市民参加の流れに逆行

〜第1回「三番瀬専門家会議」〜



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 (2011年)8月4日、市川市内で「三番瀬専門家会議」が開かれました。
 県は「三番瀬再生事業」を進めるにあたり、住民参加組織「三番瀬再生会議」を昨年12月に解散しました。そして、「今後は県が主体的に事業を行う」とし、事業を評価する組織として専門家会議を立ち上げました。この日はその初会合です。
 専門家会議の委員は、海岸工学、都市計画、海岸環境、河川環境、底生生物、水産の専門家6人です。
 議題は、三番瀬自然環境調査、干潟的環境形成試験、市川市塩浜護岸改修工事の3つでした。


◆干潟的環境形成(人工砂浜造成)試験をめぐって

 このうち、干潟的環境(干出域)の形成は「三番瀬再生事業」の柱です。三番瀬で最も生物相が豊かな猫実川河口域を人工干潟(人工砂浜)にするため、その試験をおこなうというものです。

 試験は、市川市塩浜2丁目地先の浅海域で昨年度(2010年度)からおこなわれています。直径6m程度の範囲に27立方メートルの砂を投入し、投入砂の定着(地形変化)や底質変化、生物定着の状況をみています。

 地形変化では、投入後1カ月程度かけて頂点が徐々に低くなり、その後安定したそうです。ところが、今年3月11日の東日本大震災によって、さらに約30cm低くなりました。

 この報告に対し、岡安章夫委員(東京海洋大学教授、海岸工学)が次のような疑問を呈しました。
     「試験の目的は何なのか。投入砂はどんどん流出していき、いずれなくなってしまうと思われる。そもそも、干潟は、波の作用などによって、できるところにできる。干潟を人工的につくるのはむずかしい」
 県はこう答えました。
     「三番瀬の干出域を増やすための試験としてやっている。まずは砂を投入してみて、その砂がどうなるかを調べることにしている」


◆議論がされないまま人工改変事業が進んでいる

 座長を務めた大西隆会長(東京大学大学院教授、都市計画)はこう言いました。
     「試験の目的については、関係者の間で必ずしも意見が一致してない。再生会議でも、三番瀬再生について意見が分かれていた。現存の干潟や浅瀬には手をつけるべきではない、という意見と、砂を投入して干出域を増やすべき、という意見だ。これについては議論がつまっていなかった」
 そのとおりです。三番瀬再生会議では、人工改変の必要性について十分な議論がされませんでした。ところが県は、そんな基本的な問題を棚上げしたまま、「干潟的環境の形成」というマヤカシ言葉を用いて土木事業をどんどん進めています。


◆昔のやり方に後戻り

 この日の会議について、傍聴者からこんな感想がだされました。
     「専門家会議は、環境保護団体や住民の代表、公募委員などが参加していた三番瀬再生会議とはまったく雰囲気が違う。県の報告にたいして鋭い意見はほとんどだされなかった」

     「干潟的環境形成試験に対する岡安委員の疑問には同感だ。自然の脅威に人知は及ばない、あるいは、自然は人間の思いどおりにならないということは、東日本大震災がはっきり示している。泥質性生物の生息場や幼稚魚のエサ場になっている大事な海域(猫実川河口域)を土砂で埋めて人工砂浜にしようとするのはバカげている。三番瀬の環境改善という点では、ほかに優先してやるべきことがある。三番瀬の生物や漁業に大きな影響を与えている青潮や江戸川放水路からの出水についての対策、さらには干潟の維持と大きくかかわる水循環の回復だ。専門家会議は、こういう根本的問題も議論してほしい」

     「専門家会議では傍聴者が発言できなくなった。県民の意見は11月13日開催の三番瀬ミーティングで聞くとしている。しかし、ミーティングは年に1回しか開かれない。これは埋め立てをおしすすめていた頃のやり方に後戻りするもので、市民参加の流れに逆行だ」


◆海底調査(深浅測量)を2012年度に予定

 県は、三番瀬の深浅(しんせん)図を来年度(2012年度)作成する、と報告しました。東日本大震災によって三番瀬の地形がどう変化したかを測定(深浅測量)し、その測定結果をもとに作るものです。深浅図が作成されれば、浸食、沈下、堆積の地形変化がわかります。







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