三番瀬転業準備資金問題は何だったのか

〜丸山慎一県議が講演〜



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 「第二の危機に直面している三番瀬」と題した講演会が(2010年)1月22日に船橋市女性センターで開かれました。主催は「三番瀬を守る会」、講師は千葉県議会議員の丸山慎一さんです。
 講演の中から、三番瀬転業準備資金(三番瀬「ヤミ補償」)問題にふれた部分を転載させていただきます。



講演内容




三番瀬転業準備資金問題は何だったのか
〜三番瀬「ヤミ補償」問題の本質〜



●1982年の「三者合意」が発端

 つぎは、いわゆる三番瀬ヤミ補償の問題である。これは2008年11月に決着がついた。

 先にふれたように、1981年に沼田知事が誕生し、市川2期埋め立て計画が凍結解除になった。そうしたら、市川市行徳漁協が「埋め立てるのなら漁業補償金をよこせ」と言いだした。

 県も最初は、「そんなことを言われても、埋め立てないうちは補償金は出せない」と言っていた。ところが漁協は、「そんなことはないはずだ。必ず埋め立てるのだから補償金をよこせ」と強硬に主張した。

 そこで県は、「仕方がない」とし、県(企業庁)と市川市行徳漁協、金融機関の間で「三者合意」と結んだ。それは、埋め立てたときに払う漁業補償金で返すから、いったん貸し付けるかたちで補償金を事前に出してしまおう──というものだった。この「三者合意」にもとづき、「転業準備資金」という名目で融資がされた。

 ところが、その後もずっと埋め立てがされなかった。そして2001年に埋め立て計画が白紙撤回になった。漁協は、埋め立てによってもらうはずだった補償金で借りたカネを返すことになっていたのに、返せなくなった。これが大問題になった。

 県はほんの2、3年でケリがつくと思っていたのに、20年もかかってしまった。そのため、43億円にかかる利息は、たまりにたまって56億円にふくれあがってしまった。


●「三者合意」の違法性を地裁が認定

 企業庁は2000年2月に利息分56億円の支出を予算化し、支払った。そこで、「三番瀬を守る署名ネットワーク」など三番瀬保全団体の人たちが中心となって住民訴訟を起こした。金融機関が漁協に融資した43億円は違法なカネだから、その利息を県が支払うのはとんでもないというものだった。

 この裁判は2005年10月に判決が下った。形式的は原告が敗けた。しかし、実質的には大勝利だった。千葉地裁の判決文のなかに、「三者合意」には「瑕疵(かし=違法性)がある」ということを書かせたからだ。「三者合意」はまちがっていた、と地裁が認定したのである。これは画期的な判決だった。

 ちなみに、判決が出たあとも、訴訟にかかわった人たちは「活かす会」(三番瀬公金違法支出判決を活かす会)をつくり、三番瀬の恒久保全をめざしてがんばっている。


●行徳漁協は116億円をタダでもらった

 前に述べたように、このヤミ補償は2008年11月に決着した。決着の仕方は、県(企業庁)が損害賠償の名目で行徳漁協に60億円を支払うことだった。それまで支払った利息56億円を含めると、行徳漁協は全部で116億円をタダでもらったことになる。その半分(56億円+追加利息2億円)は金融機関への利息である。

 行徳漁協は、漁業権を放棄してカネをもらったのではなく、漁業権を保有したままカネをもらった。いまも漁業権をもっている。だから、今後も埋め立てがあれば、漁協は補償金がもらえることになる。
 これが埋め立てへの一つの圧力につながっている。といっても、圧力をかけているのは、漁協の全体ではなく一部の中枢である。


●埋め立て推進派の構成部分

 ここまでの話を整理すると、つぎの3つが埋め立て推進派の構成部分となっている。
  • 市川塩浜地区の再開発をめざしている勢力
  • 第二湾岸道路を三番瀬に通したい勢力
  • 補償金めあての漁協(市川側の漁協)の一部勢力
(文責・千葉県自然保護連合事務局)






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