三番瀬の利用ルールづくりを要請
〜船橋市が「すみやかに構築する」と回答〜
三番瀬保全団体は(2016年)9月13日、「ふなばし三番瀬環境学習館」の管理運営と三番瀬(船橋側)の利用ルールづくりについて船橋市と交渉しました。
交渉したのは三番瀬を守る会、千葉県野鳥の会、三番瀬を守る連絡会、千葉の干潟を守る会の4団体です。船橋市は公園緑地課、環境政策課、商工振興課の3課長が応対しました。
ルールづくり構築の協議を開始
〜船橋・市川市が水域占用を受けている区域〜
三番瀬利用のルールづくりについて、市は「占用許可者である千葉県、共同管理者である市川市と明確なルールづくりの構築について協議を進めている」「すみやかに協議を終え、管理規定をつくりたい」と回答しました。
これまで、三番瀬船橋側の利用はやりたい放題になっていました。モーターパラグライダー、ウィンドサーフィン、ジェットスキー、水上バイク、カヤック、ラジコン飛行機などをどの場所でも使用することができます。“なんでもあり”の状態です。そのため、潮干狩りなどの利用客は危険にさらされています。野鳥が追い散らされることもしょっちゅうです。日本有数の渡り鳥の飛来地なのに、野鳥が干潟や浅瀬に飛来することができない。そういうことも多いのです。
そこで4団体は明石海岸における人身事故の例をあげてつぎのように申し入れました。もし人身事故が起きた場合、船橋市は責任をとる覚悟ができているのか。市職員が禁固刑を受けたら、その職員は懲戒免職になるはず。そのような事態がおこらないようにしてほしい──と。ルールづくりを構築するために県・市川市と協議を進める、と船橋市は回答しました。
船橋市と市川市が県から水域占用許可を受けて共同管理しているのは、東側突堤と西側突堤の間だけです。それ以外の区域については、県港湾課と話しあうことにしています。
無料休憩場所の確保
この日の交渉では、2017年7月にオープンする「ふなばし三番瀬環境学習館」の管理運営についても話しあいました。
「展望デッキに望遠鏡を設置し、三番瀬に飛来する野鳥を観察できるようにしてほしい」という要請にたいしては、「現在は、展望デッキ上に固定された望遠鏡の設置は考えていない」との回答です。これについては、環境学習館の指定管理者が決まったあとで再度話しあうことにしました。
「雨天のときに観察会などが無料で休憩できる場所を確保してほしい」という要請にたいしては、「学習館内にはラウンジなど無料スペースがあるので、雨天時などの雨宿りに利用できる。展望デッキ1階の休憩室と2階の展望室でも雨風がしのげる」という回答を得ました。
この日提出した船橋市長あての要望書と市の回答は以下のとおりです。
要望書と回答 |
2016年9月13日
船橋市長 松戸 徹 様
三番瀬を守る会 会長 田久保晴孝
千葉県野鳥の会 会長 富谷健三
三番瀬を守る連絡会 代表世話人 中山敏則
千葉の干潟を守る会 代表 近藤 弘
ふなばし三番瀬環境学習館の建設・運営と三番瀬(船橋側)の
管理についての質問と要望
船橋市におかれましては、常日頃、三番瀬の保全とふなばし三番瀬海浜公園の管理などにご尽力くださり、感謝申し上げます。
私たちは三番瀬を保全し後世に残すために活動している団体です。ふなばし三番瀬環境学習館の建設・運営や三番瀬(船橋側)の管理などについて、下記のとおり質問と要望をさせていただきます。
記
1.ふなばし三番瀬環境学習館について
(1)三番瀬に渡来する野鳥を展望デッキから観察できるようにしてください。望遠鏡も設置してくださるようにお願いします。
-
〔参考〕
葛西臨海公園では、展望レストハウス「クリスタルビュー」の2階(ガラス張り展望室)から野鳥を観察できるようになっています。100円硬貨を入れて使用する固定式の「観光望遠鏡」も設置されています。
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〔船橋市の回答〕
現在は、展望デッキ上に固定された望遠鏡の設置は考えておりません。
(2)学習館の内部に水槽を設置し、生きている生物も見ることができるようにしてください。また、アサリやカキの浄化能力がわかるような実験も入館者に見せてください。
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〔船橋市の回答〕
指定管理者からの提案事項に影響する内容のため意見を差し控えさせて頂きます。
(3)観察会などの参加者が雨天のときに無料で休憩できる場所を確保してください。
-
〔船橋市の回答〕
施設の利用方法については、特定の団体に向けて施設の貸出し(無料提供等)をすることは想定しておりません。学習館内にはラウンジなど無料スペースがありますので、雨天時等の雨宿りにご利用頂けます。また、展望デッキ1階の休憩室と2階の展望室では雨風がしのげますのでご利用頂けます。
2.海浜公園前の三番瀬の管理について
(1)ふなばし三番瀬海浜公園前の干潟や浅瀬は利用のルール化がされていません。どの場所でも潮干狩りができます。モーターパラグライダーやウィンドサーフィン、ジェットスキー、水上バイク、カヤック、ラジコン飛行機も使用することができます。そのため、利用客が多いときは、野鳥が干潟や浅瀬に飛来することができません。
三番瀬は全国有数の渡り鳥の中継地です。環境省「モニタリングサイト1000」のシギ・チドリ類渡来数では、三番瀬は毎回、上位10位以内に入っています。たとえば2014年度冬期をみると、佐賀県の大授搦、熊本県の白川河口に次いで三番瀬は3番目となっています。三番瀬はまた、スズガモが毎年数万羽飛来します。ところが、利用客が多いときは野鳥をみることができないのです。
たとえば葛西臨海公園の干潟は、人が自由に立ち入りできる「西なぎさ」と、立ち入り禁止の「東なぎさ」に分けられています。そのため、利用客がいくら多くても、野鳥は「東なぎさ」に飛来することができます。それを観察することもできます。
三番瀬海浜公園前も、人が立ち入りできない区域を設けてくださるようお願いします。区域の設定にあたっては、三番瀬をよく利用する団体の意見も聞いてくださるよう願いします。
-
〔船橋市の回答〕
現在、ふなばし三番瀬海浜公園前の干潟(東側突堤から西側突堤の先端を直線で結んだ範囲)については船橋市と市川市が千葉県から水域占用許可を受けて、共同管理をしております。干潟造成の経緯や水域占用の目的が、「一般の利用に供すること、また潮干狩りを実施すること」としており、管理区域内に立ち入り禁止区域を設けることは困難と考えられます。またその範囲を超えた区域については千葉県(国)の管理に属する区域となることから本市が禁止措置を行うことは難しいものと考えます。
(2)危険な行為や遊戯は禁止してください。たとえばモーターパラグライダーです。「利用者のじゅん守事項」を記載した立て看板には、「他人の迷惑になる行為はしないこと」「危険のおそれのある遊戯をしないこと」と書かれています。しかし、この表現は抽象的です。そのため、モーターパラグライダーで遊ぶ人もいます。監視員もそれをやめさせません。
モーターパラグライダーは全国で墜落事故が多発しています。もしモーターパラグライダーが墜落して潮干狩り客などが死亡した場合はどうするのでしょうか。船橋市は管理責任を問われます。死亡者の遺族が市を告発することも十分に考えられます。
兵庫県明石市の人工砂浜陥没で女児が生き埋めになって死亡した事故では、人工砂浜を管理している国土交通省と明石市の職員4人が業務上過失致死罪に問われ有罪となりました。禁錮1年執行猶予3年です。最高裁は「事故は予想できた」との判決を下しました。
人身事故が起きた場合、船橋市は責任をとる覚悟ができているのでしょうか。市職員が禁固刑を受けたら、その職員は懲戒免職になるはずです。そのような事態がおこらないようにしてください。
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〔参考〕
葛西臨海公園では、ウィンドサーフィンやジェットスキーなどは使用禁止であることが立て看板に具体的に明記されています。
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〔船橋市の回答〕
現在、管理区域内での危険行為(迷惑行為)等についての明確な規定がございません。危険行為等としてゴルフ、ラジコン、モーターパラグライダー等が想定されておりますが明確な禁止事項が整理されていないことから、占用許可者である千葉県、また共同管理者である市川市と明確なルール作りの構築について、協議を進めているところです。
(3)市川市東浜1丁目地先の管理について
@船橋市長と市川市長は平成24年3月28日に「合意書」を締結しました。三番瀬船橋側(船橋市潮見町地先と市川市東浜1丁目地先)の砂浜、突堤、コンクリート製斜路を共同で維持管理するというものです。この「合意書」で明記されている諸施設の共同管理は現在も継続されているのでしょうか。
-
〔船橋市の回答〕
諸施設の共同管理は、現在も継続して行っております。
A市川市は平成22年12月、「東浜1丁目地先整備構想(素案)」を発表しました。市川市東浜1丁目地先において海浜スポーツ広場(ビーチバレー、ビーチサッカーなど)や多目的広場、ビオトープなどを整備するというものです。
平成24年3月28日に開かれた第32回「市川市行徳臨海部まちづくり懇談会」において、市川市は東浜1丁目地先の管理と同整備構想についてこう述べています。
「今後将来的には、ビオトープ、海浜スポーツの場等の整備を検討しており、平成24年度には維持管理に関する方法、費用負担割合など詳細な協定を締結し、平成25年4月より正式に両市の共同使用、共同管理を開始する予定です」
市川市東浜1丁目地先の管理や同整備構想について、船橋市と市川市の間でどのような協議がされているのでしょうか。教えてくださるようお願いします。
-
〔船橋市の回答〕
市川市東浜1T目地先の管理は、前回答のとおり、両市で共同し行っております。また、東浜1T目地先整備(素案)については、市川市からの協議依頼がないことから、両市での協議は行っておりません。
三番瀬利用のルール化などを求める要望書を手渡す
「三番瀬を守る会」の田久保晴孝会長(中央)
「ふなばし三番瀬環境学習館」の管理運営と三番瀬の利用ルールづくりについて
船橋市の3課長と話しあう三番瀬保全団体のメンバー(右側)
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