三番瀬の人工干潟造成は「実現性が薄い」
〜平成28月定例県議会で副知事が答弁〜
三番瀬の人工干潟造成をめぐり、新たな動きがありました。
平成28年2月定例県議会で、諸橋省明副知事は人工干潟造成について「県事業として実現性が低い」と答弁しました。ふじしろ政夫議員(市民ネット・社民・無所属)の質問に答えたものです。これは注目すべき発言です。
県の姿勢が急変
県は2015年度になって、三番瀬・猫実川(ねこざねがわ)河口域(市川市塩浜2、3丁目地先)の人工干潟造成に消極的な姿勢をみせるようになりました。
2015年6月5日、三番瀬を守る連絡会が三番瀬担当課長と着任交渉をおこないました。この席上、課長は「県としては、人工干潟造成は市川市にやってもらいたいと考えている」と明言しました。
その後に開かれた三番瀬専門家会議で、県は人工干潟造成をまったくとりあげません。2014年度までは人工干潟造成に積極的な姿勢をみせていました。姿勢が急変です。
その背景には、国土交通省の首都圏「3環状9放射道路ネットワーク」構想図から第二東京湾岸道路が突然消えたことがあります。2015年3月末のことです。
県が猫実川河口域の人工干潟造成に躍起となっていたのは、そこに第二湾岸道路を通したいからでした。第二湾岸道路構想が“棚上げ”になれば、県にとって人工干潟をつくる必要はまったくありません。
さらに、猫実川河口域にかんするふじしろ議員の質問にたいし、県はこう答弁しました。
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「カキ礁を含む猫実川河口域には底生生物が多く生息している。この区域は東京湾に残された貴重な干潟・浅海域である三番瀬の一部と考えている」
2月定例県議会の代表質問より
以下は、2016年2月25日の2月定例県議会代表質問におけるふじしろ議員と県のやりとりです。
ふじしろ議員は三番瀬のラムサール条約登録や「干潟的環境形成」(人工干潟造成)などをとりあげました。
◇ふじしろ政夫議員
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「三番瀬の干潟的環境形成事業はこれからどうなるのか。市川市と協議を進めているというが、県が提案したものを実現するために協議するのか。それとも、やらないということも含めて検討するのか。この点についてお答え願いたい」
「また、猫実川河口域にあるカキ礁は豊かな自然である。保全すべ大切な自然だと思うが、県はどう考えているのか。さらに、第二湾岸道路は三番瀬保全の制約を受けるという答弁がいつもされている。県は『一定のメドをつける』と言っているが、どのようにメドをつけるのか」
◆諸橋省明副知事
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「干潟的環境形成の実現性や方法を検討するため、干潟の構造や自然環境への影響、整備費用などの観点から昨年度、複数案の比較検討をおこなった。その結果、干潟を造成した場合、人が海とふれあえる親水性は一定の効果が認められるが、三番瀬全体の自然再生への効果は限定的であり、また、多額の整備費や管理費を要することなどが明らかになった。この検討結果から、県事業としての実現性は低いと考えた。そのため、県による整備を求めている市川市にたいし、その旨を伝えたうえで、市としての方針を示すよう要請しているところである」
「つぎに猫実川河口域のカキ礁についてだが、カキ礁を含む猫実川河口域には底生生物が多く生息している。この区域は東京湾に残された貴重な干潟・浅海域である三番瀬の一部と考えている」
「第二東京湾岸道路は三番瀬再生計画に位置づけられた事業とはなっていない。三番瀬の自然環境に影響をあたえる恐れのある事業の実施にあたっては、再生計画に掲げられている生物多様性の回復や環境の持続性、回復力の確保などとの整合性をはかることが必要だと考えている」
◇ふじしろ議員
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「三番瀬の干潟的環境形成については実現性が低いと判断したとのことだが、これは非常に賢明であると思う。猫実川河口域のカキ礁についても、非常に重要な自然であるというように正しい認識をされている。うれしく思う。しかしながら、私が質問したなかで、『ラムサール条約登録をどう実現するのか』『三番瀬の保全・利用に関する条例制定は?』『生物多様性は?』『水質環境は?』ということについては回答がなかった。これらの点についてもお答えいただきたい」
◆遠山誠一環境生活部長
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「三番瀬のラムサール条約登録や条例制定については、地元関係者からさまざまな異なる意見がだされている。関係者間の合意形成のメドはたっていない状況である。県としては、来年度、その進捗状況などもふまえたうえで、今後の方向性を検討していきたいと考えている」
「底質環境の健全化についてだが、県は現在、生活排水対策や産業排水対策などを実施し、東京湾に流入する汚濁負荷量の削減にとりくんでいる。汚濁負荷量は年々減少しているが、引き続き削減にとりくんでいきたい」
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