江戸川左岸流域下水道に関する勉強会

〜県や市川市にだまされてはいけない〜

千葉県自然保護連合事務局



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 「千葉の干潟を守る会」「千葉県自然保護連合」のメンバーと市川市の都市環境保全グループは(2001年)6月16日、江戸川左岸流域下水道に関する勉強会をひらきました。
 勉強会では、県や市川市が下水計画などについて事実を市民に知らせず、だましつづけていることなどが明らかになりました。勉強会で明らかになったことなどの一部をお知らせします。


1.三番瀬埋め立て計画の縮小にあわせて下水計画も下方修正
2.第一下水処理場の建設は不要
3.下水計画に関する私たちの要望内容
4.県の回答はウソだらけ
5.大雨時に大量の汚水を東京湾・三番瀬に放流
6.市民をだまし、都市計画道路の建設に躍起となっている市川市





1.三番瀬埋め立て計画の縮小にあわせて下水計画も下方修正


 江戸川左岸流域下水道計画は、三番瀬埋め立て計画の規模縮小にあわせ、計画人口や計画処理汚水量などが修正された。計画人口は175.6万人から143万人へ、1人1日最大処理水量は720リットルから480リットルへ、1日最大処理水量は153.9万トンから77.4万トンへ、というようにである。
 その理由は、計画では、人口や1人あたりの使用水量が右肩上がりで増え続けるとみていたが、実際には人口の伸びは鈍化した。また、使用水量も、節水が進んだために減少していること──などによるものである。
 県がこのように計画を修正した本当の理由は、三番瀬埋め立て計画を740ヘクタールから101ヘクタールに大幅に縮小せざるをえなくなったことによる。埋め立て地に建設予定の第一処理場の面積を48ヘクタールから20ヘクタールに縮小するのにあわせて、それぞれの計画数値を下方修正した。
 




2.第一下水処理場の建設は不要


 実態から計画を見直せば、計画人口143万人や1日最大処理水量77.4万トンも過大で、計画人口は100万人、1日最大処理水量は42万トンでよい、というのが、和波一夫氏(東京の水を考える会)や関係者の見方である。
 こうした現実的な将来値からみれば、1日最大処理水量46.4万トンの処理能力(将来的)をもつ既設の第二処理場だけで十分である。これに加えて、既設の市単独処理場を改善して有効活用すれば、もはや第一処理場の建設は必要でない。
 このように第一処理場が不要であるという意見は、県庁内部の下水道部局でも出されている。





3.下水計画に関する私たちの要望内容


 「千葉の干潟を守る会」と「千葉県自然保護連合」は、1999年4月と2000年4月の2回にわたって、同下水道計画の根本的見直しを県に要請した。主な要望内容は次のとおり。
  •  第一処理場の建設を急がず、精度の高い人口予測などを行い、適正な下水道計画の策定と適正規模の処理場の計画を立てること。
  •  どうしても第一処理場が必要というのであれば、都市計画決定されている地区での用地取得について努力すべき。
  •  水循環の再生が今後の下水道計画に欠かせないコンセプトになろうとしている。こうした視点から、江戸川左岸流域下水道計画を根本的に見直すこと。見直しにあたっては次の点を考慮すること。
    • すでに埋設した下水道管は生かしつつ、たとえば計画を3分割し、上流、中流、下流域にコンパクトな終末処理場を建設するなど、できる限り地域に水を戻して河川水の減少を防ぎ、三番瀬に負担をかけないような計画に変更する。
    • 既設の処理場(市川市の菅野処理場、松戸の金ヶ作・新松戸両処理場)を改修し存続させる。
    • 江戸川左岸流域下水道と印旛沼流域下水道の連絡幹線を利用して、江戸川左岸の下水の一部を印旛沼流域下水道の花見川終末下水処理場で処理する。また、江戸川左岸と手賀沼流域下水道の連絡幹線を整備し、関宿町や野田市で収集した下水を手賀沼流域下水道の終末処理場で処理するなど、合理的な方策を講じる。
    • 人口密度の高い都市部では小規模の公共下水道、コミュニティプラント(集合住宅の汚水処理施設)で、逆に人口密度の低いところでは各戸に合併浄化槽をつけるというように、地域の条件に応じたさまざま方式を採用すること。
    • 里山や森、水田(特に休耕田)、小川、池、干潟など、自然が持っている浄化力を活かし、これらと組み合わせた下水道づくりを進めること。
    • 三番瀬は、下水処理場に換算すると、13万人分の生活排水浄化力に相当するほどの、“天然の下水処理場”となっている。このように強大な浄化能力を持つ三番瀬を全面的に残してしっかり管理し、遊水池などを利用した浄化を組み合わせれば、費用も安くなり、水質もより浄化される。また水循環という点からも理にかなっている。
  •  市民、研究者、行政などがいっしょになって新しい下水処理のあり方を検討する場を設置すること。





4.県の回答はウソだらけ


 こうした要望や要請に対する県の回答はウソだらけだったことが明らかになった。
 2点だけあげると、
  •  上流、中流、下流域にコンパクトな終末処理場を建設すべきという点について、県は県議会などで「内陸部にはそんな用地は残っておらず、土地の確保が困難」と答えた。
     しかし、野田市の根本崇市長は6月14日、利根運河上流部分に下水処理場建設を求めていくことを明らかにした。理由は、利根運河の水量が減少して水質が悪化しているために、そこに新たな処理場を建設し、その処理水を運河に放流しようというものである。
     用地の確保について野田市は、「処理場案周辺は休耕田も多く、規模を大きくすることは可能」(千葉日報、6月15日)と述べている。つまり、「土地の確保が困難」という県の言い分はウソっぱちだったということである。。私たちは「行政がその気になれば、用地は確保できる」と言ってきたが、今回の野田市の言明はそれを証明したことになる。
     ちなみに、今回の野田市の要望は、私たちが主張している「上流、中流、下流域にコンパクトな終末処理場を」の正しさを裏づけている。
  •  江戸川左岸流域下水道と印旛沼流域下水道の連絡幹線の活用すべきという点について、県は、「連絡幹線はあくまでも大地震などの非常時にだけ使うものであり、普段の利用はできない」と回答した。
     しかし、連絡幹線の建設を建設省(現国土交通省)が認可し、事業費を補助するにあたって、同省は、「50年とか100年に一度しか起こらないような非常時にだけ連絡幹線を使うのはもったいないし、ムダだ。だから、普段も暫定利用すべき」という条件を付けたという。
     現に、印旛沼流域下水道の花見川処理場と大柏川にかかる本北方橋(市川市内)を結ぶ連絡幹線がいま工事中で、2005(平成17)年度に完成予定だが、その連絡幹線には、市川市の北方、宮久保、若宮、柏井地区で集めた下水を流すことになっているとのこと。
     県は、連絡幹線について、県議会でも「普段の利用はできない」と答えたが、これが大ウソであったことが明らかになった。





5.大雨時に大量の汚水を東京湾・三番瀬に放流


 6月14日付けの朝日新聞は1面トップ記事で、「未処理の下水、海を汚染」という見出しをつけ、大都市の下水の一部が雨天時に未処理のまま海に流れ込んでいることを報道している。この記事が問題にしているのは、汚水と雨水を同じ菅で流す合流式の下水道である。
 千葉でも、たとえば市川市の菅野処理場は合流式であり、大雨時に大量の未処理水を河川に放流している。しかし、合流式だけが問題なのではない。汚水管と雨水管が別になっている分流式でも、大雨時には大量の汚水を河川や海に放流していることが、今回の勉強会で明らかになった。
 たとえば、江戸川左岸流域下水道は分流式だが、じっさいには大雨時にかなりの量の雨水が管に入ってくる。したがって、大雨時には、第二処理場(市川市福栄)で通常の処理をしきれなくて、大量の汚水をそのまま放流している。それも、通常は、処理水を旧江戸川の方に放流しているが、大雨時はそれが無理なので、猫実川に放流する。つまり、三番瀬の猫実川河口域に未処理の汚水を大量に放流しているのである。このため、県は、毎年、漁協に補償金として約1000万円を支払っている。
 この事実は、猫実川河口域の水質を悪くしている犯人が依然として県の下水道であることを示している。また、それを容認して毎年多額の補償金をもらっていることを隠し、「猫実川河口域は汚れているから埋め立てるべき」と主張している行徳漁協幹部の悪質な姿勢も明らかにしている。





6.市民をだまし、都市計画道路の建設に躍起となっている市川市


 今回の勉強会では、都市計画道路の建設を強行するために市民をだまそうとしている市川市の悪質な姿勢も浮き彫りになった。
 問題の道路は「都市計画道路3・4・18号」である。計画地は、すぐれた景観などが残されたところであり、風致地区に指定されている。こんなところに京葉道路の市川インターチェンジにつながる幹線道路をつくれば、街の景観は壊され、住環境が悪くなるのは明らかである。それで、長年にわたって、住民は道路建設に反対しつづけている。
 ところが最近、市川市は、同計画道路の地下に江戸川左岸流域下水道の幹線(市川幹線)管渠敷設が計画されていることをもちだして、周辺住民を説得し、建設を強行しようとしている。「都市計画道路ができなければ、みなさんはいつまでたっても下水道が使えない」と、盛んに宣伝するのである。そして、自治会を通じ、「下水道市川幹線と都市計画道路3・4・18号の整備促進を求める陳情」という名の署名集めをおこなっている。
 これに対し、反対住民は次の点を主張している。
  •  江戸川左岸流域下水道と印旛沼流域下水道の連絡幹線を利用すれば、都市計画道路の地下に管渠を敷設する必要はない。
  •  都市計画道路ではなく、それに併行して走っている既存の道路の地下に管渠を敷設すればよい。

 この2点に対し、市川市はこう答えている。
  •  連絡幹線は、大地震などの非常時のときにか利用できない。
  •  既存の道路は真っ直ぐでないので、管渠の敷設は不可能。

 今回の勉強会で、この市の回答が大ウソであることが明らかになった。
  •  前述のように、建設省(現国土交通省)は、普段も暫定利用するよう条件をつけて連絡幹線の建設を認可した。現に、県と市の下水道サイドは、問題の都市計画道路がいつできるか不透明なので、周辺地域の下水をこの連絡幹線に暫定的につなぐ計画を進めている。
  •  今の下水道技術は、曲がったり直角になっている道路の地下でも管渠の敷設が可能。実際に、あちこちでそれがやられている。これは下水道建設にかかわっているゼネコンの技術者が自慢していることでもある。


 以上です。
 私たちは今後、この勉強会の成果を今後の意見(提言)書づくりなどに反映させていく予定です。

(2001年6月)








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