〜米国・チェサピーク湾からの報告〜
「世界が注目する三番瀬のカキ礁〜米国・チェサピーク湾からの報告」と題する講演会が7月8日、市川市内で開かれました。
講師は三番瀬海洋生物研究会の高島麗(うらら)さん。主催は「千葉の干潟を守る会」です。
高島さんは、先ごろ、アメリカ東海岸のチェサピーク湾で開かれた「オイスターフェアー」に参加されました。
その報告をしながら、カキ礁のすぐれた役割や、三番瀬・猫実川河口域のカキ礁を保全することの大切さを話しました。
高島さんはこんなことを述べました。
■昔は、湾内すべての水をカキが4日でろ過
「チェサピーク湾の“チェサピーク”という地名の語源は、アメリカ先住民(インディアン)の言葉で“豊かな貝類を育む偉大な水辺(chesepicooc)”という意味である。その名のとおり、カキが豊富だった昔のチェサピーク湾では、カキが湾内すべての水を4日で濾過(ろか)したと試算されている」
「しかし今は、カキの量は当時の2%しか残っていない。そのため、同じ量の湾内の水を浄化するのに1年近くかかってしまうと言われている」
「さらに、昔に比べて川から海に流れ込む水は、生活排水などでずいぶん汚れている。豊かな頃の2%のカキでは浄化が追いつかず、汚染されたままの海では、カキがさらに減ってゆく」
■海の汚染と漁獲量低下で、カキ礁のありがたみを認識
「カキ礁が減少したため、海の汚染が進み、さらに漁獲量が低下した。そこで、人々はカキ礁のありがたみに気づいた。そのため、アメリカでは、研究所や自治体がカキ礁の復元にとりくんでいる」
「といっても、かつては、カキ礁の重要な役割がなかなか理解されなかった。“子どもが足を切ったりするので危ない”などと言われていた。しかし、子どもたちがカキ礁のすばらしさを家庭で話したりするようになって、次第にカキ礁にたいする理解が深まった」
■カキ礁研究の活発化と市民による活動
「一般市民は、“オイスター・ガーデニング”と呼ばれるカキの里親制度に参加している。2000人以上の海沿いの家庭が、カゴに入ったカキを家の前の海で育てている」
「“オイスター・ガーデニング”は子供向けの環境学習としても人気が高い。150以上の学校、そして5000人を超える児童が、カキの周りにできる生態系を観察したり、きれいな海について学んでいる」
「専門家によるカキ礁研究も盛んに行われている。地道に研究にも助成金がだされている。数多くの研究によって、カキ礁があると魚の漁獲量が増え、海水が浄化され、多様性が上がり、生息数も増えることが明らかになってきた。カキ生息域の保全と復元は、漁業振興にもつながることもわかってきた。カキ礁再生のシンポジウムも開かれていて、研究結果は246ページ、24章におよぶ論文集にまとめられている」
■高い評価を受けた三番瀬のカキ礁
「オイスターフェアーで三番瀬(猫実川河口域)のカキ礁の写真を見せたら、たいへん羨ましがられ、高い評価を受けた。三番瀬のカキ礁はカキがタワー状に立ちあがっているが、チェサピークのカキ礁は、三番瀬ほどは立ちあがっていない。三番瀬のカキ礁は世界に誇れるものだ」
■カキ礁を除去するというのはとんでもないこと
〜自然をこれ以上壊すな!〜
講演を受けての質疑討論では、チェサピーク湾のカキ礁や市民のとりくみ、さらには三番瀬カキ礁の保全などについて、さまざまな質問や意見がだされました。
「日本では、カキの研究がきちんとやられていない。三番瀬のカキ礁は東京湾の汚れをきれいにしている。それを無理やり除去するというのはとんでもないことである」
「釧路湿原の自然再生の問題が、きょうの朝日新聞でとりあげられている。三番瀬でも、土木工事をやりたいのなら“再生”という言葉は使うな、と言いたい。おカネが欲しいのなら、カネをあげるから、自然をこれ以上壊すな! と言いたい」
などです。
■世界に誇れるカキ礁を守ろう
最後に、主催者を代表して「千葉の干潟を守る会」の田久保晴孝副代表がこう訴えました。
「アメリカなどとちがって日本では、“再生”という名で貴重なカキ礁や泥干潟をつぶす動きが強まっている。みんなで協力しあい、そういうことをやめさせ、世界に誇れるカキ礁を守りましょう」
(2006年7月)
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