人工干潟造成計画に批判相次ぐ
千葉県主催の三番瀬ミーティング
2023年11月25日、千葉県が三番瀬ミーティングを県消費者センター(船橋市)で開いた。三番瀬関連事業に関する意見交換が目的である。発言者11人のうち6人が人工干潟造成計画の見直しを市川市に求めた。市川市は同市塩浜2丁目の護岸前で人工干潟造成を計画している。
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〈注〉
三番瀬ミーティングは、住民参加と情報公開のもとで三番瀬の再生を進めていくため、地元住民・漁業関係者・環境保護団体などから広く意見を聴くことが目的である。参加者による意見交換会もおこなっている。三番瀬ミーティングは2011(平成23)年度からはじまり、この日は17回目だった。これまでの三番瀬ミーティングの概要は次の県庁ホームページに掲載されている。
◇三番瀬ミーティング
人身事故の危険性
〜明石・大蔵海岸では砂浜陥没で女児が生き埋め死亡〜
最初に三番瀬を守る連絡会の中山敏則代表世話人がこう述べた。
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「兵庫県明石市の大蔵海岸では人工砂浜が突然陥没し、4歳の金月美帆ちゃんが生き埋めになって死亡した。私は先週、その現場を見学した。現場には、ありし日の美帆ちゃんを偲ぶブロンズ像が建てられている。人工砂浜には、砂の流出を防ぐため強固なケーソンが設置されている。それでも砂が流出し陥没した。この人身事故では、人工砂浜の管理を担当していた国交省と明石市の職員4人が有罪となった。塩浜2丁目の護岸前で人工干潟を造成したら、同じような人身事故が危惧される。市川市はこう述べている。行徳漁協などが塩浜1丁目の地先で造成した養貝場は今も砂が残っているので塩浜2丁目の地先においても土砂は流出しないと考えている、と。しかし、養貝場は水深の深い澪筋(みおすじ)となっている護岸前から離れた位置にある。一方、塩浜2丁目の護岸前は水深の深い澪筋である。そんな場所で人工干潟を造成したら、侵食や土砂流出が続くと思う。人工干潟造成のモニタリング調査においては、三番瀬の自然環境への影響と同時に、そのような悲惨な事故の危険性も検討されるよう要望する」
市川市が見当違いの回答
人身事故の危険性について市川市行徳支所はこう回答した。
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「県が塩浜1丁目護岸と2丁目護岸の境で実施した砂付け試験では、いまも砂が流出せずに残っている。これをモデルケースとして進めることにしている」
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「県が実施した砂付け試験の場所は塩浜1、2丁目護岸の境の角である。そこは狭い範囲内だ。しかし、市川市が干潟造成を計画している塩浜2丁目の護岸前は範囲が広い。砂付け試験の場所がうまくいっているからというのはいかがなものか」
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「県が砂付け試験をした場所は角地だ。県は、そこに砂を投入したら砂が流出しにくいということで試験地に選んだ。どのような生物が定着するかを調べることが目的だった。そこは最初から砂が流出しにくいということがわかっていた。一方、市川市が人工干潟造成を計画している場所は角地ではない。波浪の影響を受けやすい海域だ。しかも澪筋なので水深が深い。砂付け試験箇所は砂があまり流出していないから塩浜2丁目の護岸前も大丈夫というのは見当違いである」
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〈注〉
平成22(2010)年6月21日開催の第15回三番瀬再生実現化試験計画等検討委員会において、千葉県は「第14回三番瀬再生実現化試験計画等検討委員会の開催結果(概要)」を報告し、こう述べた。
「砂付けということでおこなったのは、砂が移動するかどうかということよりも、砂を置いたことによって生物相がどのようにして回復するだろうか、あるいは発生するだろうかということを主眼としておこなったわけで、(砂移動試験とは)基本的なスタンスが違うものである」
(第14回三番瀬再生実現化試験計画等検討委員会の開催結果(概要)
再開発の負荷を三番瀬に求めないで
市川三番瀬を守る会の谷藤利子会長は述べた。
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「市川市は塩浜2丁目を“にぎわいの街”にするという構想を掲げている。しかし実際にはうまくいっていない。そういうなかで、“にぎわいの街づくり”のために人工干潟を造成するという流れだと思う。そこには無理がある。行徳地区には、行徳鳥獣保護区や、新しくできた『ぴあぱーく妙典』など、豊かな自然がたくさんある。それらを大いにアピールして利用し、水辺や三番瀬の自然環境を活かすというような知恵をだしていただきたい。“にぎわいの街づくり”の負荷を三番瀬に求めるには限界があると思う。人工干潟造成計画の見直しをぜひ検討していただきたい」
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「三番瀬に負荷を求めないでほしいということについては、持ち帰って検討させていただく」
民間企業だったらボツになる
市川市民の益子さんも計画の見直しを求めた。
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「市川市は小中学校の建て替えとか公共インフラ施設の整備が進まない状況だ。そんな状態で人工干潟を整備し、それを維持管理していくだけの能力があるのか。その費用は全部、税金として市民にかかってくる。経費面で見てもズサンな計画だ。民間企業だったら、こんな計画はボツになる。私たちは、市川市民としてこれからも税金を納めていく。それをムダには使われたくない。これまで市川市は全国的にも批判を受けてきた。そのような市政を引き継いで、いまの市川市役所の人たちがこういう状況だと、非常に不本意である」
幕張の浜と稲毛の浜の惨状
三番瀬を守る署名ネットワークの小野安英さんは、侵食がつづく幕張の浜と稲毛の浜を事例をあげて計画の見直しを求めた。
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「私は千葉市に住んでいる。稲毛の浜は、熊谷俊人県知事が千葉市長だったときに白い砂をオーストラリアから運び入れた。ところが、波浪による侵食によって白い砂は半年でなくなってしまった。自然に逆らうとそんなふうになる」
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「地形については、稲毛とか幕張は富津辺りの方を向いている。一方、塩浜2丁目は東京湾の最奥部に位置している。そのあたりがどうなるかということをしっかり見極めながら進めていきたい」
市川市が計画した人工干潟造成のイメージ
市川市塩浜2丁目の階段護岸。市川市はこの護岸前で人工干潟の造成を計画している
明石市の大蔵海岸では人工砂浜が突然陥没し、4歳の金月美帆ちゃんが生き埋めになって死亡した。
この人身事故では、人工砂浜の管理を担当していた国交省と明石市の職員4人が禁錮1年の有罪となり、
免職になった。現場には、ありし日の美帆ちゃんを偲ぶブロンズ像が建てられている。肩に小鳥を乗せ、
大蔵海岸で遊ぶ子どもたちを笑顔で見守っている=2023年11月15日撮影
千葉県が砂付け試験をした場所=市川市の塩浜1丁目護岸と2丁目護岸の境の角地
県主催の三番瀬ミーティングで市川市に人工干潟造成計画の見直しを求める小野安英さん
=2023年11月25日、千葉県消費者センター(船橋市)
千葉市美浜区の幕張の浜。波浪によって砂浜が大きくえぐられ、高さ2m超の崖ができている。
砂をいくら補給しても侵食がつづくため、千葉県はとうとう砂の補給を中止した=2024年1月15日撮影
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