ラムサール条約登録に向けて

〜三番瀬署名ネットが講演会〜



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 「ラムサール条約と三番瀬」と題した講演会が(2012年)7月29日、和洋女子大学(市川市)で開かれました。主催は「三番瀬を守る署名ネットワーク」(田久保晴孝代表)です。


◆重要な干潟が開発の危機にひんしている

 ラムサール条約の第11回締約国会議(COP11)が今年7月6日〜13日、ルーマニアの首都ブカレストで開かれました。
 ラムサール条約の正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」です。水鳥などの生物にとって価値の高い湿地を国際的に保全することを目的としています。条約の締約国は、登録湿地はもとより国内すべての湿地の保全が義務づけられています。
 ところが、日本では、重要な干潟が行政の開発計画により危機にさらされたり、破壊されたりしています。三番瀬、盤洲干潟(木更津市)、泡瀬干潟(沖縄市)、和白干潟(博多湾)、吉野川河口干潟(徳島市)、三河湾六条潟(豊橋市)、長島の海(瀬戸内海)などです。ラムサール条約の本来の目的からすれば、このような優先度の高い干潟を真っ先に登録すべきなのに、放置されています。
 「三番瀬を守る署名ネットワーク」は今年3月14日、三番瀬のラムサール条約登録を求める署名14万2019人分を県知事に提出しました。しかし、第二湾岸道路建設に固執する県はラムサール条約登録に消極的です。この日、署名ネットの織内勲事務局長はこう述べました。
 「生物多様性の保全という観点からも、三番瀬は世界的に重要な干潟だ。県や市川市の腰が重いのは残念である。今年はだめだったとしても、絶対にあきらめないで運動を続けていく」


◆都市化にともなう湿地の消失・汚染

 7月28日の講演会はそういう位置づけで開かれました。
 最初は、署名ネット幹事の立花一晃さんが「三番瀬からCOP11に参加して」を報告です。
 7月の6日〜13日、ルーマニアの首都ブカレストでラムサール条約(正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」)の第11回締約国会議(COP11)が開かれました。この会議に参加した立花さんはこう述べました。
     「COP11では22の決議が検討された。そのうちのひとつは『都市内や周辺における湿地保全の計画作成と管理の原則』である。都市化にともなう湿地の乾燥化・消失や汚染の問題が大きな課題としてあげられた。これは三番瀬がかかえる課題とも重なると思った」


◆自然環境への影響という点では、震災よりも
  埋め立てや人工改変のほうがはるかに大きい

 次は、「三番瀬を守る連絡会」の中山敏則代表世話人が「三番瀬の現状」を報告です。
     「三番瀬は東京湾奥部に残る貴重な干潟・浅瀬である。新たな埋め立て計画は2001年9月に中止になった。しかし、第二東京湾岸道路を三番瀬に通す構想が存続していて、浦安寄りの奥まったところにある猫実川(ねこざねがわ)河口域が危機にひんしている。猫実川河口域に隣接する埋め立て地(市川市塩浜2、3丁目)の再開発計画も進んでいる。再開発のイメージ図では猫実川河口域の人工ビーチ化が描かれている。このように、第二湾岸道路と再開発のからみで、猫実川河口域は人工改変(人工砂浜化)の危機にさらされている」

     「東日本大震災による地形変化を大げさにとりあげる人たちがいる。三番瀬の埋め立てや人工砂浜(人工干潟)化を主張している人たちである。“沈下したのだから、砂を投入して人工干潟をつくるべき”などと言っている。しかし、県の三番瀬自然環境総合解析報告書で示されているように、三番瀬の地形は調査のたびに変化がみられる。干潟は常に変化しているということだ。自然環境への影響という点では、震災よりも埋め立てや人工改変のほうがはるかに大きい」


◆COP11の成果を国内で生かすには

 最後に、釧路公立大学教授の小林聡史さん(元ラムサール条約本部事務局)が「第11回ラムサール条約締約国会議(COP11)の成果を国内で生かすには」と題して講演しました。
 小林さんは、COP11で議論されたことをくわしく話し、こう述べました。
     「前回のCOPからの進展として、全世界の条約湿地(登録湿地)の数が2000カ所を超えた。また、締約国の数も、アジアからブータンが加盟するなどして162カ国となった。
     COP11は、政府関係者だけで事前登録者数が1000人を超え、大きな会議となった。全登録者のうち、日本は120人で、1割以上を占めた。日本からは直行便がなく、時間もかかるのに、これだけの教が参加してくれることに会議関係者は勇気づけられたそうだ。また、展示ブースに限れば、日本の政府関係機関とNGOらによる展示がルーマニアよりも圧倒的な数を占めた」

     「ラムサール条約の中心概念は『湿地のワイズユース(賢明な利用)』だ。COP11では、地元にとっての湿地の価値や、旅行目的地として湿地の価値に焦点があてられた。湿地を観光利用した際の経済効果や環境負荷について検討が行われた。世界各地の湿地における観光利用の事例もまとめられた。サイドイベントでは、東アジアにおける干潟の減少が水鳥の個体数に大きな影響を与えている可能性が指摘された。
     この内容については、10月に韓国で開催予定のIUCN世界自然保護会議でも議論される予定である。また、今回の決議では、条約湿地の生態学的特徴を記載した『ラムサール湿地情報票(RIS)』の改訂もされ、情報提供しやすくなった。これらの成果をふまえ、日本からも湿地のおかれている状況についてきちんと情報発信していくことが必要である」

 報告・講演のあとは、「どうすれば三番瀬をラムサール条約に登録できるか」をめぐり、活発に意見がかわされました。




「ラムサール条約と三番瀬」と題した講演会




講師の釧路公立大学教授の小林聡史さん(元ラムサール条約本部事務局)



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