自然再生案(湾曲整備案)をあっさり否定
〜第1回「市川海岸塩浜地区護岸整備懇談会」〜
「市川海岸塩浜地区護岸整備懇談会」の第1回会合が(2013年)8月22日、千葉県国際総合水泳場(習志野市)の会議室で開かれました。
この懇談会は、三番瀬市川側に面する市川市塩浜1〜3丁目の護岸改修を審議するものです。
「委員会」を「懇談会」に名称変更
昨年度までの「市川海岸塩浜地区護岸整備委員会」が「市川海岸塩浜地区護岸整備懇談会」に名称変更です。委員構成はそっくり同じです。環境関係専門家や環境団体代表は委員から排除されています。一方で、埋め立て推進派を何人も委員に加えています。
「湾曲案」を否定し、「直線案」を採用
この日の議題は、塩浜2丁目の未改修200m区間の整備と1丁目の親水テラスの休憩施設です。案の定、自然環境配慮の視点に立った意見はひとつも出ませんでした。
また、塩浜2丁目の残り200m区間のうち、市川市所有地前面は「湾曲整備案」(自然再生案)をあっさり否定です。
「湾曲整備案」というのは、三番瀬円卓会議の報告書『三番瀬再生計画案』(2004年1月22日発行)に盛り込まれている「(市川市所有地前面)環境学習エリアのイメージ」です。市川市所有地(埋立地)の前面護岸の一部を撤去し、自然(湿地)を再生するというものです。護岸を陸側に湾曲させて整備するという案(「湾曲整備案」)」です。
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※イメージ図は、千葉県庁のHP「三番瀬再生計画案」にも載っています。111ページです。
「湾曲整備案」は、円卓会議で何回も議論したうえでまとめられました〈注〉。ところが、河川整備課は「湾曲整備案」ではなく「直線整備案」を提案しました。「湾曲整備案」は事業費や維持管理、工期、周辺環境への影響などの面で問題がある、としたのです。
それに異議を唱える委員は一人もいませんでした。歌代素克委員(市川市南行徳地区自治会連合会・相談役)や佐々木洋晁委員(市川市塩浜協議会まちづくり委員会・事務局長)などは「湾曲整備案」を否定し、「直線整備案」を全面的に支持です。
こんなことを述べました。
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「湾曲整備案は円卓会議で決まったものではない。三番瀬再生計画案に載せてあるのはただのイメージ図だ」
「地権者の市川市は直線整備案を求めている」
懇談会は傍聴者の発言を禁じています。そこで、「三番瀬を守る連絡会」は翌日(8月23日)、県河川整備課と交渉し、この問題もとりあげました。
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〈注〉三番瀬円卓会議がまとめた「三番瀬再生計画案」(2004年1月22日)は、市川市所有地前面での自然再生についてこう記しています。
《後背湿地と砂浜の造成による海岸域の自然の連続性の回復は、三番瀬の自然にとって、生物多様性を高め、安定した生態系をつくるために大きな役割を持つことが期待されます。特にこれにより、汽水性の生物群と仔稚魚などをはじめとする砕波帯の生物群が期待されます。実施場所の候補としては、浦安市日の出地区の一部、市川市所有地の一部、船橋旧航路跡地などが挙げられます。これらのうち、関係者との協議が完了したところから、少しずつ始める必要があります。》(69ページ)
《浦安市日の出の未・低利用地、市川市塩浜2丁目の市川市所有地において用地を確保し、陸地内において後背湿地等を再生する試みを進めるべきです。》(93ページ)
《市川市所有地が三番瀬と接するあたりに、環境学習・研究の場を設け、海と陸との自然的な連続性を確保するための事業を実施すべきです。》(100ページ)
《(市川市所有地前面)に環境学習・研究施設を設け、施設敷地で自然再生を行うべきです。このため、施設敷地前面の現在の護岸を撤去し、防護ラインを施設敷地の背後に回すこと、当面、施設敷地において背後地としての自然再生を行えるよう、伝統工法などを用いて現在の海岸線のラインで最低限満潮時の高さが確保されるように土留めを行うこと、モニタリングをしながら徐々に前面に砂をつけていくことにより将来的に可能な限り海と陸との自然な連続性を回復させることなどを検討すべきです(図2-5-17)》(101ページ)
こんな記述が、議論や合意なしで「三番瀬再生計画案」に掲載されるわけがありません。それらの記述を図であらわしたのが「(市川市所有地前面)環境学習エリアのイメージ」だったのです。
市川市所有地前面の湿地再生イメージ(「湾曲整備案」)
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