〜大震災後初の三番瀬市民調査〜
三番瀬市民調査の会は(2011年)5月18日、三番瀬・猫実川(ねこざねがわ)河口域の市民調査をおこないました。東日本大震災(3月11日)のあとでは、初めての市民調査です。
◆広大な面積の干潟が現れた
この日の干潮の潮位は、潮位表の予測値では−9cmです。先月(4月)20日に観察したときは−10cmですから、ほぼ同じです。
4月20日は、干潟がカキ礁の北側にわずかしか干出しませんでした。ところが、今回は、広大な面積の干潟が現れました。カキ礁の北側から猫実川の河口部(護岸下)までつながって干出しました。
潮位表の潮高(予測値)は同じでも、実際の潮位(実測値)はその日の気圧などによってかなり違うということを実感しました。
ちなみに、4月の19日や20日あたりは、実際の潮位(実測値)が潮位表の潮高よりも異常に高かったとのことです〈注〉。
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〈注〉実際の潮位(実測値)と潮位表の潮高(予測値)の差異(潮位偏差)については、気象庁の潮汐偏差(速報値)をご覧ください。
◆調査の特徴
この日の特徴はこうでした。
- タマシキゴカイの糞塊(ふんかい)がものすごく多くありました。とくにカキ礁周辺はタマシキゴカイの糞塊だらけという感じでした。これは初めて見る光景でした。
- アナジャコの巣穴数は、1平方メートルあたり20〜103でした。大震災前と比べると、半分くらいに減っています。
しかし、4月20日に観察したときよりは増えているような感じでした。また、干潟をスコップで掘ると、小さいアナジャコの穴を数多く確認できました。また、体長1cmくらいのアナジャコの赤ん坊が何匹もいました。これらは巣穴がたいへん小さいので、指を突っ込んでの巣穴数調査では捕捉できません。
したがって、じっさいの巣穴数はもっと多くなります。あと何カ月かたったら、アナジャコの巣穴数がかなり増えるのではないかと思われます。
◆66種類の生き物を確認
猫実川河口域のカキ礁周辺で今回確認した生き物は66種類です。
◎カイメンの仲間
ナミイソカイメン
◎クラゲの仲間
ミズクラゲ
◎イソギンチャクの仲間
イシワケイソギンチャク、タテジマイソギンチャク
◎ヒドロ虫の仲間
ヒドロ虫の一種
◎ゴカイの仲間
イトゴカイの一種、ウロコムシの一種、カンザシゴカイ、
タマシキゴカイ、チロリ、ツバサゴカイ、ミズヒキゴカイ、
ヤッコカン ザシ
◎二枚貝の仲間
アサリ、ウネナシトマヤガイ、オキシジミ、ソトオリガイ、
マガ キ、ムラサキイガイ
◎巻き貝の仲間
アカニシ、アラムシロガイ、イボニシ、シマメノフネガイ、
シマハマツボ
◎ウミウシの仲間
アメフラシ、キセワタ、ブドウガイ
◎ヒザラガイの仲間
ヒメケハダヒザラガイ
◎カニの仲間
イシガニ、イッカククモガニ、タイワンガザミ、
タカノケフサイソガニ、マメコブシガニ
◎フジツボの仲間
シロスジフジツボ、ヨーロッパフジツボ
◎アナジャコの仲間
アナジャコ
◎アミの仲間
アミの一種
◎エビの仲間
ユビナガスジエビ、ヨコエビの一種
◎ヤドカリの仲間
ユビナガホンヤドカリ
◎その他の節足動物
ドロクダムシ
◎ヒラムシの仲間
ヒラムシの一種
◎ホヤの仲間
シロボヤ、ユウレイボヤ
◎魚
アカエイ、アナゴ、イシガレイ、ギンポ、チチブ、ハゼの一種、
ボラ、ミミズハゼ
◎アオサの仲間
アオサの一種、ボウアオノリ
◎ハネモの仲間
ハネモの一種
◎ミルの仲間
ミル
◎オゴノリの仲間
オゴノリ
◎イギスの仲間
フタツガサネの一種
◎鳥
カワウ、カルガモ、コアジサシ、スズガモ、ダイサギ、キアシシギ、
チュウシャクシギ、ハマシギ
広大な干潟が現れた。写真の上のほうはカキ礁
カキ礁
タマシキゴカイの糞塊(ふんかい)がものすごく多かった
体長10cmを超えるアナジャコもいた
アナジャコ
干潟をスコップで掘ったら、アナジャコの小さな巣穴がたくさん見つかった。
体長1cmくらいのアナジャコの赤ん坊が何匹もいた。
アナジャコの巣穴は上部がYの字になっているのがよくわかる。
アナジャコの巣穴数調査。1平方メートルの区画の巣穴に指を突っ込んで数える
イシガニ、マメコブシガニ、アカニシ、チチブなど
殻長が約10cmのアナニシ
左からアサリ、ソトオリガイ、オキシジミ
チチブ
ヒメケハダヒザラガイ
市川市行徳・南行徳両漁協が造成した「養貝場」(人工干潟)
=この日(5月18日)に撮影。生物相はたいへん貧弱である。
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