「全体登録は反対、船橋側の部分登録は賛成」
〜三番瀬ラムサール登録でが市川市と話し合い〜
「三番瀬を守る署名ネットワーク」など8団体は(2010年)8月31日、三番瀬のラムサール条約登録問題で市川市と話し合いました。対応したのは同市行徳支所の田草川信慈支所長など4人です。
話し合いに先立ち、三番瀬のラムサール条約登録を求める署名約12万人のうち10万を持参して提示しました。
話し合いは、支所長が市の考えを文書回答で示した次の2点をめぐって行われました。
(1)三番瀬全体の登録について
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三番瀬については、自然環境や漁場環境及び市民が親しめる海辺となっていないことなどに課題があると認識している。したがって、三番瀬の自然環境や漁場の改善・再生などのための具体的な計画が示され、事業が進められること、併せて利害関係者の合意が得られることを前提にラムサール条約登録を進める。
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人工干潟等の自然豊かな場所であると認識している。部分登録の意義は良く理解できないが、指定計画書等を確認のうえ、また、登録に必要な諸条件が整うのであれば、登録することについて特に異論はないと考える。
以下はやりとりの一部です。
◎「再生(人工干潟造成)が先であり、ラムサール登録は時期尚早」
◇8団体
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文書回答の(1)は、具体的にどういうことなのか。
◆市川市(行徳支所長)
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三番瀬はいまの状態がベストではない。もっといい状態に回復したいということだ。また、市川側の海域は市民が親しめる海辺になっていないので、親しめる海辺にしたいということだ。そういう海の再生を進めることが先であって、ラムサール条約登録は時期尚早である。だから、現時点では三番瀬全体の登録には同意できない。
◇8団体
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海の再生とラムサール条約登録は矛盾しない。登録したあとでも三番瀬をよりよい状態に改善することは可能だ。だから、登録に賛成してほしい。
◆市川市
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市は、県の三番瀬再生事業に期待していた。しかし、いっこうに進まない。そういう状況ではラムサール条約登録に賛成できない。
現段階ではラムサール条約登録は時期尚早である。そもそも、登録することによって、どういうメリットがあるのか?
◇8団体
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ラムサール条約登録は、三番瀬をこれ以上壊さないための担保となる。まずはしっかり制度的に保全し、そのうえで環境改善や再生を進めるということだ。
◆市川市
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それが問題だ。たとえばラムサール条約登録を求める署名には「豊かな三番瀬の自然環境を守るため、塩浜2丁目地先を中心した砂入れによる人工干潟造成は行なわないこと」と記してある。
われわれは、三番瀬の環境を少しでも昔のいい状態に近づけるため、人工干潟の造成は必要だと考えている。要するに、三番瀬の再生が必要ということだ。
◇8団体
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三番瀬の保全・再生をどういうふうに進めるかは、県の三番瀬再生会議で議論されている。また、県の三番瀬漁場再生検討委員会でも漁場再生の方策が検討されている。
ラムサール条約に登録されても、そういう議論や検討は続けられ、再生事業も実施される。したがって、登録と再生はまったく矛盾しないはずだ。
◆市川市
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ラムサール条約登録と再生が矛盾しないことは承知している。しかし、県の再生事業がなかなか進まない状態では、登録に賛成するわけにはいかない。
◎船橋市漁協が登録を求めていることについて
◇8団体
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市川市の2漁協(市川市行徳、南行徳)は三番瀬のラムサール条約登録に反対している。しかし、船橋市漁協はラムサール条約登録に賛成している。賛成理由のひとつは、ラムサール条約登録によって三番瀬漁獲物のブランド力をさらに高めることだ。
船橋市漁協が登録を求めていることについて、どう考えるのか。
◆市川市
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漁獲物のブランド力を高めるためにラムサール条約に登録するというのは本末転倒である。三番瀬の自然環境や漁場環境をよりよくすることのほうが基本だ。
◇8団体
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船橋市漁協は、三番瀬の自然環境や漁場環境をよくするためにさまざまなとりくみをしている。行政に対してもいろいろと要望している。
たとえば、ふだんは閉め切られている行徳可動堰が台風時に開放されるため、大量の淡水や汚泥が江戸川放水路を通じて三番瀬にいっきょに流れ込む。そのたびに三番瀬漁業は大打撃をうける。こういう弊害の是正にもとりくんでいる。
船橋市漁協が求めているのは、漁業をずっとつづけられるようにすることだ。そのための一つの手段としてラムサール条約登録を求めている。
◎「人工干潟造成などの開発がやりにくくなるので、
登録に反対しているのでは?」
◆市川市
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ラムサール条約登録を求める署名用紙に書かれていることを読むと、「三番瀬にはいっさい手を付けるな」と言っているようにも受け取れる。そういう考えには賛成できない。
三番瀬は今の状態がベストではないので、人工干潟造成などの再生が必要だ。何度も繰り返すが、ラムサール条約登録よりも再生が先である。
◇8団体
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「今の状態がベストではない」とか「昔のいい状態に少しでも近づけたい」と言うが、昔よりも悪くなった原因をどのように認識しているのか。
三番瀬は半分以上が埋め立てられた。ど真ん中には大きな航路(市川航路)がつくられた。さらに、三番瀬にはものすごい量の汚濁負荷が流入している。たとえば、市川市内を流れる春木川と国分川の水質は、それぞれ全国ワースト1とワースト5である。それは、市川市の下水道整備がたいへん遅れているからだ。市の下水道普及率は全国平均と千葉県平均を下回っている。そのように、たいへん汚れた川の水が三番瀬に流れ込んでいる。
そういう弊害の是正対策を講じないと、人工干潟をつくっても三番瀬の環境改善にはつながらない。だから私たちは、ほかにやることがたくさんあると主張している。
また、市川市は干潟をほしがっているようだが、浅瀬(浅海域)も三番瀬の自然環境にとって重要な役割をはたしている。
私たちは、 「三番瀬に手をつけるな」とは一言もいっていない。ラムサール条約登録湿地にして保全を担保したうえで、弊害要因の除去を検討したり、海と川と陸の全体を視野にいれた対策を講じることが必要だと言っている。
そもそも、市川市は三番瀬の埋め立てを推進してきた。また、市の下水道整備がたいへん遅れていることも、三番瀬の環境を悪くしている。そういう責任を市はどう認識しているのか。
◆市川市
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下水道整備は進めている。とにかく、人工干潟造成などの再生が先であり、ラムサール条約登録は時期尚早である。この考えは変わらない。
◇8団体
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ラムサール条約登録湿地になると、人工干潟造成などの開発がやりにくくなるので、登録に反対しているのではないか。
◆市川市
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そういうことはない。
◎「船橋側海域の部分登録は否定しない」
◇8団体
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文書回答によれば、船橋側海域のラムサール条約登録については、「特に異論はない」と記してある。船橋側海域の登録については賛成すると理解してよいか。
◆市川市
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そのとおり。船橋側海域の部分登録については否定しない。
ただし、文書回答に書いてあるように、その内容については確認させてもらう。問題があるようだったら、異議をださせてもらう。たとえば、市川航路の西側(市川側)の一部も指定区域に含まれるようだったら問題だと思う。
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