「三番瀬最優先の方針は変わらない」
新たな湾岸道路で船橋市長が表明
〜船橋市議会 岩井友子議員が質問〜
船橋市議会の一般質問で岩井友子議員(日本共産党)が新たな湾岸道路と三番瀬保全をとりあげた。2021年9月14日である。松戸徹・船橋市長は「三番瀬を最優先にするという市の方針は変わらない」と表明した。
「市の基本方針は変わっていない」
9月2日、千葉県知事と千葉、船橋、市川、習志野、市原、浦安6市の市長が国土交通大臣にたいし新たな湾岸道路の整備促進を求める要望書を提出した。
岩井議員はこう質問した。
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「要望書は、外環道高谷ジャンクション周辺(市川市)から蘇我インターチェンジ(千葉市)ならびに市原インターチェンジ周辺(市原市)までの湾岸部で多車線の自動車専用道路として新たな湾岸道路計画の早期具体化が必要であるとし、速やかに計画段階評価に着手することを求めている。事実上、国に着手を求めた要望となっている。市川、千葉市、市原市間の湾岸部で多車線の自動車専用道路を建設すると三番瀬への影響が避けられない」
「市長はこれまで、三番瀬は次の世代にきちんと伝えていかなければならない大事な自然なので、それを最優先にしていく、と私に答弁していただいた。三番瀬最優先が船橋市の立場であることをくりかえし表明されてきた。そのことが三番瀬を守る力になってきたと私も評価している。市民団体のみなさんからもそういう声を聞いている。しかし7月20日に開かれた『新たな湾岸道路整備促進大会』での決議や、それを受けた国土交通大臣への要請に船橋市長も名を連ねた。これは三番瀬の自然環境を壊すことにつながりかねないのでないかと心配している。三番瀬最優先で引き続きがんばっていただきたいが、市長は方針を変更したのか」
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「三番瀬は次の代に残していかなければならない大切なものなので、最優先にするという考え方は変わっていない」
「しかし、国道357号の渋滞や、その周辺を含めての利便性、今後の経済、物流など、そうしたことを考慮すると、新たな道路は検討してつくる必要があると考えている。ただ、新たな湾岸道路については、三番瀬再生計画との整合性をはかるという項目を船橋市の強い申し入れで大会決議に盛り込んだ経緯がある。9月2日に赤羽一嘉交通大臣とオンラインでやりとりしたときも、船橋市としては三番瀬が非常に大事であり、こうした環境に配慮することがなによりも大事なので、そのへんをしっかりお願いしたいと申しあげた」
「今後、新たな湾岸道路の事業が進むなかで、環境調査とかいろいろなステップをふんでいくことになる。そのなかで最終的にルートの試案がでてくると思う。その時点で、船橋市としては、三番瀬にたいする影響とか、そういったものをしっかりみきわめて対応していきたいと考えている。したがって、船橋市の基本方針は変わっていない」
新湾岸道路は水鳥飛行「分断」の壁になる
市長の答弁を受け、岩井議員は述べた。
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「市の基本方針は変わっていないということなので、ちょっとホッとしている。しかし、三番瀬の海域を通らずに道路を通すためには、海老川河口の船橋航路をまたぐ高架式にせざるを得ないと思う。船舶が出入りできる構造にするためには40m程度の高さが必要といわれている。しかし、この場所は三番瀬の野鳥たちが行き来している谷津干潟との間にある。そこに40mの高さの壁ができると、大きな影響がでる。これまでも、JR京葉線と東関東自動車道の高架に多くの鳥が衝突してきた。その高さは5〜10m程度だ。それでも影響がでている」
「40mの高さだと、たいへんなことになる。船橋航路の上空を飛ぶ野鳥の調査を日本野鳥の会が2000年におこなった。3時間半のあいだに18種、1181羽が観察された。平均の飛行高度は29mである。シギ・チドリ類は562羽で平均飛行高度は49m。カモ類は374羽で平均飛行高度は平均21mなどである。みんなぶつかってしまう。そんな高さになる」
「三番瀬に飛来する野鳥は、谷津干潟や行徳鳥獣保護区ともひんぱんに行き来している。それを分断するような構造物をつくると、三番瀬の野鳥への影響が避けられない。そのような新たな湾岸道路計画を促進することには協力すべきでないと思う」
ラムサール条約登録などの文言復活を要請
岩井議員は、市が策定中の新たな総合計画もとりあげた。
これまでの総合計画にはこんな文言が入っていた。「ラムサール条約への登録を推進し、干潟への負荷の抑制、三番瀬の自然環境や漁場の保全・再生・利用を図ります」。ところが新たな総合計画案ではその文言が消え、「ふなばし三番瀬環境学習館の活用等による三番瀬の保全」と、位置づけが大きく後退している。
岩井議員は、「これでは、ちょっと情けない。三番瀬は船橋市の宝ではないか」と述べ、「ラムサール条約登録や三番瀬の自然環境の保全を総合計画や基本計画のなかに盛り込むべき」と求めた。
船橋航路をまたぐ高架方式で第二湾岸道路を建設すると、三番瀬と谷津干潟を行き来する水鳥の飛行を「分断」する壁になる──。これを1999年6月29日の『東京新聞』が大きく報じた。「三番瀬を守る会」の田久保晴孝会長が調査した結果などをもとにし、こう記している。「その高さは『港湾施設に船舶が出入りする船橋航路をまたぐ構造上、40メートル程度の高さが必要』(関係者)とされ、鳥たちにとっては『万里の長城』が出現するようなもの」になる。
千葉市美浜区の幕張メッセと千葉マリンスタジアムの間に確保された8車線の第二湾岸道路用地。
そのうち4車線(右側)が道路として使われている。この第二湾岸道路用地も三番瀬で行き止まり
になっている=アパホテルから撮影
浦安市の埋め立て地に確保された8車線の第二湾岸道路用地。三番瀬の猫実川河口域で
行き止まりになっている。2車線が一般道路として使われている
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