─三番瀬保全団体が千葉県と交渉─
第二東京湾岸道路は、東京湾奥部に残る貴重な干潟・浅瀬「三番瀬」を通ることになっている。三番瀬保全団体はこの道路の建設を26年間くいとめてきた。しかし千葉県と国交省はあきらめない。
国交省の関東地方整備局と千葉国道事務所は2018年3月、第8回「千葉県湾岸地域渋滞ボトルネック検討WG(ワーキンググループ)」をひらいた。このWGにおいて、湾岸地域における「新たな自動車専用道路」を千葉県が提示した。図をみると、この道路は第二湾岸道路そのものである。
交通量は減少しつづけ、交通容量を下回った
三番瀬保全団体は2019年1月9日、千葉県の道路計画課・環境政策課と交渉した。交渉したのは三番瀬を守る連絡会、三番瀬を守る会、市川三番瀬を守る会、千葉の干潟を守る会、三番瀬を守る署名ネットワーク、千葉県野鳥の会、県自然保護連合の7団体である。
第二湾岸道路を担当する県道路計画課はこの道路について、「いまは構想段階なので事業主体もルートも構造も未定」としながら、「湾岸地域における渋滞解消や首都圏の発展のために第二湾岸道路は必要」とのべた。
県はかつて、第二湾岸道路の必要性として、臨海部における東京都と千葉県の境の道路交通量が増えつづけることをあげていた。
1999年11月に開かれた第4回「市川二期地区・京葉港二期地区計画策定懇談会」において、千葉県土木部(道路計画課)はこう説明した。1997年における1日あたりの交通量は45万7千台であり、交通容量(40万8千台)を4万9千台もオーバーしている。20年後(2017年)の交通量は59万4千台になると推定される。第二湾岸道路が未整備の場合は、20年後の交通容量不足は4万9千台から18万6千台へとさらにきびしくなる。だから第二湾岸道路が必要である、と。
ところが、じっさいの交通量は減少しつづけている。交通容量も下回るようになった。それを7団体がデータと図で示した。道路計画課は「交通量が減少していることは事実である」と認めた。
国道357号(湾岸道路)では、左右レーン設置や車線増設、地下立体化などの道路改良が渋滞緩和に大きな効果を発揮している。7団体は「新たな道路をつくるのではなく、今後も道路改良をすすめてほしい」と求めた。
県はこれまで、第二湾岸道路を建設する場合は「三番瀬の自然環境に影響がでないようにする」と言明してきた。その考えに変わりはないことを交渉であらためて確認した。
国と県の借金残高は最悪水準。それでも道路をつくり続けるの?
7団体はまた、国と県の借金(債務残高)が雪だるまのようにふくらんでいることをグラフで示し、こう質した。
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「莫大な金をつぎこんで道路建設をつづけると国や県の借金はどんどん増えつづける。子孫に莫大な借金を背負わせていいのか」
参加者からこんな批判が相次いだ。
- 平成の初めに約160兆円だった国の借金残高(債務残高)はいま約900兆円。地方分をあわせると1100兆円に達する。国民1人あたりでは、地方分をあわせると約870万円の借金をかかえていることになる。4人世帯だと約3500万円の借金をかかえていることになる。ものすごい借金だ。千葉県の借金残高(県債残高)も3兆円を超えるようになった。財務省のホームページに「債務残高の国際比較(対GDP比)」のグラフが載っている。日本は借金残高は断トツで多い。財務省はこう書いている。「日本の公債残高は、年々、増加の一途をたどっています。平成27年度末の公債残高は807兆円に上ると見込まれていますが、これは税収の約15年分に相当します。つまり将来世代に、大きな負担を残すことになります。また債務残高の対GDP比をみると、90年代後半に財政健全化を進めた先進国と比較して、日本は急速に悪化しており、最悪の水準になっています」と。今後も莫大な金をつぎこんで道路建設をつづけると国や県の借金はどんどん増えつづける。国や県の借金がどんなに増えても、今後も道路をつくりつづけるという。それでいいのか。
- 県は、行財政改革といいながら教育や文化関連の社会資本(公共施設)をつぎつぎと廃止している。行徳野鳥観察舎も2018年4月に廃止した。他方で道路はどんどんつくろうとする。一貫性がまったくない。
〔追記〕
1月18、19日の新聞各紙が「第二東京湾岸道路の建設に向けて国交省が検討会設置」を報じた。三番瀬保全団体は2月上旬に国交省と交渉することにしている。
三番瀬保全7団体は千葉県の道路計画・環境政策両課(手前右)と交渉し、
第二東京湾岸道路構想の中止を求めた=2019年1月9日、千葉県庁
第8回「千葉県湾岸地域渋滞ボトルネック検討WG(ワーキンググループ)」
(2018年3月13日開催)で千葉県が提示した「新たな自動車専用道路」
千葉県が1993年3月に発表した三番瀬埋め立て計画(市川二期地区・京葉港二期地区計画)
県が1999年6月に発表した三番瀬埋め立て計画見直し案。
第二東京湾岸道路を通すことが主な目的となっている。
埋め立て反対運動により2001年9月に白紙撤回となった。
埋め立て中止により、第二湾岸道路計画も中止となった。
臨海部の都県境における道路交通量の推移
出所:道路交通センサスなど
借金残高(債務残高)の国際比較(対GDP比)
★関連ページ
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