人工干潟は自然の干潟にかなわない
〜安田八十五・関東学院大教授が断言〜
「アクアラインと地域振興─東京湾横断道路の交通改善及び地域振興への効果の測定と評価」と題した講演会が(2010年)5月27日、千葉市内で開かれました。講師は関東学院大学経済学部の安田八十五教授(環境政策)。主催は千葉県議会の市民ネット・社民・無所属会派です。
◆アクアラインは建設しないほうがよかった
安田教授はさまざまなデータを示し、「アクアライン(東京湾横断道路)は南房総の地域振興にまったく役だっておらず、失敗だった」「建設しないほうがよかった」と結論づけました。そして、失敗の原因や教訓を明らかにしました。
◆干潟を保全し、地域振興に活用すること
また、「東京湾は世界で最も豊かな内湾である」とし、東京湾にわずかに残された干潟の環境価値や経済的価値をきちんと評価し、その保全と活用を図ることが大切と述べました。
そして、アクアラインの接岸地にある木更津市の盤洲干潟(小櫃川河口干潟)がいかにすぐれた環境価値や経済的価値をもっているかをデータで示し、こう提言しました。
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「盤洲(ばんず)干潟のもつ環境価値を高めることは、経済価値を高めることにもつながる。したがって、干潟のもつ環境価値と経済価値の保全と活用を図ることが何よりも大切である。このことが、盤洲干潟を母胎として成り立っているノリ養殖やアサリ漁、潮干狩りといった木更津市の干潟漁業や観光に大きな活力をもたらすのではないか」
◆浅間山の砂で造成した「海の公園」と自然海岸の野島海岸
安田教授は、自然海岸(自然干潟)と人工海浜(人工干潟)の違いについてもふれました。
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「東京湾は戦前から戦後にかけて自然海岸の大部分が埋め立てられてしまった。一言でいえば、これは過大な埋め立てだった。西の方(東京・神奈川)では、自然海岸は横浜市金沢区の野島海岸しか残っていない。この自然海岸は、私が勤務している関東学院大学のすぐ近くにある。
野島海岸の近くには横浜市の海の公園がある。これは人工砂浜だ。そこにはかつてすばらしい自然海岸があった。ところが、わざわざ千葉の浅間山(せんげんやま)の砂を購入し、自然海岸を埋め立てて人工砂浜をつくった。
海の公園は、日本の人工砂浜としては成功例と言われている。しかし、自然海岸にはかなわない。私は毎年、関東学院大学の学生を連れて野島海岸と海の公園の生物調査をしている。生物の種類数は野島海岸のほうが2倍多い。
海の公園でもアサリが採れる。しかし、野島海岸のアサリの方がずっとおいしい。また、マテガイは、野島海岸では採れるが、海の公園にいない」
◆人工干潟は自然の干潟にかなわない
質疑応答では、参加者から三番瀬の話もだされました。
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「三番瀬では、千葉県や市川市などが人工干潟化(人工砂浜化)をめざしている。一部NPOも人工干潟化を盛んに主張している。生物相がたいへん豊かな猫実川河口域(市川側海域)に土砂を盛り、人工干潟をつくるべきといういうものだ。市川市は、そのモデルとして横浜市の海の公園をあげている。教授が指摘されるように、海の公園は浅間山(君津地域にあった)の砂を使った。そしていま、千葉県は君津の山砂を使って人工干潟化の実験をつづけている」
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「人工干潟や人工砂浜は自然の干潟にはかなわない。海の公園は人工砂浜の成功例と言われているが、私は評価していない」
教授の話はすごく有益でした。
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