三番瀬再生計画(基本計画)に

 猫実川河口域の保全は盛り込まず

   〜第6回「三番瀬再生会議」の報告〜



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 三番瀬再生事業の内容を検討する知事の諮問機関「三番瀬再生会議」(会長・大西隆東大教授)の第6回会合が(2005年)6月16日の夜、浦安市内で開かれました。
 議題は、前回(第5回)にひきつづき、県が諮問した「三番瀬再生計画(基本計画)案」です。吉田正人委員(再生会議副会長、江戸川大学助教授)が中心になってまとめた答申原案をめぐって議論しました。


●県作成の基本計画素案と大枠は同じ

 答申原案は、県が作成した素案を一部修正するものの、大枠は素案どおりです。新聞も、「答申原案は、第4回会議までの出席委員らの意見を取り入れたが、基本計画素案と大枠は同じ」(『毎日新聞』6月17日)と報じています。

 最大の焦点となっている猫実川河口域(市川側海域の一部)の保全問題は、「(意見が対立しているので)基本計画にはあいまいさを残して書くこととする」という大西会長の意向を受け、素案のままとすることになりました。
 ようするに、この海域を保全するということは明記しないということであり、潰(つぶ)す(つまり、土砂を入れて人工海浜にするということ)も有り得るということです。


●「(猫実川河口域を)どう評価し、どうするかは、意見が分かれている」

 会議ではこんなやりとりがされました。

◇大西隆会長(東京大学教授、都市計画)
     「竹川委員から、基本計画に『猫実川河口域は泥干潟として貴重な海域である』を明記すべきであるという意見が出されている。猫実川河口域については、いろいろな事実の報告をしていただき、どういう状態になっているかについては認識が深まっている。しかし、この海域をどう評価し、どうするかについては、意見がいろいろ分かれていて、そこまでは合意できていない。したがって、竹川委員が提案されるようには書かないほうがよいと思う」

◇歌代素克委員(市川市南行徳地区自治会連合会長)
     「大西会長の言われるとおりだ。この海域については委員の中にも違った意見の方がおられるので、そのようには書かないほうがよい」

◇田草川信慈氏(市川市建設局街づくり部長、オブザーバー)
     「あたかも猫実川河口域のすべてが泥干潟のような印象を受ける。しかし、県の補足調査では、この海域は干潟はないとされている。本当に泥干潟があるかどうかについて、科学的な根拠を示すべきだ。私たちも、そこに干潟をつくってほしいと言っているので、本当に干潟であればそれでよい。これについて、清野委員の見解をぜひお聞きしたい」

◇清野聡子委員(東京大学大学院助手、底生生物)
     「次回の会議で科学的な資料を提示したい」


●「あいまいさを残すことに賛成」

◇工藤盛徳委員(東海大学名誉教授、漁業)
     「先日の三番瀬漁場再生検討委員会で猫実川河口域の市民調査結果を10分間報告してもらった。そのあと、委員の中でディスカッションし、委員から『たしかに干出する場所もあるが、そこは猫実川河口域ではない。猫実川の河口から非常に離れているので猫実川河口域と言ってはいけない。むしろ浦安地区と言うべきだ』などの意見がだされた。このようにいろいろやっかいな問題がある」

◇佐野郷美委員(市川緑の市民フォーラム事務局長)
     「その報告をしたのは私である。干出する場所は、たしかに猫実川の河口から比較的近い場所だ。干出するときは、猫実川河口から20〜30メートルのところまで干出する。もちろん、この場所は浦安の護岸からも近い」
     「私たちは、干出する場所は市川の海域ということを言っているのではない。あの場所はたしかに泥干潟として干出するということを言いたかった」
     「私も前回の会議で、猫実川河口域は貴重な泥干潟ということを明記すべきと指摘した。しかしその後、大西会長が、『基本計画ではあいまいさを残す』と言われたので、それを受け入れたい。というのは、基本計画は大きな方向性を示すものであって、細部をつめるのは事業計画や実施計画であると思うからだ。猫実川河口域は貴重な泥干潟ということを明記しなくても、そのことはみなさんの間にかなり浸透しつつあると思っている」

◇竹川未喜男委員(千葉の干潟を守る会)
     「私はそういう処理の仕方に不満だ。田草川さんの意見についてだが、県の補足調査では、猫実川河口域の調査は十分にやっていない。その後、円卓会議の開催中に行われた県の調査では、19ヘクタールの区域が干出するとされている。この調査結果は私の調査とほぼ一致している。この海域は重要な場所であり、三番瀬再生の要(かなめ)の場所になると思う」

◇大西隆会長(東京大学教授、都市計画)
     「答申原案には、干潟の大事さは書いてある。ただし、どこに干潟があるかは書いていない。このように集合的な表現にしたい」

◇吉田正人委員(江戸川大学助教授、保全生態学・環境教育)
     「答申原案では『干潟的環境』という表現を用いている。なぜそのようにしたかというと、最大干潮時でないと干出しないようなところも大事な場所であり、保全していこうということになっているからだ。答申原案にも、『現在残る干潟的環境を保全し、さらに多様な環境の復元を目指す』と書いてある」

◇大西隆会長(東京大学教授、都市計画)
     「原案のとおりにしたい」


●猫実川河口域保全の不明記に反対意見を述べたのは竹川委員だけ

 以上です。
 結局、猫実川河口域の保全を不明記とする扱いに反対意見を述べたのは竹川未喜男委員(千葉の干潟を守る会)だけでした。
 竹川委員は、猫実川河口域を保全することの重要性を述べ、「あいまいさを残す」ことについて「不満である」と発言しました。しかし、他の委員はすべて、答申原案に賛成です。
 こうして、県が提示した素案は、たいした修正なしに了承されました。


●円卓会議の議論はいったい何だったのか

 猫実川河口域については、三番瀬円卓会議で2年間をかけて議論され、その結果、「この区域は貴重な泥干潟を保全するゾーン」とすることが再生計画案に盛り込まれました。
 それなのに、再生会議(円卓会議の後継組織)では、それを「ご破算」あるいは「反古(ほご)」です。これでは、2年間と3億円をかけて開かれた円卓会議はいったい何だったのか、と言いたくなります。

 さらに不可解なのは、「たしかに干出する場所があるが、そこは猫実川河口から非常に離れているので猫実川河口域と言ってはいけない。むしろ浦安地区と言うべきだ」などという意見はいったいなんでしょうか。
 この海域は、大潮の干潮時には泥干潟が広範囲で現れます(これは護岸からもはっきりみえます)。そこでは100種類以上の生き物が確認されています。数多くのアナジャコも生息しています。さらには、約5000ヘクタールの貴重なカキ礁も存在します。──そんな大切な場所だから、私たちは保存すべきと言っているのです。
 その場所を何と呼ぶかは重要なことではありません。こんなことを問題にするのですから、呆れてしまいます。いいがかりとしか言いようがありません。



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