〜「塩浜地区まちづくり基本計画案」〜
市川市が「三番瀬・猫実川河口域の人工海浜化構想」を広報紙(「広報いちかわ【フォーラム・アイ】」6月25日号)で正式発表しました。構想の名称は「塩浜地区まちづくり基本計画案」です。
この基本計画案は、市の別のホームページにも掲載されています。
●「三番瀬に多くの人が親しむことのできるまち」をめざす
広報紙にはこんなことが書かれています。
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「行徳近郊緑地と三番瀬の自然環境に多くの人が親しむことのできるまちを目指して『塩浜地区まちづくり基本計画』づくりが進んでいます。この計画は、市と市民との協働による、より良いまちづくりを進めるための方針をまとめるものであると同時に、今後市として、県に要請する基本的な方針を示すものとなります。今回のフォーラムアイではこの計画案の概要を紹介します。皆さんのご意見をお寄せください」
●「二者択一」を市民にせまる
〜護岸の高さを9.5mにするか、それとも海域を人工砂浜にするか〜
人工海浜化を求める市の提案図では、右側に「三番瀬再生計画案に基づく海岸保全施設のイメージ」を描いています。コンクリート胸壁の高さは「A.P 9.5m」です。こんな高さでは、刑務所の塀と おなじで、海と陸が寸断されてしまいます。
そこで、「対案」として、左側に市の提案を図に示しています。護岸の高さは現在とほぼ同じ(A.P 約5m)とし、前面海域に広大な人工砂浜をつくるとしています。
ようするに、護岸(胸壁)の高さを「A.P 9.5m」とするか、それとも、護岸の高さはいまのままにして前面海域(猫実川河口域)を人工砂浜にするかという「二者択一」を市川市民にせまっているのです。
市は、こんなことを書いています。
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「護岸の高さや形状は、三番瀬とふれあえる、海と一体となったまちづくりにとって重要です。安全性を確保しながらも、可能な限り護岸の高さを低く抑えた構造にすることを(県に)要望します」
「護岸を低く抑えるためには、緩やかな傾斜をつけたり、平らな場所を最大限確保する必要があります。海側と陸側の両方で、護岸の価値を高めるための協力方法を検討していくことを(県に)要望します」
「三番瀬の干潟ができあがった歴史性、環境の連続的変化、生物多様性などを守りながら、ゆるやかな傾斜の干出域・人工干潟の海岸形状の再生と一体となった護岸整備を要望します」
●「生き物がいれば、環境がいいというのは違う」
人工海浜化を求めるこんな声も載せてあります。
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「子どもたちが歩いて三番瀬に触れ合えるような海辺になってほしいと思います。自然に触れ合えるリアルな経験こそが、ひとづくりの原点だと考えるからです」(市川三番瀬クリーンアップ大作戦実行委員会事務局長)
「隣の浦安の埋め立てで、潮の流れが正常ではなくなってしまったので、三番瀬には今の海でも生きられる生物しかいません。(中略)生き物がいれば、環境がいいというのは違う。三番瀬を、本来の海に戻したいと思うのが私たち漁民です」(南行徳漁協専務理事)
●市川市の構想は、時代の流れに逆行
猫実川河口域は、多種多様な生き物が生息する重要な浅瀬(浅海域)です。このことは、大潮の干潮時に干出する泥干潟に踏み入れてみれば、一目瞭然です。
市民調査で確認された生物の種類は100種類を超えています。千葉県のレッドデータに記載された生物だけでも、ウネナシトマヤガイ、ミズコマツボ、カワグチツボ、ヤマトオサガニ、マメコブシガニの5種類が確認されています。
この海域では、ドロクダムシ、ホトトギスガイ、ニホンドロソコエビなど、三番瀬の他の環境条件には存在しない底生生物が多く発見されています。アナジャコもたくさんいます。約5000平方メートルにおよぶカキ礁もあります。生物多様性の観点からはここを保存することは重要です。
また、この海域では浄化作用も活発に行われているなど、三番瀬全体の環境の中で重要な役割を果たしています。まさに、猫実川河口域は、東京湾漁業にとっても、大切な命のゆりかごとなっているのです。
そんな大切な海域に土砂を入れて人工海浜をつくろうというのですから、市川市の構想は、時代の流れに逆行しています。
(2005年6月)
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