〜三番瀬再生計画(事業計画案)のパブリックコメント〜
牛野くみ子
■「何だこれは? おかしいぞ! 数で勝負か」
千葉県は先ごろ、三番瀬再生計画(事業計画案)に係わるパブコメ(パブリックコメント=意見公募)を実施し、結果を発表しました。それによれば、提出数は91件で、かなりの数にのぼっています。
これまでも、基本計画案に22件、護岸改修計画案に26件のパブコメが出ていますが、今回のようにたくさんの意見が出たのは初めてです。それだけ人々の関心の高さをうかがわせるものですが、内容を見るにおよんで、「何だこれは? おかしいぞ! 数で勝負か」と思ったのは私一人ではありませんでした。
県には記名で意見を提出しますが、個人情報何とやらで、公開されるときは文章だけです。理由も書かず2〜3行の同じような内容がいくつもありました。人工干潟礼賛や、お台場や幕張の浜のような人工海浜をつくって欲しい、というものです。
さまざまな意見をお持ちの方がおられるのは当然です。が、こういった再生事業についていくらかでも勉強しておられる方なら、人工干潟の成功例はないということぐらい分かっていなくては……。
■人工海浜「幕張の浜」はとうとう砂補給をやめて遊泳禁止に
それでも人工干潟を造りたいなら、すでに埋め立てて未利用地になっているところで実験するのがいいでしょう。
たとえば幕張の浜は、県企業庁が埋め立ての代償とし、幕張新都心地区の地先につくったものです。この人工海浜は完成直後から風や波の影響で浸食され続けたため、県は砂の補給に大金を投入し続けました。しかし、砂の流出がとまらず、とうとう砂補給をやめ、遊泳禁止としました。
この財政難の時に札束だけを泳がせるのですか。自然は人間の思うようにはゆかないものです。
■再生会議委員の見識が問われている
これまでもパブコメが求められ、多くの方が意見を寄せました。が、何ら検討されず、パブコメは形骸化していました。しかし今回は、再生会議でパブコメ結果の議論をすることが決まっています。
三番瀬の真の再生が検討されれば、数の勝負にはならないと思います。再生会議の委員の資質が問われるときです。さまざまな環境を持つ海域があることが、さほど広くない三番瀬を特徴づけてきました。そして、それが多様な生物を生み出しているのです。ですから、首都圏の中にあって今なお漁がされているのです。
パブコメは千葉県民の良識が問われます。そしてそれを評価する再生会議の委員の見識も問われるときです。なにしろ三番瀬は全国から注目されている全国モデル(?)なんですから。“寄らば大樹の陰”なんて考えていると大津波が来ます。
(2006年6月)
★関連ページ
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