第二湾岸道路で東京都と聞き取り交渉

東京ベイまちづくり戦略(案)をめぐって



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 第二東京湾岸道路を盛りこんだ「東京ベイeSGまちづくり戦略(案)」を東京都都市整備局が発表した。そこで三番瀬保全団体は(2022年)3月1日、担当の開発企画課長と聞き取り交渉をおこなった。

◇     ◇

 三番瀬を守る会、千葉県野鳥の会、千葉県自然保護連合などの三番瀬保全団体は、三番瀬を通る第二東京湾岸道路の建設を29年間も食い止めている。だが国交省と千葉県はあきらめない。
 第二湾岸道路は東京都大田区と京葉臨海コンビナート(市原市など)を結ぶ国家プロジェト(国策)である。
 昨年4月に就任した熊谷俊人千葉県知事は第二湾岸道路の建設に熱心だ。7月、「新たな湾岸道路整備促進大会」を開いた。国交省と千葉県は、新たな湾岸道路を第二湾岸道路の第一段階と位置づけている。
 こうしたなかで昨年11月、東京都が「東京ベイeSGまちづくり戦略」(案)を発表した。これは臨海部の巨大開発構想である。「2040年代のベイエリアを実現するための行政のとりくみや民間誘導の方策を示す実行戦略」としている。「eSG(イー・エス・ジー)」の「e」はエコロジー、「S」は渋沢栄一、「G」は後藤新平の頭文字である。
 都はこのなかで第二湾岸道路の建設も初めて打ちだした。担当は、都市整備局都市づくり政策部の開発企画課である。主なやりとりは次のとおりだ。


「国交省からは何の話もない」

◇三番瀬保全団体
 千葉県側の第二湾岸道路は、三番瀬を通るルートを県が1993年に発表したが、埋め立て反対運動によって白紙にもどった。その後、千葉県側では第二湾岸道路の具体的なルートが決まらない。こうした経過をどのように認識しているか。

◆開発企画課長
 第二湾岸道路の具体的なルートが決まっていないことはわれわれも認識している。まちづくり戦略(案)には第二湾岸道路も図示した。それは、国(国交省)のほうで第二湾岸道路の構想があるからだ。将来整備されるインフラの可能性として第二湾岸道路を図示した。国交省がずいぶん前に発表したルート図をそのまま載せた。
 第二湾岸道路を担当するのは都市整備局の都市基盤部街路計画課だ。第二湾岸道路について、国交省からはまったく話がない。国交省と都が前に向かってなにか協議しているかというと、協議はまったくしていない。第二湾岸道路はどうなっているかと街路計画課に聞いても、「国交省からはなんの音沙汰もない」という返事である。第二湾岸道路については、いまのところ何もわからない。

◇三番瀬保全団体
 国交省が設置した「千葉県湾岸地区道路検討会」は2020年5月、新たな湾岸道路(自動車専用道路)建設計画の基本方針をまとめた。基本方針は、「ルートや構造を検討するさい、東京湾奥部に残された貴重な干潟となる三番瀬については千葉県三番瀬再生計画との整合性を図る」としている。

◆開発企画課長
 われわれは、その基本方針についても勉強している。国は慎重に対応していて、新たな湾岸道路も、基本方針をまとめた段階で止まっていると認識している。


「決まったことに対応する」

◇三番瀬保全団体
 三番瀬に面する浦安、市川、船橋、習志野4市は、第二湾岸道路を三番瀬に通すことについて慎重もしくは反対の姿勢を示している。とくに船橋市は強く反対している。三番瀬を通さなければ第二湾岸道路は建設できない。浦安市の埋め立て地に確保されている8車線の第二湾岸道路用地は都市計画決定されていて、ルート変更は不可能だからだ。浦安市に確保された第二湾岸道路用地は三番瀬の猫実川河口域で行き止まりになっている。

◆開発企画課長
 われわれとしては、決まったことに対応することになる。


「三番瀬はどうでもいい、とは微塵も考えていない」

◇三番瀬保全団体
 2018年10月、葛西海浜公園がラムサール条約に登録された。野鳥の楽園となっていることなどが登録の理由だ。三番瀬も野鳥の楽園となっていて、環境省がラムサール条約湿地の候補地にあげている。葛西海浜公園と三番瀬を行き来している野鳥も多い。ところが東京都は、三番瀬を通る第二湾岸道路の建設をまちづくり戦略(案)に盛りこんだ。エコロジーをキャッチフレーズにしてである。一体どうなっているのかと驚いている。

◆開発企画課長
 ラムサール条約に登録された葛西海浜公園は大事に保全している。三番瀬についての心配も理解できる。われわれは、ラムサール条約に登録された葛西海浜公園はしっかり保全するが三番瀬はどうでもいい、ということは微塵(みじん)も考えていない。小池都知事も同じ考えだと思う。


「自然を守る活動は大事」

◇三番瀬保全団体
 高速道路などの新増設は人口も経済も拡大していく時代のものである。これからはそれをなんとか維持管理できる程度まで絞り込んでいかざるを得ない、と指摘されている。

◆開発企画課長
 維持管理も重要な問題だと思う。このあいだもアメリカで橋が落ちた。道路を新設するさいは将来の維持管理のことも考慮しなければならない。それは土木技術者の共通認識となっている。新設と既設利用のバランスを考慮することが大事だ。

◇三番瀬保全団体
 東京湾奥部に残された貴重な干潟・浅瀬の三番瀬を守るため、三番瀬保全団体はさまざまな運動を続けている。

◆開発企画課長
 自然を守る活動は大事だと思う。そのへんについてはしっかり話しあいながらやっていかなければならないと考えている。

◇     ◇

 今後も話しあうことを確認し、交渉を終えた。



〔編集メモ〕
 「東京ベイeSGまちづくり戦略(案)」の表紙に大きく載せてある絵を見ると、道路をなくして人が通れるようにする、となっている。空飛ぶクルマを飛行させ、ドローンで荷物を運ぶ、としている。現在は道路となっている場所も、絵では道路がなくなりホテルが建っている。このように車が走る道路ではなくて人が歩く道をつくるというのがまちづくり戦略の売りである。ところがその一方で第二東京湾岸道路を描いている。
 道路をなくして空飛ぶクルマを飛行させると描いているのに、なぜ第二湾岸道路をつくるのか──。それを共産党の都議会議員が議会で追及すると、都はまったく答えられないそうである。
 この戦略の作成には大手デベロッパーの関係者が深く加わっている。都は、東京五輪の選手村用地(都有地、13.39ha)を大手デベロッパーにものすごく安い価格で売却した。公示価格の10分の1以下の価格(129億6000万円)である。都民有志は、格安売却は違法として訴訟を起こしている。このような問題も横たわっている。











東京都都市整備局の担当課長など(中央手前)と話しあう三番瀬保全団体のメンバー
=2022年3月1日、東京都議会議事堂で



浦安市の埋め立て地に確保された8車線の第二湾岸道路用地。三番瀬の猫実川河口域で
行き止まりになっている。2車線が一般道路として使われている






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