生き物いっぱいの三番瀬に開発の圧力


三番瀬を守る署名ネットワーク 代表 田久保晴孝


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■三番瀬は生き物がいっぱい!

 広大に干出した干潟に点々々とケーキのモンブランに似たタマシキゴカイの糞壊(ふんかい)と卵塊が続く。子どもたちが、網を持って汀線上に群れるボラの稚魚を追いかける。ボラの稚魚を採るために、ダイビングをくりかえすコアジサシの群。青い空に白い鳥、広大な干潟。
 生き物がいっぱいの干潟を歩きながら観察していると、楽しく、気分も晴れやかになる。
 2、3年前に大量に採れていたアサリは、今年はあまり観察されない。しかし、船橋側(ふなばし三番瀬海浜公園前)ではタマシキゴカイの糞が非常に多くみられる。
 干潟の砂をビンに入れて持ってきて、よく観察すると、フサゴカイの仲間が触手をのばして餌(砂つぶ)をとるところが観察できた。岸近くでもアシナガゴカイの巣穴やコメツキガニの巣穴がたくさんあった。(6月24日の三番瀬探検隊)

 4月29日の猫実川河口域(市川側)の調査。海面から姿を現したカキ礁にチュウシャクシギの子群がやってきて採餌を始めていた。カキ礁のカキが盛んに潮をふく(カキは、カラをとじて休息するときに潮を出す)。カキ礁には、カニを含めてたくさんの動物が生息している。
 カキ礁のまわりには、カニなどの餌を求めてか、1メートルをこすアカエイが十数匹も集まってきた。
 昼ごろ、約30ヘクタールも広大に干出した干潟を歩きながら観察した。干潟一面にアナジャコの巣穴(指を入れると穴の表面がかたい)があり、脱皮ガラや脱皮したての個体もみかけた。カモ(セグロカモメ、ユリカモメ)の群が休息していた。セグロカモメがアナジャコをついばむ姿もみられた。コアジサシも多数やってきて、汀線近くで、さかんにダイビングをしていた。
 エドハゼ、ツバサゴカイ、ギンポやイシガレイの稚魚などを観察した。

 東京湾には、大小河川や下水道から多量の栄養、塩類(NやP)が流れ込んでいる。そのため、いつでも富栄養の状態にあり、晴天が数日続くと、植物プランクトンなどが多量に増殖して赤潮(褐色の海水)状態になる。
 このケイソウなどの植物プランクトンを餌とする貝やゴカイが多量に生息できる環境(干潟・浅瀬)が三番瀬にある。そして、貝やゴカイを餌とするボラなどの魚や、ハマシギ、スズガモなどの水鳥、魚を餌とするカワウなどの水鳥も多数生息している生物豊かな海域が三番瀬である。


■三番瀬に種々の開発の圧力

 ここにきて、開発を進めようとする圧力が強まっている。
 5月25日に開かれた第12回「三番瀬再生会議」では、事業計画素案の検討が行われた。当日、県が素案について実施したパプリックコメント(意見公募)結果も配布された。
 それによると、個人・団体で出された意見が91件だった。これは、前回のパプリックコメントの3倍以上である。意見で多かったのは、三番瀬に「お台場」(東京都)や「幕張の浜」(千葉市)のような、人工海浜や人工干潟をつくってほしいという意見で、これが16件もあった。
 この意見は、多様で多量の生き物が生息する三番瀬の特性を考えていないと思われる。とくに猫実川河口域はカキ礁があり、アナジャコが多数生息する、生き物豊かな泥干潟で、人工干潟にせず保全すべき場所と考える。これからもっと広く市民に三番瀬の現状(生物多様性と開発圧力)と保全を訴えていく必要性を感じている。


   *お台場………元材木場に外国から白い砂を輸入してつくられた。
   *幕張の浜……埋立地の先に砂を入れてつくられた。砂の流失で現在は
          かなりの部分が立入禁止となっている。


 再生会議のほかにも、一部NPOや一部の海洋学者や行徳漁協が市川市と歩調を合わせ、カキ礁を有害物とみなしたり、猫実川河口域の人工干潟化を進めようとしている。  また、河口域に接する塩浜地区の再開発が“民間丸投げ”で行われようとしていて、これが護岸工事や人工干潟化がつながっている。

 さらに、千葉県議会に三番瀬問題特別委員会が設置された。漁場や転業準備金、ラムサール登録、第二湾岸道路、三番瀬再生計画などについて論議され、今年8月(10回目)には提言をまとめることになっている。
 市川塩浜2丁目地先では、海側に3メートル張り出す形の石積み護岸工事が5月から始まった。とりあえず、2年間で100メートルを2.6億円かけて実施することになっている。この護岸は、人が海水に直接ふれるには危険で、自然にもやさしくないものとなっている。現在のところ、この護岸工事が三番瀬再生の中心的事業となっている。


■ラムサール条約早期登録を求めて

 漁業者の話によれば、漁業者や生態系をおびやかすほどの多数の密漁者が、アサリ、カキ、バカガイ、アカニシなどを大量に採っており、一部には採集、仲買、販売のヤミのグループもあるといわれている。
 密漁は、市民、NPO、漁民、行政などが、協力して取り締まる必要がある。また、ウインドサーフインや釣りなどの海洋レジャーが、水鳥をおびやかさないように、利用の規制も必要であると思う。

 最後に、三番瀬を守る署名ネットワークは、三番瀬を早期にラムサール条約(湿地保全の国際条約)の登録地にするよう署名運動を行っている。ご協力をお願いします。

(2006年7月)














月1回(第1日曜日)の定例三番瀬(船橋側)観察会











タマシキゴカイの卵塊








タマシキゴカイの糞(ふん)。ケーキのモンブランに似ている








アカエイの子ども。しっぽの付け根に長い毒針があり、要注意の魚である。うっかり刺されると激しく痛むので、潮干狩り客などからは怖がられている。








ニンジンイソギンチャク









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