谷津干潟の危機打開策で話しあい

〜環境省関東地方環境事務所・習志野市と〜




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 ラムサール条約湿地の谷津干潟(千葉県習志野市)がピンチにおちいっています。泥の流出やアオサの堆積などによって干潟環境が悪化しているのです。

 谷津干潟は大蔵省所管の国有地であったため、公有水面埋立法では埋め立てることができませんでした。周囲の埋め立てによって、谷津干潟は長方形の干潟(約40ha)として残りました。

 その後、習志野市が住宅用地などとして谷津干潟を埋め立てることを計画しました。これにたいし、「千葉の干潟を守る会」や「千葉県野鳥の会」(当時は日本野鳥の会千葉支部)、市民などが共同で埋め立て反対運動をくりひろげました。その結果、市は1984年に埋め立てを断念しました。そして1993年、ラムサール条約湿地となりました。日本で7番目、干潟としては初のラムサール条約登録です。

 谷津干潟は都会の真ん中に残る貴重なオアシスです。谷津干潟自然観察センターによると、谷津干潟で観察される野鳥は約110種におよびます。そのうち約70種は水鳥です。干潟を代表するシギ・チドリ類は約50種と、水鳥の大半を占めます。

 しかし、シギ・チドリ類は減少の一途をたどっています。「千葉の干潟を守る会」の田久保晴孝副代表によると、減少の主な要因は4つです。
  • 泥が流出しつづけている。下水道の整備にともない、淡水や有機物が流入しなくなったことも大きい。その結果、底生生物の生息環境が変化し、シギ・チドリがエサとしているゴカイやカニが減った。
  • 春と秋にアオサが干潟の表面を覆う。これは淡水が流入しなくなったことに起因する。
  • 外来種のホンビノスガイが増え、ゴカイやカニの生息場所をうばっている。
  • 東日本大震災によって10cmぐらい地盤沈下した。干潟の西側はほとんど干出しなくなり、シギ・チドリ類がエサをとりづらくなった。
 そこで、谷津干潟を管理する環境省関東地方環境事務所は、干潟の環境保全事業を2010年度から実施しています。これまで実施した事業は、底質改良、かさ上げ、杭設置、堆積物除去などの試験です。
 これらはまだ試験段階です。そのため、環境悪化の進行を心配する声が高まっています。「干潟環境が悪化している最大の要因は淡水が流入しなくなったことだ。下水処理水の導入などをなぜ検討しないのか」という声もあがっています。

 そこで、JAWANに加盟の「千葉の干潟を守る会」(近藤弘代表)と「千葉県野鳥の会」(富谷健三会長)は、谷津干潟の環境改善策について関係機関と話しあいました。

 (2017年)7月3日は習志野市環境政策課です。市は、自然観察センターの維持・運営は熱心にやっています。ところが、干潟の保全は環境省にまかせっぱなしです。2団体は、「市民が誇りとしている谷津干潟の環境改善に市も積極的に動いてほしい」と要望しました。同課は「できるかぎりのことをしたい」と前向きに回答しました。

 翌4日は環境省関東地方環境事務所の野生生物課と話しあいです。
 同事務所は環境保全事業の進捗状況や展望などをていねいに説明してくれました。2団体は「淡水導入も検討してほしい」と要望しました。行徳湿地(行徳鳥獣保護区=千葉県市川市)の実例を示してです。行徳湿地では、丸浜川の家庭排水をポンプアップして湿地の環境改善に活用しました。

 事務所はこう答えました。
     「たとえば下水処理水の導入については、下水道を所管する機関の協力が必要になる。とりあえずは環境省だけでできることを優先的にすすめる」
 縦割り行政がネックになっているようです。
 環境省の環境保全事業を注視し、今後も話しあいをつづけることになりました。
















日本の干潟で初のラムサール条約湿地となった谷津干潟。
泥の流出やアオサの堆積、シギ・チドリ類の減少が深刻な問題になっている



習志野市環境政策課(左)と話しあい



環境省関東地方環境事務所(手前右)と話しあい






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