「風の谷のナウシカ」と三番瀬・猫実川河口域


中山敏則

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 数年ぶりに映画「風の谷のナウシカ」をビデオでみました。ご存じ宮崎駿(はやお)監督の作品で、1984年に劇場公開され大ヒットした映画です。

 この映画をみると、映画で描かれている「腐海(ふかい)」と三番瀬の猫実(ねこざね)川河口域がダブってみえます。宮崎監督は自然の尊さを訴えつづけています。この映画は、「猫実川河口域はヘドロ化して死んだ海なので埋めて人工砂浜にしてしまえ」というような考え方を改めさせるためにつくったのではないかとさえ思います。


 「風の谷のナウシカ」のあらすじ


 ご存じの方が多いと思いますが、あらすじはこうです。
     巨大文明が「火の7日間」という大戦争で崩壊してから1000年あまりたち、地上が「腐海」という有毒な物質を出す森に覆われてしまいつつあるところから物語は始まります。
     小王国「風の谷」は腐海のほとりにあります。谷の族長(おさ)の娘、ナウシカは、民から慕われており、自然と心を通わせる力を持っていました。
     ある日突然、トルメキア軍が侵入し、族長が殺害され、「風の谷」は征服されてしまいます。人質となってトルメキアに移送されるナウシカは、飛行船がトルメキアに対立するペジテ軍の襲撃を受け、腐海に落ちてしまいます。
     腐海は、有毒な瘴気(しょうき)を発する植物が鬱蒼(うっそう)と茂る森で、マスクなしでは5分と生きていられません。また、神秘的な「王蟲(おうむ)」をはじめ、たくさんの蟲(むし)が侵入者から森を守っていました。ナウシカは蟲に落とされ腐海の底に沈んでしまいます。
     しかし、腐海の底には清く澄んだ湖があり、浄化された水が流れていました。ナウシカはそこで腐海の生まれた理由を悟ります。じつは、腐海は大いなる自然の自浄作用が生み出した神秘の森でした。腐海の木々はこの世界をきれいにするために生まれてきたものであり、蟲たちはその森を守っていました。
     「風の谷」が戦場化し、王蟲の大群が谷へ向かいます。ナウシカは、谷と人々と蟲たちを救うために身を捨ててたった一人で立ち上がり、自分が助けた瀕死の王蟲の子とともに、暴走してくる王蟲の前に立ちふさがります。
     ナウシカが王蟲の大群にはねとばされたとき、それを見守っていた人々はもうだめだと目を伏せました。しかし、その瞬間、奇跡が起きます。王蟲の暴走が止まり、傷ついたナウシカを王蟲の大群が静かに取り囲みます。ナウシカの英雄的な行動によって、谷も人類も、そして蟲たちも守られます。
 以上です。


 「腐海」と三番瀬・猫実川河口域


 この映画でナウシカが愛し守ろうとしたのは、親しみやすい鳥や動物とか、あるいは美しい自然ではありません。人間から嫌がられたり恐れられている腐海や蟲たちです。

 こういう設定は、自然の見方を深くしてくれます。表面的には親しみにくい海域となっている猫実川河口域などの大切さも示唆してくれています。

 三番瀬の猫実川河口域は、東京湾奥部で奇跡的に残された海域です。1991年まで長年にわたって下水処理水が大量に放流されるなど、痛めつけたり汚されてきました。それでも自然の豊かさを維持しています。

 この海域は浅瀬です。大潮の干潮時にしか干潟が干出しません。底は泥質なので、ちょっと見るとヘドロにみえます。そのため、地元の市川市や行徳漁協などは、「ヘドロがたまっている」とか「汚れた海域」などと言っています。
 しかし実際は、底はヘドロではなく、くさい臭いがまったくしない泥です。また、ハゼの子どもなどがたくさん泳ぎ回っていて、稚魚の楽園となっています。魚のエサとなるアミ類なども泳ぎ回っています。ハゼやスズキ、フッコなどの魚やカニがたくさん採れます。それほど、ここは生命力豊かな浅瀬なのです。

 このことは、県の補足調査(「市川二期地区・京葉港二期地区計画に係る補足調査」)でも明らかにされています。
 補足調査は、猫実川河口域にはドロクダムシ、ホトトギスガイ、エドガワミズゴマツボ、ニホンドロソコエビなど、三番瀬の他の区域には存在しない底生生物が多く生息していること。そして、有機物や汚染物質は多いが、この区域も浄化機能を果たしており、特に単位面積あたりのCOD浄化量は、他の環境条件での値と比較しても遜色がないこと──などを明らかにしています。浄化機能が高いことは、この区域が都市部から流れ込む汚染物質の受け皿となり、多様な底生生物が生息することにより、活発な浄化作用が行われていることを示しています。

 このように、猫実川河口域は三番瀬全体の環境の中で重要な役割を果たしています。したがって、ここを埋め立てたり、土砂投入でつぶしたりすることは、自然豊かな浅瀬やそこで生息しているさまざまな生物を殺すことになります。三番瀬の多様な生態系を破壊することになるのです。

 このような猫実川河口域は、「風の谷のナウシカ」の「腐海」とイメージが重なります。また、映画で登場する蟲は、猫実川河口域の象徴的存在であるドロクダムシなどを連想させます。
 この映画は、とくに猫実川河口域の人工改変(人工干潟化)を主張している人たちに観てほしいと思います。

(2002年8月)






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