三番瀬護岸改修で県交渉
〜人工干潟、委員構成、湾曲整備案〜
「三番瀬を守る連絡会」(9団体で構成)は(2013年)8月23日、県河川整備課と交渉しました。テーマは、三番瀬の猫実川河口域に面する市川塩浜2、3丁目の護岸改修です。
県が2006年度から進めてきた塩浜2丁目の護岸改修は、全1100mのうち900mが今年度(2013年度)で完了します。残り200mは、今年度中に護岸改修の構造などを検討し、来年度(2014年度)に工事着手です。そして塩浜3丁目護岸は、2丁目護岸の改修が完了したあとに改修工事をはじめたい、とのことです。
そこで連絡会は、3点を質問・要請しました。
◆「懇談会」では三番瀬の人工干潟化は議論しない
ひとつは、改修護岸前面海域の人工干潟化に関することです。2丁目の残り200m区間と3丁目の護岸改修についても、河川整備課は護岸前面海域の人工干潟化を手がけないということの確認です。また、同課が事務局をつとめる「市川海岸塩浜地区護岸整備懇談会」(旧市川海岸塩浜地区護岸整備委員会)では今後も人工干潟化は議論しない、ということです。
同課はこう答えました。
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「そのとおり。河川整備課が担当するのは、海岸保全区域内(幅約30m)の護岸改修だけである。したがって、改修護岸の前面で人工干潟を造成するというのは、本課の所掌ではない。それは環境政策課(三番瀬再生推進室)の所掌になる。市川海岸塩浜地区護岸整備懇談会で塩浜2丁目の残り200m区間と3丁目護岸の改修のあり方を議論するさいも、人工干潟造成は議論しない」
◆環境関係専門家などを懇談会に加えることは拒否
二つ目は、「市川海岸塩浜地区護岸整備懇談会」に環境関係専門家と環境団体代表を加えてほしいという要請です。
懇談会では、護岸改修工事に伴うモニタリング調査結果も県が報告しています。ところが、自然環境や生き物にくわしい専門家や環境団体代表が排除されているため、生態系などに関する意見はでません。そこで、環境関係専門家と環境団体代表を委員に加えることを求めました。
ところが、河川整備課はその要請を受け入れません。理由はこうです。
- 県は、行政改革の一環として委員会の縮小を掲げている。各種の委員会を統廃合し、委員の数や会議の回数を減らすということだ。したがって、懇談会の委員は増やせない。
- 自然環境面については、三番瀬専門家会議でも検討してもらうことになっている。専門家会議には自然環境の専門家も委員に加わっている。また、環境団体や県民などの意見は三番瀬ミーティングで出してもらうことにしている。
しかし、懇談会で塩浜3丁目の護岸改修を議論するさいは、専門家会議の専門家がオブザーバーで出席することや、傍聴者も発言できるようにすることを検討する、と答えました。
◆「湾曲整備案」をあっさり否定
三つ目は、塩浜2丁目の残り200m区間のうち、市川市所有地前面の護岸改修についてです。
三番瀬円卓会議がまとめた報告書『三番瀬再生計画案』(2004年1月22日発行)には「(市川市所有地前面)環境学習エリアのイメージ」が盛り込まれています。市川市所有地(埋立地)の前面護岸の一部を撤去し、自然(湿地)を再生するというものです。護岸を陸側に湾曲させて整備するという案(「湾曲整備案」)」です。
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※イメージ図は、千葉県庁のHP「三番瀬再生計画案」にも載っています。111ページです。
交渉の席上、連絡会はこうただしました。
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「市川市所有地前面の護岸を湾曲させ、湿地を再生するという案(「湾曲整備案」)は三番瀬円卓会議で何回も議論してまとまったものだ。それをあっさり否定するというのはどうなのか」
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「(円卓会議にかかわった)職員に聞いたところ、『三番瀬再生計画案』掲載のイメージ図(湾曲整備案)は議論して載せたものではない、とのことだった」
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〈注〉三番瀬円卓会議がまとめた「三番瀬再生計画案」(2004年1月22日)は、市川市所有地前面での自然再生についてこう記しています。
《後背湿地と砂浜の造成による海岸域の自然の連続性の回復は、三番瀬の自然にとって、生物多様性を高め、安定した生態系をつくるために大きな役割を持つことが期待されます。特にこれにより、汽水性の生物群と仔稚魚などをはじめとする砕波帯の生物群が期待されます。実施場所の候補としては、浦安市日の出地区の一部、市川市所有地の一部、船橋旧航路跡地などが挙げられます。これらのうち、関係者との協議が完了したところから、少しずつ始める必要があります。》(69ページ)
《浦安市日の出の未・低利用地、市川市塩浜2丁目の市川市所有地において用地を確保し、陸地内において後背湿地等を再生する試みを進めるべきです。》(93ページ)
《市川市所有地が三番瀬と接するあたりに、環境学習・研究の場を設け、海と陸との自然的な連続性を確保するための事業を実施すべきです。》(100ページ)
《(市川市所有地前面)に環境学習・研究施設を設け、施設敷地で自然再生を行うべきです。このため、施設敷地前面の現在の護岸を撤去し、防護ラインを施設敷地の背後に回すこと、当面、施設敷地において背後地としての自然再生を行えるよう、伝統工法などを用いて現在の海岸線のラインで最低限満潮時の高さが確保されるように土留めを行うこと、モニタリングをしながら徐々に前面に砂をつけていくことにより将来的に可能な限り海と陸との自然な連続性を回復させることなどを検討すべきです(図2-5-17)》(101ページ)
こんな記述が、議論や合意なしで「三番瀬再生計画案」に掲載されるわけがありません。それらの記述を図であらわしたのが「(市川市所有地前面)環境学習エリアのイメージ」だったのです。
市川市所有地前面の湿地再生イメージ(「湾曲整備案」)
三番瀬護岸改修で県河川整備課と話し合い=2013年8月23日
改修中の市川市塩浜2丁目護岸(900m区間)=2013年7月22日撮影
改修中の市川市塩浜2丁目護岸(900m区間)=2013年8月21日撮影
★関連ページ
- 自然再生案(湾曲整備案)をあっさり否定〜第1回「市川海岸塩浜地区護岸整備懇談会」(2013/8/22)
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