環境破壊の張本人たちが

「三番瀬再生」の美名で新たな開発

〜危機に瀕する三番瀬〜

石井伸二


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 (2007年)2月27日の『毎日新聞』(全国版)は、連載「知事。その力」の一つとして、選挙公約を後退させている知事をとりあげました。タイトルは「妥協迫られ 公約後退も」です。


■三番瀬埋め立て計画撤回を掲げて当選したが…

 その中で堂本千葉県知事もとりあげ、こう記しています。
    《堂本暁子・千葉県知事は01年3月、県が進めていた東京湾最奥部の干潟「三番瀬」の埋め立て計画を白紙とすることを公約に掲げて当選した。しかし、「三番瀬」は漁業補償、護岸整備、第2東京湾岸道路建設などさまざまな問題が絡んでいた。ただ、埋め立てなければいいという問題ではなかった。現在のところ公約は守っているものの堂本知事は「知事になって初めて分かったこともあった」と実感を込めて語る。》
 堂本知事についてこれ以上のことは書いていませんが、これは意味深長です。
 というのは、こういうことです。
 堂本知事は「三番瀬埋め立て計画の白紙撤回」を選挙公約に掲げて当選したため、いったんはそれを実行しました。しかし、三番瀬をいまのまま保存すれば、第二湾岸道路(第二東京湾岸道路)はつくることができません。この道路用地は三番瀬で中ぶらりんとなっているからです。
 堂本知事は、「(第二湾岸道路は)どうしてもつくる必要がある」と言いつづけています。
 そのために、三番瀬海域の一部(猫実川河口域)を埋め立て、そこに第二湾岸道路を通そうとしていると言われています。
 その手法は、以下のとおりです。


■「三番瀬再生」の虚像と実像

(1)「干潟再生」の美名で新たな埋め立て
 「埋め立て」という言葉を使うと自然保護団体や県民などが反発や批判がでるので、「三番瀬再生」あるいは「里海の再生」という美名を使って、人工海浜(人工干潟)をつくろうとしています。
 それも、「人工海浜」とは言わずに、「干潟的環境の形成」とか「干潟の再生」という言葉を使っています。(3月5日発行の県広報紙『ちば県民だより』を参照)

(2)「防災」の名目で護岸改修工事からはじめる
 「防災」「三番瀬再生」を名目にし、三番瀬海域の一部をつぶして石積み傾斜護岸の工事を強引に進めています。
 これは、とりあえず一部で石積み傾斜護岸をつくり、「これでは市民が海に触れあうことができない」「三番瀬の自然再生にならない」などの声をどんどん出させて、護岸改修を猫実川河口域全体の人工干潟造成に発展させていこうとするものです。しかし、堂本知事らはそういう目的を隠しつづけています。

(3)真のネライは隠しつづける(=二湾隠し)
 「三番瀬再生」の真のネライは第二湾岸道路(二湾)を三番瀬に通すことです。しかし堂本知事は、そのことを隠しつづけています。市民参加の三番瀬円卓会議や三番瀬再生会議でも、第二湾岸道路はいっさい議論させないという方針を貫いています。
 その一方で、県は、第二湾岸道路の具体化や予算措置を国(国交省)に要望しつづけています。

(4)「地域住民、漁業者、NPOなどと一緒になって議論を重ねた」はウソ
 広報紙(『ちば県民だより』3月号)では、「地域住民、漁業者、NPOなどの皆さんと一緒になって議論を重ねてきた結果、自然環境の保全と再生を目指す『千葉県三番瀬再生計画』をつくることができました」と宣伝しています。
 しかし、これはウソです。「三番瀬再生会議」では、三番瀬の自然環境のことはほとんど議論されていません。

 再生会議は、22人の委員のうち大多数が“埋め立て推進派”あるいは“埋め立て容認派”です。形のうえでは、環境保護団体の委員も3人加わっていることになっていますが、じっさいに三番瀬の保護運動(埋め立てなどから三番瀬を守る運動)をしているのは1人だけ(「千葉の干潟を守る会」の竹川未喜男氏)だけです。
 これが、千葉県が推進中の「三番瀬再生」の実態です。

◇         ◇

 千葉県や市川市などの行政は、これまで東京湾岸の干潟を片っ端から埋め立ててきました。
 このように環境を破壊しまくったきた張本人たちが、こんどは「自然再生」という格好いい言葉を掲げて、わずかに残った干潟・浅瀬をつぶそうとしているのです。
 これは、ある意味では、自分で欠陥住宅を造っておいて、「ここが悪いから直しましょう」と持ちかけ、法外なカネをふんだくるリフォーム詐欺と同じではないでしょうか。
 だまされてはいけません。

(2007年3月) 





《参考:『毎日新聞』2007年2月27日》

  知事。その力(5)

   妥協迫られ 公約後退も

 昨年7月の滋賀県知事選で、ダムや東海道新幹線の新駅建設計画など大型事業を「もったいない」と批判し、当選した嘉田由紀子知事。「生命線」ともいえるその公約を、就任わずか7カ月で大きく後退させている。

 「流域データの数値を持っていなかった。批判は甘んじて受けます」。
 今月19日、嘉田知事は記者会見で釈明に追われた。就任当初から「凍結・見直し」を訴えてきた県内の治水5ダムのうち4ダムについて、この日の議会で一転、必要性を認めたのだ。

 嘉田知事は学者時代から「ダムだけに頼らない治水」を主張していた。知事就任後も県庁の組織を改編し、遊水地設置住民の防災意識啓発などのソフト画を組み合わせた治水対策を検討、公約実現を目指した。だが、従来のダム計画と代替案のデータを比較したところ、治水能力やコスト面でダムの方が優れているという結論が出た。

 一方、同県粟東市に計画される新幹線新駅は、紆余(うよ)曲折を経ながらも、凍結が実現しつつある。
 だが、新駅予定地周辺の土地区画整理事業地の利用法や損害賠償への対応など県民にとり重要な「凍結後」の問題は、棚上げされたまま。リーダーシップが発揮されているとは言い難い状況だ。

 公約を「ワンフレーズ」で分かりやすく訴えるのは有権者の心をつかむ有力な手法だ。しかし、実現は簡単ではない。

 堂本暁子・千葉県知事は01年3月、県が進めていた東京湾最奥部の干潟「三番瀬」の埋め立て計画を白紙とすることを公約に掲げて当選した。
 しかし、「三番瀬」は漁業補償、護岸整備、第2東京湾岸道路建設などさまざまな問題が絡んでいた。ただ、埋め立てなければいいという問題ではなかった。現在のところ公約は守っているものの堂本知事は「知事になって初めて分かったこともあった」と実感を込めて語る。

  =以下省略=





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