する約56億円もの利息が累積するという異常な事態に陥った。私達は、この累積利息の支払いが違法であるとして、住民訴訟を提起した。

 2005年(平成17年)10月25目、千葉地裁は私達が提起した住民訴訟において、転業準備資金を拠出する根拠となったいわゆる「三者合意」(県企業庁・行徳漁協・県信漁連の三者による密約)について、次のとおり法的に瑕疵があるとした。「三者合意は、本件融資の融資額全額を融資する必要性があったとは認め難いことに加えて、本件埋立計画が実現しない場合等に、県に多額の債務が無限定に発生する構造になっており、経済性の発揮という、地方公営企業の経営の基本原則(地方公営企業法3条)にも反することから、契約内容の相当性を欠くものといわざるを得ず、県企業庁長の裁量権を逸脱するものとして、戦痕があるといわなければならない」。そして、「三者合意の締結には瑕疵があり、違法性を帯びるといわなければならない」との判決を下した。

 これまでに、累積利息は支払われたが、融資元本約43億円が解決できないまま残されることになった。
 私達が、かねてから主張してきたとおり、「転業準備資金」問題を真に解決するには、何よりもまず、この司法の判断を尊重し活かすことが原則とされなければならない。しかるに、今般の民事調停の合意内容並びに千葉県・企業庁対応は、その本質を踏まえたものとは全くなっていない。


第3 多くの県民が納得できる解決の内容

 私達も、本件は極めて複雑な事情が絡み合っており、かつ年月も相当経過していることなどに照らし、早期に抜本的解決をはかることが必要であると考える。しかしながら、既に支出済みの利息等約56億円を含めると、総額約116億円にものぼる巨額の公金を支出しようとしているのである。
 翻って千葉県がおかれた財政状況をみると、本年度の一般会計当初予算で145億円もの財源不足を生じたように、極めて逼迫した状態にある。こうした県財政の危機的状況に照らしても、総額約116億円にものぼる巨費の無駄遣いは許されない。こうした財政の観点からしても、千葉地裁判決で明らとなったこの問題の本質を踏まえない無原則的な支出は絶対に許されない。

 私たちは、県民の多くが納得できる、あるいは少なくともやむを得ないとして忍受できる解決をはかるためには、次の三つの基本を踏まえることが必要不可欠であると考え、これまで貴職に対しても繰返し要請等を行ってきた。

 第1に、関係当事者が、暇症ある「三者合意」を締結した責任を自覚し、県民に対してあらためて謝罪すること
 第2に、「三者合意」の各当事者及び関係者が、その責任に応じた負担をすること
 第3に、県民全体の利益となるように、三番瀬の恒久的保全を明確にすることによって、この問題の抜本的解決をはかること


第4 貴職に対する申し入れ

 以上を踏まえ、貴職に対し次の措置を執られるように申し入れる。


T 県民に対し真摯に謝罪すること等

 貴職が、本年度9月県議会の席上で、県民に対して、あらためて謝罪若しくは遺憾の意を明確に表明すること。あわせて、このような瑕疵ある契約を締結するようなことは二度と繰返さない旨を誓約すること。


U 責任に応じた負担を実現すること

 1 貴職及び県企業庁の管理職が一定額の拠出をすること

     瑕疵ある三者合意を締結し、その結果として巨額の公金を支出するのであるから、その責任を有形化する意味からも、また県民の納得を得るためにも、貴職及び過去並び現在の管理職が一定額を拠出することは、必要不可欠である。ただし、負担する額及び管理職の範囲については、貴職の裁量並びに管理職の自覚に委ねる。


 2 関係者にも相応の負担を求めること




第5 私達の基本的な立場と活動方針
  〜県民が納得できる解決ができるまで活動し続ける〜

 「転業準備資金」をめぐる問題は、昭和57年の「三者合意」締結からすでに26年以上が経過した。事情も大きく変化し、問題は複雑化している。

 それらの事実を直視するとき、今般の調停の成立を契機として、県民全体の利益を念頭に最終的な解決を図るべきである。私達も、そのことを心から願っていることは、すでに述べたとおりである。

 一方、千葉地裁判決によって瑕疵があり違法性を帯びるとされた合意をし、その結果として膨大な公金支出を余儀なくされようとしているのである。真摯な反省も謝罪も再発を防止する措置もないままの安直な「幕引き」を図ることは、多くの県民の理解と納得を到底得られないであろう。ましてや、三番瀬の恒久保全への確たる道筋も示すことなく、巨額の公金を拠出することは決して許されない。千葉県政史に、あらたな汚点を残すことにもなる。

 私達も、かつて訴訟を担った立場から、貴職並びに関係各位の動向を、引き続き重大な関心をもって注視していく。貴職が、私たちの意見を虚心に受け止められ、この意見を踏まえた適切な解決が実現するよう、一層ご尽力下さることを心から要望する。そしてその解決が、東京湾に奇跡的に残された貴重な干潟・浅海域である三番瀬を、子々孫々にまで恒久的に保全する道を具体的に確立する画期となることを切に望む。
以上




県知事あて申入書



2008年(平成20)8月28日 


 千葉県知事 堂本暁子 殿


三番瀬公金違法支出判決を活かす会    
共同代表 牛野くみ子(前原告団代表)
同 中丸素明(前弁護団長)
同 櫻井英博(前支援する会代表)



申 入 書



 三番瀬の埋立てをめぐる「転業準備資金」問題は、東京地方裁判所において民事調停が成立する見通しとなった。この新しい情勢を踏まえ、私たちは貴知事に対し、次のとおり申し入れる。


第1 調停内容の総括的評価

 伝えられるところによると、調停の主たる内容は、千葉県が市川市行徳漁業協同組合に対し、金60億円を本年11月末までに支払うというものである。これに対して私達は、次のとおりの指摘をせざるを得ない。

 まず、千葉県が市川市行徳漁業協同組合に対して、巨額の損害賠償金を支払う法的根拠がないと考える。次いで、損害賠償金を60億円と算定した算定根拠には、何らの合理性も見出し難い。しかも、原因の究明、関係職員に対する責任の追及、関係者による真摯な謝罪と反省、再びこのような事態が生じることを防止するための具体的な措置などが全くないままの収束は、県民の利益を損なうものであり、決して認められない。

 千葉県は、このたびの民事調停の成立が、公平・中立な立場である調停委員会の判断を真摯に受け止めた結果である旨しきりに強調する。しかしながら、民事調停制度の利用は公平さを装うためのものにすぎないことは、解決金額に照らしても明白である。


第2 千葉地裁判決によって明らかにされたこの問題の本質

 もともとこの問題の発端は、1982年に千葉県・企業庁と市川市行徳漁業協同組合とが瑕疵ある合意(いわゆる「三者合意」)をし、実質的には違法な事前漁業補償が行われたことにあった。すなわち、当時は三番瀬埋立ての基本計画が策定されていなかったため、漁業補償はできない状況にあった。

 千葉県・企業庁も行徳漁協の当時の幹部も、そのことを十二分に認識していた。そこで、「転業準備資金の融資」という形態に仮託することを密かに合意し、約43億円の「融資」措置を講じることにした。そのことによって、実質的な事前漁業補償を脱法的に実現したのである。それこそが、この問題の本質であった。こうした不正常なことが行われた結果、2000年当時で「融資元本」を大幅に超過する約56億円もの利息が累積するという異常な事態に陥った。私達は、この累積利息の支払いが違法であるとして、住民訴訟を提起した。

 2005年(平成17年)10月25日、千葉地裁は私達が提起した住民訴訟において、転業準備資金を拠出する根拠となったいわゆる「三者合意」(県企業庁・行徳漁協・県信漁連の三者による密約)について、次のとおり法的に瑕疵があるとした。「三者合意は、本件融資の融資額全額を融資する必要性があったとは認め難いことに加えて、本件埋立計画が実現しない場合等に、県に多額の債務が無限定に発生する構造になっており、経済性の発揮という、地方公営企業の経営の基本原則(地方公営企業法3条)にも反することから、契約内容の相当性を欠くものといわざるを得ず、県企業庁長の裁量権を逸脱するものとして、瑕疵があるといわなければならない」。そして、「三者合意の締結には瑕疵があり、違法性を帯びるといわなければならない」との判決を下した。

 これまでに、累積利息は支払われたが、融資元本約43億円が解決できないまま残されることになった。

 私達が、かねてから主張してきたとおり、「転業準備資金」問題を真に解決するには、何よりもまず、この司法の判断を尊重し活かすことが原則とされなければならない。しかるに、今般の民事調停の合意内容並びに千葉県・企業庁の対応は、その本質を踏まえたものとは全くなっていない。


第3 多くの県民が納得できる解決の内容

 私達も、本件は極めて複雑な事情が絡み合っており、かつ年月も相当経過していることなどに照らし、早期に抜本的解決をはかることが必要であると考える。しかしながら、既に支出済みの利息等約56億円を含めると、総額約116億円にものぼる巨額の公金を支出しようとしているのである。翻って千葉県がおかれた財政状況をみると、本年度の一般会計当初予算で145億円もの財源不足を生じたように、極めて逼迫した状態にある。こうした県財政の危機的状況に照らしても、総額約116億円にものぼる巨費の無駄遣いは許されない。こうした財政の観点からしても、千葉地裁判決で明らとなったこの問題の本質を踏まえない無原則的な支出は絶対に許されない。

 私たちは、県民の多くが納得できる、あるいは少なくともやむを得ないとして忍受できる解決をはかるためには、次の三つの基本を踏まえることが必要不可欠であると考え、これまで貴知事に対しても繰返し要請等を行ってきた。

 第1に、関係当事者が、瑕疵ある「三者合意」を締結した責任を自覚し、県民に対してあらためて謝罪すること

 第2に、「三者合意」の各当事者及び関係者が、その責任に応じた負担をすること

 第3に、県民全体の利益となるように、三番瀬の恒久的保全を明確にすることによって、この問題の抜本的解決をはかること


第4 貴知事に対する申し入れ

 以上を踏まえ、貴知事に対し次の措置を執られるように申し入れる。


I 県民に対し真摯に謝罪すること等

 貴知事が、本年度9月県議会の席上で、県民に対して、あらためて謝罪若しくは遺憾の意を明確に表明すること。あわせて、このような瑕疵ある契約を締結するようなことは二度と繰返さない旨を誓約すること。

U 三番瀬の恒久的保全をはかるための道筋を具体的に明らかにすること

 「転業準備資金の融資」の実行、換言すれば実質的には違法な事前漁業補償を実施してしまったことが、その後の三番瀬の恒久的保全政策の実現を困難ならしめる最大の要因の一つとなってきた。
 長年にわたって懸案となってきた「転業準備資金」問題が、いま全面的解決を迎えようとしている。多くの県民の理解を得るためには、これを契機として、三番瀬の恒久的な保全に向けて大きく前進するしかない。

 今回の調停案では、金銭的措置に加えて、三番瀬漁場再生について、「千葉県として関係部局が連携して取り組んでいくこととされている」旨が盛りこまれた。これに倣(なら)って、「三番瀬の恒久的保全に向けて千葉県として関係部局が連携して取り組んでいく」旨を、9月県議会で表明することが最低限の責務である。

 さらに、遅くとも貴知事の今任期中に、県民に見える形で具体的な第一歩を踏み出すことが求められていると考える。具体的には、ラムサール条約へ登録することを明確に宣言するとともに、その時期と段取りを明確に提示することが、その核心となるであろう。あわせて、当座の措置として、県民各層からなる「ラムサール条約登録推進委員会(仮称)」の設置なども早急に検討されるべきである。


第5 私達の基本的な立場と活動方針
   〜県民が納得できる解決ができるまで活動し続ける〜

 「転業準備資金」をめぐる問題は、昭和57年の「三者合意」締結からすでに26年以上が経過した。事情も大きく変化し、問題は複雑化している。それらの事実を直視するとき、今般の調停の成立を契機として、県民全体の利益を念頭に最終的な解決を図るべきである。私達も、そのことを心から願っていることは、すでに述べたとおりである。

 一方、千葉地裁判決によって瑕疵があり違法性を帯びるとされた合意をし、その結果として膨大な公金支出を余儀なくされようとしているのである。真摯な反省も謝罪も再発を防止する措置もないままの安直な「幕引き」を図ることは、多くの県民の理解と納得を到底得られないであろう。ましてや、三番瀬の恒久保全への確たる道筋も示すことなく、巨額の公金を拠出することは決して許されない。千葉県政史に、あらたな汚点を残すことにもなる。

 私達も、かつて訴訟を担った立場から、貴知事並びに関係各位の動向を、引き続き重大な関心をもって注視していく。貴知事が、私たちの意見を虚心に受け止められ、この意見を踏まえた適切な解決が実現するよう、一層ご尽力下さることを心から要望する。そしてその解決が、東京湾に奇跡的に残された貴重な干潟・浅海域である三番瀬を、子々孫々にまで恒久的に保全する道を具体的に確立する画期となることを切に望む。
以上





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