大野博美議員が三番瀬問題を質問
〜2月定例県議会代表質問〜
(2011年)2月21日、2月定例千葉県議会の代表質問で大野博美議員(市民ネット・社民・無所属)が三番瀬の問題をとりあげました。
大野議員は、県が作成した三番瀬再生計画(新事業計画)案についてこう述べました。
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「事業内容を見ると、実質は砂の投入による人工ビーチ化を推進するものに過ぎない。しかし、猫実川河口域は泥干潟であり、三番瀬の他の底質と異なる。生物相も他と異なり、より豊かな生態系がみられ、陸域からの汚濁負荷の浄化などで大きな役割を果たしている。この泥干潟を人工ビーチ化することは、三番瀬の環境改善、漁場再生どころか、生態系や浄化機能を壊すこととなる」
ところが、これらの対策について三番瀬円卓会議や再生会議が何度も提起したにもかかわらず、県は行徳可動堰を管理する国土交通省関東地方整備局と一度も折衝していないことが明らかになりました。
以下は、大野県議の質問と森田知事・坂本副知事の答弁です。
大野博美議員の質問
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次に三番瀬の再生について質問します。
昨年末、三番瀬再生会議が解散しました。昨年9月県議会の自民党代表質問で、「再生会議は議論ばかりしてなかなか進まない」「三番瀬再生会議を解散し、行政主導とすべき」との意見があり、これを受けた形で、森田知事は「行政が主体的に三番瀬の再生に、スピード感を持ってとりくむ」と答弁されました。
このやりとりは、「三番瀬の再生」が進まないのは再生会議に原因がある、だからこそ再生会議を解散したのだ、と言わんばかりです。
そこで「三番瀬の再生」がなぜ進まなかったのかについて、とりわけ「豊かな漁場としての三番瀬の再生」の観点から以下、知事の見解を伺います。
まず、円卓会議三番瀬再生計画案では、「再生のために必要な項目」として次の3点があげられています。
- 環境単純化の原因の一つは、淡水流入や地下水の湧出の減少による汽水域の消失と推定されることから、淡水を導入し、環境の多様化を試みる。
- 良好な漁業環境づくりのため、干潟的環境づくり、藻場再生、江戸川放水路からの出水と青潮対策について検討する。
- 人口増加に対する生活雑排水対策の遅れのため、汚濁物質が三番瀬に長期にわたり流入し、富栄養化をもたらし、赤潮のみならず、青潮の発生も促し、三番瀬の生物に大きな打撃を与えている。流入河川の水質改善を早急に行う必要がある。
再生会議でも、環境改善として早急に求められる3つの課題として、
- 青潮対策
- 台風など大雨のときに行われる江戸川放水路からの出水による漁業被害を抜本的に解決すること。
そして、江戸川からの真水の導入の検討が合意されています。
そこで、知事に3点伺います。
- 円卓会議による三番瀬再生計画案の「提言」では、「かつての三番瀬を支えていたものは、活発で持続性のある水循環や土砂収支、物質収支でした。今後柱となるのは健全な水循環や土砂収支を実現する中で、生物の生息環境を確保し、それを前提とする人の関わりを保っていくことです」としています。したがって、三番瀬の環境の抜本的改善のためには、とりわけ水循環系全体を視野に入れたとりくみが不可欠と考えるがどうか。
- 青潮対策、江戸川放水路からの出水対策、江戸川からの淡水導入について、再生会議段階では具体的な進展が見られませんでしたが、その理由は何か。
- 県は江戸川放水路を管理している国土交通省と出水対策、淡水導入について協議した形跡が見受けられませんが、その理由は何か。
次に、先月1月に示された三番瀬再生計画(新事業計画)案について伺います。
「自然環境の再生・保全」「豊かな漁場としての三番瀬の再生」を計画の基本としながら、青潮対策は3年間の目標として「青潮発生状況の情報発信」としかありません。また、江戸川放水路の出水対策、淡水導入については具体的な記載がありません。これでは、円卓会議、再生会議の成果を踏まえた「豊かな漁場としての再生計画」と言えないと考えるが、どうか。
計画案では、「干潟的環境の形成」事業が繰り返し出てきますが、事業内容を見ると、実質は砂の投入による人工ビーチ化を推進するものに過ぎません。
そもそも干潟的環境を成立させる要素、要件を何と考えているのか伺います。
また、猫実川河口域は泥干潟であり三番瀬の他の底質と異なります。生物層も他と異なり、より豊かな生態系がみられ、陸域からの汚濁負荷の浄化などで大きな役割を果たしています。この泥干潟を人工ビーチ化することは三番瀬の環境改善、漁場再生どころか、生態系や浄化機能を壊すこととなると考えるが、そういう認識があるのか伺います。
県知事・副知事の答弁
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◇質問事項
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三番瀬の環境の抜本的改善のためには、とりわけ水循環系全体を視野に入れたとりくみが不可欠と考えるがどうか。
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三番瀬は、流入する河川の流域や東京湾を通じて、陸域と海域の影響を強く受けていることから、三番瀬に流入する河川や東京湾全体の水質改善を図ることが重要であると考えている。このため、県としては、下水道整備や合併浄化槽の設置促進などにより、東京湾に流入する汚濁負荷量の削減にとりくむとともに、国や東京湾周辺の自治体と連携して東京湾の再生につながる広域的なとりくみを行っているところである。
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青潮対策、江戸川放水路からの出水対策、江戸川からの淡水導入について、再生会議段階では具体的な進展が見られなかったが、その理由は何か。
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青潮対策については、青潮拡大防止のための実証試験結果において、酸素を供給するためには膨大な設備が必要とされたことから、三番瀬再生計画では、東京湾へ流入する汚濁負荷量を削減するための生活排水対策や産業排水対策等を実施しているところである。
また、江戸川からの淡水導入については、水利権の調整や、流域の生態系および漁場への影響など、多くの課題を慎重に検討する必要がある。
なお、江戸川放水路からの洪水時の出水については、周辺住民の生命・財産を守るための治水対策として行われるべきものと考えている。
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江戸川放水路を管理している国土交通省と出水対策や淡水導入について協議した形跡が見受けられないが、その理由は何か。
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江戸川放水路からの出水対策や淡水導入については、昨年12月の三番瀬再生会議で検討課題等の整理が行われ、実施にあたっては関係者の十分な合意形成が必要とされたところである。
県としては、洪水時の出水が県民の生命・財産を守るための治水対策として行われていること、また、淡水導入については水利権の調整や流域の生態系および漁場への影響などの検討課題が解決されていないことから、国への協議は行っていない。
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三番瀬再生計画(新事業計画)案では、青潮対策、江戸川放水路の出水対策、淡水導入については具体的な記載がない。これでは円卓会議や再生会議の成果を踏まえた「豊かな漁場としての再生計画」と言えないと考えるが、どうか。
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青潮対策としては、青潮関連情報発信事業のほか、東京湾に流入する汚濁負荷量の削減や、国や東京湾周辺の自治体等と連携した広域的なとりくみを新事業計画案に盛り込んだところである。
また、新事業計画案では、豊かな漁場の再生をめざして、覆砂や澪(みお)の整備などの漁場改善や、海苔(のり)養殖対策、貝類漁場対策などにとりくむこととしている。
なお、江戸川放水路からの洪水時の出水が治水対策として行われていること、また淡水導入については水利権の調整、流域生態系および漁場への影響などの検討課題が解決されていないことから新事業計画案には記載していない。
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干潟的環境を成立させる要素、要件を何と考えているのか。また、猫実川河口域の泥干潟を人工ビーチ化することは三番瀬の生態系や浄化機能を壊すこととなると考えるが、そういう認識があるのか。
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干潟は生物多様性の保存や底生生物などによる水質の浄化、漁場生産の場、さらには環境学習やレクリェーションの場など、さまざまな役割を果たしており、干潟的環境とはこれらの役割を担うような環境であると考えている。
なお新事業計画案では、現在とりくんでいる干潟的環境形成試験を引き続き実施し、その結果について検証・評価しながら、市川市塩浜2丁目護岸前面における干潟的環境の拡大をめざすこととしており、猫実川河口域は対象としていない。
再質問と答弁
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◇大野議員
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水循環系のことで下水道や合併浄化槽などいろいろ言われたが、今のところ流域市町村はまったくバラバラでなんのまとまりもない。印旛沼では、健全化行動計画で流域市町村がきちんと目標値を定めて動いている。このように、三番瀬に特化した下水道整備、なによりも流域市町村が単独浄化槽から合併浄化槽への転換を図っていく、浸透枡(ます)で雨水を浸透させていく、歩道の透水性を増やしていくなど、目標を決めて計画をつくるべきでないか。お答えください。
それから、先週の2月15日、川本幸立県議が江戸川放水路を管理している関東地方整備局をたずね、いろいろと聞いた。出水対策や淡水導入の検討について、さきほど国と協議していないという回答があったが、そのとおりで、県からは公式な要請・要望は一度もないということであった。
管理している国交省に公式に伝えないと一歩も先に進まないのではないか。これは県行政の怠慢そのものだと思う。この件について知事の見解をお示しいただきたい。
それから、新事業計画案で豊かな漁場を再生させるためには、砂を入れる、あるいは澪(みお)をつくる、この2つだという回答がされた。しかし、これらは三番瀬の環境の抜本的な改善に不可欠な水循環系全体を視野にいれた施策ではなく、対処療法にすぎない。
船橋漁協の大野組合長もこう言っている。
「人工干潟造成は対処療法であり、三番瀬の環境改善にはまったくつながらない。三番瀬で緊急に求められているのは青潮や江戸川放水路の出水対策、真水の常時導入などの根本的療法である」
このように、砂をかぶせたり、澪(みお)をつくったりするのは対処療法にすぎない。抜本的療法でないことを知事は認識しているのかどうかを伺いたい。
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印旛沼と同様に特化した計画をつくったらどうかという質問だが、東京湾全体をきれいにしていくということで東京湾総量削減計画というのがあり、流域全体の汚濁負荷量、それから削減目標量を定めて、いろいろと推進している。これからそれを具体的なとりくみとしてどうしていくのか、一生懸命とりくんでいきたいと考えている。
それから、江戸川放水路の関係については、三番瀬再生会議の中にも江戸川放水路のワーキンググループを設置して検討してきた。その中で、洪水時における出水の影響とか、自然な水循環の回復とか、いろいろと検討している。しかし、治水対策や水利権調整、漁場への影響などの課題を検討しなければならないという結論になり、国への協議は行っていない。
青潮対策については、青潮拡大防止のための実証試験の結果、膨大な酸素供給設備が必要となる。トータルとして東京湾に流入する汚濁負荷量をどう削減するのか、こういうことから生活排水対策や産業排水対策を具体的に実施していきたいと考えている。
再々質問と答弁
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◇大野議員
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三番瀬の再生が進まない要因は再生会議ではなく県の怠慢であったと思うが、その見解を伺いたい。
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三番瀬の再生については知事からも指示を受けており、行政が主体性をもち、スピード感をもってやるように言われている。県と地元4市が連携し、行政が主体性をもって進めていきたいと考えている。
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