「新たな湾岸道路」は船橋市内のルートが焦点

三番瀬保全7団体が県交渉



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 熊谷俊人千葉県知事は、三番瀬を通る第二東京湾岸道路の建設に意欲を示している。今年(2021年)9月2日、県知事と沿線6市長が「新たな湾岸道路」の早期整備を国交大臣に要望した。この道路は第二湾岸道路の一部となるものだ。そこで三番瀬保全7団体は県と交渉し、新湾岸道路のルートや構造の検討状況を質した。


第二湾岸道路の一部

 今年7月20日は、県と沿線6市が「新たな湾岸道路整備促進大会」を開いた。大会で採択された決議にはこんなことが盛りこまれた。
  1. 市川市の外環道高谷JCT(ジャンクション)周辺から千葉市の蘇我IC(インターチェンジ)周辺ならびに市原IC周辺までの湾岸部において、多車線の自動車専用道路として早期に計画の具体化を図る。
  2. ルートや構造の検討にあたっては三番瀬再生計画との整合性を図る。
  3. 湾岸部の都県間についても検討をおこない、計画を具体化する。
  4. 新たな湾岸道路の早期実現をめざすため、県と沿線市による既成同盟会を設立する。
 9月2日は、県知事と沿線6市長が「新たな湾岸道路」の早期整備を国交大臣に要望した。
 新たな湾岸道路についてはこんな指摘がある。
    「三番瀬への壊滅的な影響から県民の目をそらすため、まずは三番瀬を避けて東側をつくる。その後、西側の東京方面に着手するもくろみだ」。上記4に記された「湾岸部の都県間」は、東京と千葉を結ぶ第二湾岸道路のことである。


船橋市を通るルートが当面の焦点

 三番瀬保全7団体は10月11日、新たな湾岸道路の問題で県の道路計画課と交渉した。7団体というのは、三番瀬を守る連絡会、三番瀬を守る会、市川三番瀬を守る会、千葉の干潟を守る会、三番瀬を守る署名ネットワーク、千葉県野鳥の会、千葉県自然保護連合である。

 7団体が問題にしているのは船橋市を通るルートである。千葉市や習志野市の埋め立て地に確保されている第二湾岸道路用地と外環道高谷JCTを結ぶと、船橋航路に橋をかける必要がある。大型船が航行できる構造にするためには40m程度の高さが必要といわれている。この場所は三番瀬の野鳥たちが行き来している谷津干潟との間にある。そこに40mの高さの壁ができると大きな影響がでる。この問題を新聞も大きく報じた。1999年6月29日の『東京新聞』は「鳥たちにとっては『万里の長城』が出現するようなもの」と記している。

 その一方で「三番瀬を地下方式で通したらどうか」という話も耳にする。道路を地下方式で三番瀬に通すことについては、埋め立て計画が議論になったときに千葉県土木部(現在の県土整備部)が「施工は非常に困難」と結論づけた。県土木部は、地下方式の問題点として、止水の困難さ、軟弱地盤の地震に対する安全性、開削施工による三番瀬生息環境への影響、地盤改良・薬液注入による浅海域の環境への影響などをあげた。

 県交渉ではこれら問題を指摘した。調査結果や資料を示してである。「新たな湾岸道路のルートや構造を検討するうえで、こうしたことも議論しているのか」と質した。

 県は答えた。
    「現時点では新たな湾岸道路のルートや構造は検討していない。そのようなことは議論していない」


計画段階評価制度を適用

 新たな湾岸道路は計画段階評価の手続きで進めることになっている。計画段階評価は国交省が導入した制度だ。

 県は話した。
    「これまでの公共事業は、ルートなどを一方的に提示するケースがけっこうあった。しかし計画段階評価というスキーム(しくみ)は、いろいろな人の意見を聴きながらルートを選定する。新たな湾岸道路の基本方針には『地元への丁寧な説明や意見把握を行うなど、地域とのコミュニケーションを行いながら検討を進める』と書いてある。それをきちんとおこなうことは国交省も理解している」

    「このプロジェクトを進めるさいは、長い期間をかけてさまざまな関係者から意見を聴かなければならないと考えている」


三番瀬再生計画との整合性

 新たな湾岸道路の基本方針には「三番瀬再生計画との整合性を図る」が盛りこまれている。これは三番瀬保全運動の成果でもある。7団体は「整合性はどのように担保されるのか」と質した。
 県は答えた。
    「三番瀬再生計画との整合性を図るということが基本方針にしっかりうたわれている。これは大事なことだ。三番瀬再生計画を主管する環境部局と調整しながら進めることになる」
 7団体はこう要請した。
    「新たな湾岸道路のルートや構造は学識者・専門家を加えた委員会で検討してほしい」「このような湾岸道路を新たにつくるのではなく、既設道路の改良や維持管理に力をいれてほしい」











「新たな湾岸道路」の問題で県道路計画課と話しあう三番瀬保全7団体のメンバー
=2021年10月11日、千葉県庁で



船橋航路をまたぐ高架方式で第二湾岸道路を建設すると、三番瀬と谷津干潟を行き来する水鳥の飛行を「分断」する壁になる──。これを1999年6月29日の『東京新聞』が大きく報じた。「三番瀬を守る会」の田久保晴孝会長が調査した結果などをもとにし、こう記している。「その高さは『港湾施設に船舶が出入りする船橋航路をまたぐ構造上、40メートル程度の高さが必要』(関係者)とされ、鳥たちにとっては『万里の長城』が出現するようなもの」になる。



千葉市美浜区の幕張メッセと千葉マリンスタジアムの間に確保された8車線の第二湾岸道路用地。
そのうち4車線(右側)が道路として使われている。この第二湾岸道路用地も三番瀬で行き止まり
になっている=アパホテルから撮影



浦安市の埋め立て地に確保された8車線の第二湾岸道路用地。三番瀬の猫実川河口域で
行き止まりになっている。2車線が一般道路として使われている






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