三番瀬再生会議の専門家委員は変だ!

〜環境問題をいっさい議論しない〜

高橋 徹


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 「三番瀬再生会議」(三番瀬円卓会議の後継組織。2004年12月発足)はヒドい状況になっています。「県民参加」をうたい文句にしているものの、運営や議論は円卓会議よりもかなりお粗末です。


■生物調査結果が発表されていないのに事業計画案を承認

 市川塩浜護岸改修事業にあわせて生物調査が実施されたのですが、その結果がいまだに公表されていません。それなのに、再生会議は、県が作成した護岸改修の事業計画案と実施計画案をほぼ原案どおりに認めてしまいました。
 海をつぶしての石積み護岸建設ですから、たくさんの生き物が死滅します。護岸建設予定地に生息している絶滅危惧種のウネナシトマヤガイも死滅です。しかし県は、「いったん死滅するが、建設後の石積み護岸に生き物が定着し、復活することが予想される」と言います。何の根拠も示さずに、です。


■「生き物が復活することが期待される」を鵜呑み

 再生会議には学識経験者(専門家)が10人加わっています。しかし、「たくさんの生き物が復活することが期待される」という県の言い分を鵜呑みです。
 一方、県議会の三番瀬問題特別委員会では、県議が「本当に生き物が復活するのか」と質したのに対し、県自然保護課長は「復活するかどうかはわからない」と答えました。
 再生会議では、そうした質問や疑問がいっさい出ません。こういう状況をみると、学識経験者や専門家っていったい何だろうと考えさせられます。


■「学識経験者は、環境保護よりも自分たちの立場やメンツを
  保護している」
  〜再生会議にかんする森田三郎県議の感想〜

 おかしいと思うのは、私だけではありません。たとえば、長年にわたって谷津干潟(習志野市)の清掃活動をすすめてきた森田三郎さん(現在は千葉県議会議員)は、2005年6月定例県議会の予算委員会でこう述べました。三番瀬再生会議を傍聴しての感想です。
     「私自身、学識経験者とか委員会というのを余り信用しておりません。ある意味では、学識経験者ほどずるくて残酷で小心な方々はおられません」
     「公務員の方も学識経験者もそうですが、三番瀬というそのこと自体よりも、むしろ三番瀬に対する自分たちの立場、メンツ、環境保護よりも自分たちのメンツを一生懸命保護しているというのが私の体験でございます」(平成17年6月県議会予算委員会会議録より
 「裸の王様」という物語を思い出します。家来が本当のことを言い出せないなかで、子どもが「王様はハダカだよ!」と叫ぶ話です。
 「学識経験者」とか「専門家」という肩書のついた人たちや、さらには「市民参加」の会議についても、このように澄んだ目で見る必要があるのではないでしょうか。森田県議の率直な感想は、このことを感じさせてくれます。


■知識人の弱点

 ついでにいえば、故・丸山真男氏(政治学者)は、名著『現代政治の思想と行動』(未来社)のなかで、知識人にみられる弱点としてこんなことを指摘しています。
    《私はとくに知識人特有の弱点に言及しないわけに行きません。それは何かといえば、知識人の場合はなまじ理論をもっているだけに、しばしば自己の意図に副(そ)わない「現実」の進展に対しても、いつの間にかこれを合理化し正当化する理屈をこしらえあげて良心を満足させてしまうということです。既成事実への屈伏が屈伏として意識されている間はまだいいのです。その限りで自分の立場と既成事実との間の緊張関係は存続しています。ところが本来気の弱い知識人はやがてこの緊張に堪えきれずに、そのギャップを、自分の側からの歩み寄りによって埋めて行こうとします。そこにお手のものの思想や学問が動員されてくるのです。しかも人間の発しない自己欺瞞の力によって、この実質的な屈伏はもはや決して屈伏として受け取られず、自分の本来の立場の「発展」と考えられることで、スムーズに昨日の自己と接続されるわけです。嘗(かつ)ての自由主義的ないし進歩的知識人の少なからずはこうして日華事変を、新体制運動を、翼賛会を、大東亜共栄圏を、太平洋戦争を合理化して行きました。ひとたびは悲劇といえましよう。しかし再度知識人がこの過ちを冒したらそれはもはや茶番でしかありません。》
 再生会議には、“環境派”とよばれる学者や専門家も数人加わっています。そんな“環境派”の専門家委員たちの対応をみると、丸山氏の指摘が脳裏に浮かんできます。
 環境問題が重要視されているなかで、学識経験者や専門家は何を期待されているのでしょうか。そのへんのところを考えてほしいと思います。

(2005年12月)






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