猫実川河口域の現状認識が最大の焦点

〜第5回「三番瀬再生会議」の報告〜



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 「三番瀬再生会議」の第5回会合が(2005年)5月18日、浦安市内でひらかれました。
 議題は、前回の会議で県が提示した「三番瀬再生計画(基本計画)」の素案です。委員から出された修正意見について議論しました。
 素案については、一般市民も6人の方が意見をだしました。しかし、これらの意見は、参加者に配布されたものの、今回の議論でまったくとりあげられませんでした。


●「生き物の多い豊かな海」vs「ヘドロの海」
  〜猫実川河口域の見方〜

 議論の焦点になったのは、予想どおり、猫実川河口域の扱いです。つまり、ここを「生き物の多い海」としてみるのか、それとも「ヘドロの海」や「死んだ海」とみるかです。これによって、この海域を今のまま残すのか、それとも、土砂を入れて人工干潟にするのかという結論がでてきます。


●「猫実川河口域の問題がいちばんのネック」

 会議では次のようなやりとりがされました。

◇木村幸雄委員(習志野市連合町会連絡協議会副会長)
     「人工海浜もいいのではないか、とか、人工海浜も立派な自然の再生ではないか、という考えがあって、市川市から人工海浜をつくってほしいという要望が県などにだされている。そういう要望を次回の会議でだしてほしい」

◇川口勲委員(公募、市川市在住)
     「猫実川河口域の問題がいちばんのネックである。それも、漁業者との間でだ。この海域は、環境保護団体からみれば、汚れていても生物がいるから保存すべきとなる。しかし、それでは漁業がなりたたないので、漁業者は納得しない。だから、結論がでない」


●「海にいろいろな生き物がいないと、漁業はなりたたない」

◇大野一敏委員(NPO法人ベイプラン・アソシエイツ理事長)
     「私の記憶では、昭和20年代には、海老川(船橋市内を流れる川)の河口にアナジャコがたくさんいた。それは、そこが泥に近い場所だったからだ」
     「生物多様性は非常に重要である。東京湾は、昔に比べ、魚の種類が激減している。なぜ猫実川河口域にアナジャコがいるのか、また、なぜ生き物がたくさんいるのか、さらには、アナジャコの生息はどういう意味をもつか、などをもっと調べるべきだ」
     「私も漁師だが、海にいろいろな生き物がいないと、漁業はなりたたない。そういう点では、漁業者も考えるべきだ」
     「私は平成2年まで船橋市漁協の組合長をしていた。組合長をやめた直後に、3つの漁協(船橋市漁業、市川行徳、南行徳漁協)が埋め立て促進の陳情を県に提出した。先日の三番瀬フェスタでは、サンフランシスコ湾の計画を学んだが、そこでは、海の面積はこれ以上減らしてはダメということになっている」


●「カキ礁は1年で終わりになるかもしれない」

◇田草川信慈氏(市川市建設局街づくり部長、オブザーバー)
     「私たちは、泥干潟が大事でないと言っているのではない。猫実川河口域に泥干潟があるというのなら、どこにあるかをはっきりさせるべきだ。県がおこなった補足調査では、猫実川河口域には泥干潟はないということになっている。泥干潟はいったいどこにあるのか。科学的なデータにもとづいて議論してほしい」

◇歌代素克委員(市川市南行徳地区自治会連合会長)
     「泥干潟については、まだ検証段階である。“カキ礁はすばらしい”と言われているが、それは1年で終わりになるかもしれない」


●「猫実川河口域はヘドロの海である」

◇川口勲委員
     「僕が育った海からみれば、猫実川河口域はヘドロの海である。こんなところは海とはいえない」  「何年までさかのぼって再生するのかをはっきりさせるべきだ」

◇田草川信慈氏
     「年にわずかしか干出しない場所を干潟とよんでいいのか」


●「生物多様性や漁場生産力の回復が重要」

◇大野一敏委員
     「干潟があるかどうかということよりも、生物多様性や漁場生産力の回復が重要だ。環境保護団体は、猫実川河口域にアナジャコなどがたくさんいて、カキ礁もあるということを言っている」
    「川口委員は、かつては泥干潟はなかったと言っている。しかし、市川港ができる前は、江戸川放水路の河口は泥干潟だった」

◇川口勲委員
     「僕らは、沖に何キロも干出するようなものを干潟とよんでいる。みなさんが言っている『泥干潟』は造語でしかない」
     「再生するという場合、いつの時点までもどすことを目標にするのかをはっきりさせるべきだ。現状でよいというのなら、汚れた海でも十分ということになる。そうではなく、僕は、昭和30年代ぐらいの環境にもどすべきだと考える」

◇吉田正人委員(江戸川大学助教授)
     「再生の目標だが、昔の姿にもどすというのなら、埋め立て地をすべて海にもどすしかなく。しかし、それは不可能だ。したがって、いまの機能をできるだけよくしていくべきと考える」


●「基本計画ではあいまいさを残す」

 こういう議論のなかで、大西隆会長(東京大学教授)がこんな発言をしました。
     「だされた意見をみると、猫実川河口域の問題がいちばん大きく、かなり対立している」
     「この問題は、今後、事業計画や実施計画の段階で煮詰めるということにし、基本計画ではあいまいさを残すということにせざるをえない」


●「議論を聞いて、心配になってきた」

 最後に、傍聴者に意見を求められ、大浜清さん(千葉の干潟を守る会代表)が次のように発言しました。
     「きょうの議論を聞いて、心配になってきた。再生計画や再生会議の目的は、干出する干潟だから保全するというのでないはずだ。そうではなく、三番瀬の環境を保全し再生する。つまり、三番瀬の環境をよくするということが目的であるはずだ」
     「藤前干潟の埋め立てが問題になったとき、環境庁(現環境省)は、浅海域の重要性を述べている。干潟の周りに存在する浅海域は、生き物の量が干潟に匹敵し、干潟の生態系に重要な役割を果たしている」
     「また、諫早湾の泥干潟は価値がなかったのかどうかをみれば、泥干潟の重要性がわかるはずだ」
     「三番瀬の一部にそういう部分が残っているため、三番瀬の環境が保たれているということをきちんとみるべきだ」
 以上です。



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