三番瀬再生の目的は

猫実川河口域の人工海浜化?

〜県と市川市の考えは同じ〜

高木信行


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 東邦大学理学部環境科学シンポジウム「三番瀬の環境再生計画」が(2006年)3月18日、市川市内で開かれました。
 このシンポでは、県の北田博雄氏(三番瀬再生推進室主幹)と風呂田利夫氏(東邦大学教授)、西村幸夫氏(東京大学大学院教授)などのやりとりが意味深長でした。

■「市川市行徳臨海部まちづくり懇談会」では
   猫実川河口域の人工海浜化を合意

 西村幸夫氏は、「市川市行徳臨海部まちづくり懇談会」(市川市主催)の座長を務めています。市川市の意向を受け、懇談会で猫実川河口域の大規模な人工海浜化を合意させた立役者です。
 懇談会には自然保護団体の代表も参加していますが、議論を何回も重ねた結果、ついに人工海浜化を合意しました。


■県の再生会議ではなぜ人工海浜化が合意できない?

 市川市の懇談会は人工海浜化が合意できたのに、県の三番瀬円卓会議や三番瀬再生会議ではなぜ人工海浜化が合意できないのか──。この問題について、シンポではこんなやりとりがされました。

    ◇北田博雄氏(県三番瀬再生推進室主幹)
     「県の円卓会議や再生会議と、市川市の懇談会は、同じ議論がされていると思っている。だから、再生会議のほうも、懇談会と同じ結論になってもいいはずだ。しかし、いまのところ、そうはなっていない。それは、やり方に問題があるのではないかと思う。懇談会のやり方をぜひ勉強したい」

    ◇風呂田利夫氏(東邦大学教授)
     「市川市の懇談会のほうは、プロの行政マンも出席し、行政側の主張をどんどん述べる。また、合意された結果は行政の施策に反映させる。しかし、県の円卓会議や再生会議はそうなっていない。県も、市川市のように行政参加型にすることが必要ではないか」

    ◇西村幸夫氏(東京大学大学院教授)
     「市の懇談会は最初から合意できたわけではない。自然保護団体の代表が“陸域を削るべきだ”と主張すると、地権者から“自分の所有地を海にもどすなんてとんでもないことだ”という意見がだされる。また、“今の海には手をつけてはいけない”という主張にたいしては、漁業者(漁協役員)のほうから、“今の海は漁業にとってはいい環境ではない”とか“昔の三番瀬の環境をできるだけとりもどすべきだ”という意見がだされる」
     「こういう議論を何回も長く続けた結果、(三番瀬海域を人工海浜にするという)合意ができた」
     「懇談会はこんな議論を活発に続けているが、委員同士は非常に仲がいい。たとえば忘年会を毎年ひらき、ホンネを語りあったりしている。県の場合は、こういうことがなかなかできにくいのかもしれない」

    ◇朝倉暁生氏(司会、東邦大学助教授)
     「そういうやり方はムラ社会の弊害かもしれない。しかし、ホンネがだしあえるようにすることは必要だ」


■県のネライも人工海浜化

 このやりとりで注目されるのは、県が三番瀬再生でめざしているのは市川市の構想と同じということです。つまり、猫実川河口域の人工海浜(人工干潟)化です。
 市の施策推進に協力している風呂田利夫氏は、市民団体「三番瀬フォーラム」の顧問でもあります。
 同フォーラムの会報『瀬流』最新号には、県の市川塩浜護岸改修でつくられる石積み護岸は、「客土・覆砂されて三番瀬の後背湿地となり葦(あし)原になり浜になる」と書かれ、これはフォーラムが主張する猫実川河口域の人工干潟化と合致するものなので、高く評価できるとしています。
 今後、県の三番瀬再生会議などで、猫実川河口域の人工海浜化が提案されるのではないでしょうか。これは、実質的には、2001年9月に白紙撤回された101ヘクタール埋め立て計画の復活です。

(2006年3月)   







《シンポジウムの概要》

 東邦大学理学部環境科学シンポジウム「三番瀬の環境再生計画」   〜沿岸環境関連学会連絡協議会ジョイントシンポ〜  日 時:2006年3月18日(土) 10:30〜16:00  会 場:グリーンスタジオ      (市川市生涯学習センター メディアパーク市川内)  司 会:東邦大学理学部生命圏環境科学科 助教授 朝倉暁生  パネリスト:   ・風呂田利夫  東邦大学理学部 東京湾生態系研究センター教授   ・柿野  純  千葉県水産総合研究センター 東京湾漁業研究所所長   ・吉田 正人  江戸川大学社会学部環境デザイン学科 助教授   ・西村 幸夫  東京大学大学院工学系研究科 都市工学専攻教授  討 論:三番瀬の干潟環境修復計画      三番瀬の環境保全修復、三番瀬の活用と管理体制において、講師間での     意見の相違を明らかにしたうえで、埋立地の海域への復帰、護岸堤の構造、     三番瀬の干潟再生について、東京湾生物と生態系保全ならびに三番瀬の環境     資源としての社会的活用と管理計画について社会的合意形成を目指した議論     を行う。





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