〜加藤倫教さんが市川市「基本計画案」に意見書〜
市川市の「塩浜地区まちづくり基本計画(案)」に対し、カキ礁研究会の加藤倫教さんが以下の意見書を提出しました。
市は、三番瀬・猫実川河口域の人工海浜化を提案しています。
意見書 |
市川市役所街づくり部行徳臨海対策課 御中
加藤倫教
塩浜地区まちづくり基本計画(案)についての意見
私は市川市の市民ではありません。したがって、まちづくりの計画そのものには意見を申し上げるつもりは全くありません。
しかし、三番瀬の地域に係る計画については深い関心を抱いております。今回の「塩浜地区まちづくり基本計画(案)」の中には、三番瀬の状況に係る計画部分があり、その部分について意見を申し上げたいと思います。
(1) 護岸の改修問題について
計画(案)では、護岸の高さはできるだけ低く抑えるとしています。
このことは、その理由を含めて賛成です。しかし、説明文の冒頭「安全性を確保しつつ」とある部分が不可解です。安全性が確保される、そのことは全く誰が考えても当たり前のように思われますが、では根本に立ち返って考えてみるべきではありませんか。
なぜ安全性の確保が問題になるのか。それは危険なところに住んだり、本来危険なところに工場などを作って日常的に人の利便にために、そういう危険な場所に立ち入っているからです。
つまり、危険な場所に住んだり、そういう所で仕事をしたりしなければ、日常的に安全性を確保する必要はないのです。
護岸を低く抑えるためにも、自然の脅威との緩衝帯を設けるべきです。昔の人はみなそうしていました。自然の危険が及ぶところには、そもそも住居や工場などを作るべきではないのです。自然の摂理に逆らおうとするから、無理やり「安全性の確保」を計らねばならなくなるのです。
(2) 三番瀬の原風景の再生について
三番瀬の原風景の再生という基本理念には大いに賛成いたします。
しかし、「三番瀬の干潟形成過程の歴史性、環境の連続的変化、生物多様性などを考慮」すると、どうして「緩やかな傾斜の干出域・人工干潟の海岸形状の再生と一体となった護岸整備」という方針がでてくるのでしょうか。不思議でなりません。
「原風景の再生」というからには、埋立ててしまった海を元に戻すというのが、素直に「再生」という言葉にふさわしい措置です。
ましてや、「再生」という美名のもとに更に海を狭めるような「人工干潟」の造成や現在ある泥質の立派な干潟を砂を入れてかさ上げしようといったことは、「再生」とは正反対の新たな自然破壊 というほかありません。
塩浜地区の地先に広がる泥質干潟には100種類をこえる多様な生物が生息しており、全国でも数少ないカキ礁が存在しています。
塩浜のまちづくり計画では防災という観点も取り入れられておりますが、昨年のスマトラ沖地震ではサンゴ礁に囲まれた島々が被害が少なかったことが報道され、サンゴ礁の波消し効果について防災上からも今後研究が必要であることが明らかとなりました。
猫実川河口のカキ礁についてもこうしたサンゴ礁のような波消し効果があることが考えられ、防災上からもカキ礁の存在は重要であるといいうると思います。
真に「原風景の再生」を目指すとすれば、行徳近郊緑地との連続性を計るべきではないでしょうか。
すなわち、新浜と塩浜間の地域を一体的に自然再生の対象として、国道や鉄道等以外の構造物を他地区に移転させ、もともとのアシ原や干潟を再生させるプランとしてはどうでしょうか。
そうすれば、塩害といった問題も解決できるのではないかと思います。海に直接面した地域において自然条件を無視した不適切な都市計画を実施するから塩害なども生じるのではありませんか。
もっと自然を大切にして、自然の摂理にしたがった暮らしを人間はすべきです。
やがて、石油も枯渇します。50年先、100年先を考えた自然再生プランを構築してくださることを切に願って止みません。
海岸線にそった地域にはいたるところに貝塚があります。かつて、日本人のいのちを支えてきたのはこうした干潟・浅海域のいきものと田畑からの生産物でした。
再生不能の各種資源が枯渇したあと、日本人のいのちの支えとなるものは、こうした干潟・浅海域のいきものたちとなる可能性は、石油資源の供給不安が急速に高まり、石油依存社会の終焉が見えてきた今日、ますます明白な事実になってきていると確信いたします。
もうこれ以上人間の浅知恵で海を壊すことはやめにしてください。
-
【付言】
人工干潟がいまある干潟以上に価値があるなどととんでもないことを主張している学者がいますが、どうぞ国際的な学会で発表してみてください。
以上
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