〜増子義久著『東京湾が死んだ日』を読む〜
鈴木良雄
発売されたばかりの増子義久著『東京湾が死んだ日――ルポ 京葉臨海コンビナート開発史』(水曜社)を読みました。
■京葉埋め立て開発の知られざる実態を暴く
この本は、高度経済成長時代の京葉臨海埋め立て開発(千葉の東京湾岸開発)の歴史を掘り起こしたルポルタージュです。
著者は、元朝日新聞記者です。千葉支局にも1970年から勤務していました。同書は、そのときの取材などを元にして書いたものです。
千葉の臨海開発では、魚介類など生き物の宝庫だった広大な漁場が埋め立てによって失われ、37の漁業組合が漁業権を奪われました。同書は、補償金によって狂わされた漁民たちの生活や、開発に群がるブローカーや政治家たちなど、漁村が巨大資本によって略奪される過程を暴いています。
■「山本周五郎の海はこうして略奪された」
本の帯には「山本周五郎の海はこうして略奪された」の見出しがつけられ、こう書かれています。
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《石油コンビナートとディズニーランド。巨大資本による東京湾開発は、零細漁民の生活を押し潰して建設された。それは『青べか物語』に描かれた山本周五郎の世界が、大物政治家と右翼暴力団に乗っ取られる瞬間でもあった。大製鉄所、国際空港、ゴルフ場。これらの乱開発によって、千葉県は「金権政治」の代名詞となった。その「腐食の構造」が、これほど大胆かつ詳細に描かれたことはない》
■三番瀬にかんする記述
〜猫実川河口域のカキ礁も紹介〜
同書は、三番瀬や猫実川河口域のカキ礁についてもふれています。
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《「東京ディズニーランド」の地先海面に、遠浅の海が広がっている。「三番瀬」である。東京湾最奥部の、この干潟と浅瀬には40種以上の魚介類が生息し、シギやチドリなど希少種を含めた約90種類の水鳥の飛来地としても知られている。
その三番瀬が埋め立てによって一時、消失の危機に立たされた。当初は全体の半分近い740ヘクタールを埋め立てる予定だったが、自然保護団体などの反対で次第に縮小に追い込まれ、堂本暁子知事は平成13(2001)年4月、ついに計画の全面中止を表明した。
その後、三番瀬の中に国内最大級の天然のカキ礁が存在することが明らかになった。総面積約5000平方メートル、密度の高いところでは1平方メートルに1000個以上のカキが生息することが確認されている。
これに対して、「三番瀬再生計画検討会議」(県の諮問機関)は平成17(2005)年6月、再生計画案を答申した。「再生」に名を借りた新たな“埋め立て”計画がふたたび浮上しつつある。》
同書は、たいへんすぐれたルポだと思います。とくに千葉の方々にはぜひおすすめしたい本です。
(2005年9月)
★関連ページ
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- 三番瀬のカキ礁は全国最大級の規模〜三番瀬市民調査(2005/4/10)
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