三番瀬漁業補償で県企業庁が66億円提示

〜2漁協、調停受け入れへ〜



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 三番瀬の埋め立て計画をめぐる漁業補償問題で、千葉県企業庁は(2008年)8月5日、東京地裁の調停委員会の提案に従って、計66億円を市川市行徳、南行徳の2漁協に支払う意向を明らかにしました。

■66億円の内訳

 66億円の内訳はこうです。
    《市川市行徳漁協に60億円、南行徳漁協に6億円の計66億円を11月末までに支払うという内容で、県は従う方針。(中略)
     市川市行徳漁協の約43億の転業準備資金問題について、県は98年10月までの利子約56億円を肩代わりしていたが、08年3月までに新たに約2億円の利子が発生。このため元本と併せ、約45億円が最低限必要で、60億円で調停がまとまった場合、差し引き15億円が組合員の間で分配される見通し。》(『千葉日報』8月6日)
 このうち、行徳漁協に対する60億円が、事前漁業補償(転業準備資金=ヤミ補償)問題にかかわるものです〈注〉
 この問題については「三番瀬公金違法支出判決を活かす会」がとりくんでいて、近日中に申入書を提出する予定とのことです。

 ここでは、新聞4紙の報道を転載させていただきます。



    〈注〉「三番瀬漁業補償問題」というのは、三番瀬海域の埋め立て計画(市川二期地区)を前提として、1982年に市川市行徳漁協に融資された、いわゆる「転業準備資金」が解決されないまま宙に浮いているものです。
     当時の県企業庁、行徳漁協、金融機関の三者合意により、金融機関から約43億円が貸し付けられ、利子については企業 庁が漁協に代わり負担することになっていました。
     企業庁は98年までの利子約56億円を支払いましたが、三番瀬保護団体のメンバーなど(三番瀬公金違法支出訴訟原告団)がこれを違法とし提訴。地裁は2005年10月、三者合意の問題性を指摘しましたが、利子の肩代わりは「企業庁長の裁量内」として訴えを退けました。それ以降の未払い利子は約2億円となっています。





《『千葉日報』8月6日》

  県企業庁66億円賠償
  2漁協、調停受け入れへ 三番瀬漁業補償

 三番瀬海域をめぐる漁業補償問題で、県企業庁は5日記者会見を開き、県が漁協に賠償する調停金額が、東京地裁の調停委員会から提案されたことを明らかにした。市川市行徳漁協に60億円、南行徳漁協に6億円の計66億円を11月末までに支払うという内容で、県は従う方針。一方、両漁協とも、千葉日報社の取材に対し、調停委の提案を受け入れる考えを示した。三番瀬の紆(う)余曲折にもまれながら、約30年に及んだ難題は、解決に向け大きく前進した。

 2漁協に対する漁業補償について、県は2005年10月に「市川地先漁場に係る補償アドバイザー」を設置。06年12月のアドバイザー提言を踏まえ、補償案をまとめ漁協側に提示。公正を期すため08年5月、東京地方裁判所に民事調停を申し立てていた。吉田実企業庁長によると、先月8日の第10回調停で、調停委から調定額が示されたという。

 県の補償案では仮に期限を11月とした場合、市川市行徳漁協には56億円、南行徳には4億円を支払う内容だった。調停委は「県の賠償金額では解決は難しい」と判断し、それぞれ金額を上乗せした格好となった。

 一方、市川市行徳漁協の約43億の転業準備資金問題について、県は98年10月までの利子約56億円を肩代わりしていたが、08年3月までに新たに約2億円の利子が発生。このため元本と併せ、約45億円が最低限必要で、60億円で調停がまとまった場合、差し引き15億円が組合員の間で分配される見通し。

 堂本暁子知事は「この金額を真摯(しんし)に受け止め、できる限り速やかに解決するよう最大限の努力をしたい」とコメント。26日の次回調停では、さらに付帯条項を盛り込んだ調停案が示される見通し。吉田庁長は調停案が妥当なら、県議会に補正予算案などを提案する考えを示した。

 賠償金について、市川市行徳漁協の鴇田栄治管理部長は「第三者機関である調停委員会の判断を尊重し、組合として受け入れる方針。今後、異議を申し立てることもない。やっと長年の懸案事項が整理できる」と話した。

 また南行徳漁協の榎本保組合長は「提示された賠償額を全面的に受け入れたい。漁場の再生と対策を強く要望したい」と述べた。

■三番瀬漁業補償問題
 県企業庁は、市川二期地区の埋め立て計画を進めるため、1982年に金融機関を通じて市川市行徳漁協に約43億円の「転業準備資金」を融資した。同漁協の624人中、617人が同漁協から無償貸し付けを受け、518人が転業したが、2001年9月、同 庁が埋め立て計画を中止。漁業補償が行われなくなり、同漁協の組合員は返済のあてを失った。一方、南行徳漁協と同庁は1975年、浦安二期D地区埋め立て工事の影響被害について市川二期地区埋め立て計画策定後に補償すると覚書を結んでいたが、同計画の中止により何も補償を受けていなかった。




《『読売新聞』千葉版、8月6日》

  三番瀬補償66億円
  県企業庁意向 市川の2漁協に

 東京湾・三番瀬の埋め立て計画を巡る漁業補償問題で、県企業庁は5日、東京地裁の調停委員会の提案に従い、計66億円を市川市行徳、南行徳の両漁協に支払う意向を明らかにした。漁協側も受け入れる方針で、長期にわたり難航してきた補償問題は、ようやく収束に向かう。

 調停金額の内訳は、市川市行徳漁協に60億円、南行徳漁協に6億円で、支払期限は11月末。調停委員会が7月8日に提案していた。

 県企業庁が調停で主張していた支払額は、同期限の支払いで試算すると、市川市行徳漁協に約56億円、南行徳漁協に約4億円。これに対し、調停委員会は、「約30年にわたり不安定な状況に置かれた漁協の負担を考えれば、県算出の賠償額では解決は難しい」と所見をつけた。

 市川市行徳漁協は2日、南行徳漁協は5日にそれぞれ臨時総会を開き、調停金額を了承することを決めた。吉田実・県企業庁長も5日、記者会見し、「公正・中立な立場である調停委員会の判断を真摯(しんし)に受け止める」と、提示された金額を支払う意向を示した。今後、同庁は今月26日の次回調停で同委員会から提示される付帯条件を踏まえ、9月県議会に補正予算案を提出する。

 市川市行徳漁協は、「長年の苦労と負担はあったが、妥当な額。今後は残る漁業者がどう生計を立てていくか、県と連携を図る」とコメント。南行徳漁協は「引きずっていても納得いく解決はできないというあきらめムードが漂っている。この間、多くの組合員が亡くなり、高齢化と後継者不足が深刻になった。県に翻弄(ほんろう)された思いもある」とした。

 堂本知事は、「できる限り速やかに問題の解決が図られるよう最大限の努力をする」との談話を出した。


 この問題では、漁協ごとに個別の事情がある。

 市川市行徳漁協は1982年7月、県企業庁と金融機関(県信用漁業協同組合連合会と千葉銀行)との間で、三番瀬の「市川2期地区」埋め立て計画を推進するため、〈1〉金融機関がまず漁協に転業準備資金として約43億円を融資〈2〉利息は県企業庁が負担〈3〉元本は埋め立て後に同庁が漁協に支払う漁業補償で返済――などとする協定を結んだ。だが、県が2001年9月、同地区の埋め立てを中止したことで漁業補償は消滅。漁協は融資を返済できなくなった。なお、県企業庁は82年7月〜98年10月分の利息約56億円を支払ったが、それ以降の利息約2億円は支払っていない。

 南行徳漁協は、1975年8月に着工した「浦安2期D地区」埋め立てで、ノリ養殖に損害が出たとして県企業庁に賠償を求めた。同庁は「隣接する市川2期地区の埋め立て後に対応する」としていたが、計画中止により賠償は宙に浮いていた。




《『朝日新聞』千葉版、8月6日》

  三番瀬の漁業補償問題 66億円案提示

 東京湾の干潟・三番瀬(市川市など)の埋め立て中止に伴う行徳、南行徳の両漁協に対する漁業補償をめぐり、県は5日、東京地裁で進む民事調停で補償額として計66億円を提示されたことを明らかにした。県側は「真摯(しんし)に受け止める」と受け入れの方針。
 両漁協側も賛同する姿勢を見せているという。県は、早ければ9月県議会に補正予算案を提出するなど補償に動き出すとしている。

 漁業補償をめぐっては昨年4月、県が「当事者間の交渉よりも公平中立な第三者機関を活用した方が早期解決につながる」として両漁協に補償額を提示して民事調停を申し入れていた。今年7月までにそれぞれ10回ずつ開催して交渉を重ねてきた。

 県企業庁の記者会見によると、県側が試算した補償額は行徳漁協に56億円、南行徳漁協には4億円としていた。だが、地裁の調停委員会は「漁協の長期間にわたり不安定な状況に置かれたことによる負担を考えれば、県の算出額での解決は難しい」と指摘。その上で行徳漁協に60億円、南行徳漁協に6億円とするのが相当とするという意見が、委員側から口頭で県側に伝えられたという。支払いは11月末を期限としている。

 26日に開かれる11回目の調停で補償額の算出根拠や調停の具体案が示される予定。それを受け、早ければ9月県議会に補償金を予算化するために補正予算案と調停案受け入れの同意を求める議案を提出するという。

 補償額を提示されたことについて、堂本暁子知事は「調停額を真摯に受け止め、速やかに調停で問題解決が図られるよう引き続き最大限の努力をしていく」とのコメントを出した。

 問題は30年近く前に端を発する。三番瀬の埋め立てを前提に、行徳漁協が県企業庁を介して金融機関から約43億円の「転業準備資金」の融資を受けた。返済には埋め立て後に県から支払われる漁業補償金を充てる予定だったが、経済状況の悪化や環境保護の観点から延期。さらに01年に当選した堂本知事が計画を撤回したため、結局漁業補償金は支払われていない。両漁協への補償をめぐっては、県が05年秋に第三者機関として設置した「アドバイザー会議」が06年、県に対して金銭面での補償を提言。県側も提言を尊重するとしていた。




《『毎日新聞』千葉版、8月6日》

  三番瀬漁業補償問題
  調停金66億円を提示
   2漁協と県、受け入れ方針

 東京湾最奥部の干潟「三番瀬」の埋め立てを巡る漁業補償問題について、県が東京地裁に申し立てた民事調停で、同地裁は県が市川市行徳、南行徳両漁協に対し、損害賠償金などとして66億円を支払うとする調停金額を提示した。県が5日、発表した。3者とも「金額には納得しており、尊重したい」として受け入れる方針。

 県企業庁は82年7月、市川2期地区埋め立て計画を前提に、市川市行徳漁協に転業準備資金として42億9750万円を金融機関を通じ融資。しかし、01年に当選した堂本暁子知事は計画を撤回。返済原資になるはずだった漁業補償金が支払われず、漁協には借金が残された。

 また、南行徳漁協には、浦安2期D地区埋め立て事業などによって漁業被害が発生。この問題に関し、県が設置した第三者機関が企業庁に対し、「両漁協に金銭的補償を行うべきだ」と提言していた。

 企業庁は07年5月、第三者の仲介による早期解決を目指し、東京地裁に民事調停を申し立てた。企業庁は賠償額を市川市行徳漁協に約56億円、南行徳漁協に約4億円と算定していたが、同地裁の調停委員会は「約30年の長期間にわたり不安定な状況に置かれた漁協の負担を考慮し、県の算出金額では解決は難しい」と結論付け、それぞれ60億円と6億円が妥当とした。両漁協とも、金額には同意しているという。

 金額提示を受け、堂本知事は「調停委員と漁協関係者などの皆様に深く感謝する。できるだけ速やかに解決を図る」とのコメントを発表した。市川市行徳漁協の男性組合員は「問題が解決に向かい感慨深い」と話した。




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